5-2:世界樹林
翌日、寝て気も晴れるかとの予想も虚しく、エウロスはどんよりとした雰囲気を身体から出していた。
元気になってもらうために朝ご飯もハンナリー店に寄ると、珍しくナナリーが外出用の格好で朝ご飯を食べていた。
「おやーアズマ君おはようー」
「おはよう。ナナリーが外用の格好しているの久しぶりに見た気がするな。どこか行くのか?」
「んー?アズマ君は行かないのかなー?」
ナナリーはサラダに手をつける前に俺に訊ねてきた。
「行かないって、どこにだ?……あぁもしかして外壁の修繕か?それだったらまた明日だな。今日はオフ日にしようと思っているんだ」
「ボケているんじゃないんだねー」
「ギャグでは言っていないな。え?本当に俺が他に行くところがあるのか?」
ナナリーと共に行く場所を考えるも、特別に行く場所なんて思いつかない。もしかして前に一緒に風呂に入ったことで責任を取るためにどこの採取クエストに連れて行かれるのか!?
「ヒント、アズマ君達が求めているものー」
「俺達が求めているもの……金か?」
「エウロス神に毒されつつあるのかなー?」
ナナリーは居た堪れないような顔でそう言った。どうやら違ったようだ。エウロスに毒されているってそんなに的外れな答えだったかな。
「大ヒント、一週間同じ場所で雨が降りましたー」
その大ヒントで俺は理解する。あながち先程の答えは間違いではない気がするが、そんなことよりもだ。
「それは本当か!」
「うん。この前の大嵐が進路を変えて、世界樹林の方へ行ったから間違いなよー」
キラポンが進路を変えた先が世界樹林だったのか。いいぞキラポン、俺は信じていたし、出来る子だと思っていたぞ!
「てことは、世界樹の夜露を手に入れるチャンスがやってきたってことだな!」
当初の目当て物である世界樹の夜露。その代物は高価過ぎて手が出せずにいた。だが世界樹林で一週間雨が降り注げば世界樹の夜露を手に入れられる。千載一遇の時が今。
「しーっ声がでかいよー。資源は有限だよー」
一応朝の客もいて、そいつらが同業者になりかねないので、ナナリーは人差し指を俺の唇の前に押し当てた。
「わ、悪い。今から世界樹林へと向かえば夜には間に合うよな。よし、行こう!今すぐ行こう!」
身体が元に戻る可能性がある。それだけで抜けていなかった疲れが吹き飛んだ気がする。
「行くのはいいけど、エウロス神は一緒じゃなくていいのー?」
「何を言っているんだ。エウロスなら後ろに……いない!」
「来店時からいなかったよー」
静かなのは昨日からだったので話に参加してこないのを気にしていなかったが、まさか来店時から存在していなかったとは。道中会話がなかったから気が付かなかった。
「ごっはんーごっはんー煮豆枝豆お豆さんー卵は甘口おいしいおいしい朝ご飯ですよー」
エウロスが忽然と姿を消しているのに驚いていると、すっかりここのご飯が気に入ったクエピーが変な歌を歌いながらやってきた。
「おっ、アズマさん。先程エウロスさんを見ましたが今日は別行動の日ですよ?」
「エウロスを見たのか!どこで!」
「物凄い熱意ですよ!えぇっと、ギルドの前でですよ」
「でかしたクエピー!ナナリー、正門前で待っていてくれ!エウロスを連れてくる!」
俺はハンナリー店を飛び出してギルドへと駆ける。途中でリーベと一緒にいるイマテラスさんに声をかけられたけど止まることなく断りの言葉を言って過ぎ去った。
ギルドの扉を開けて中に入ってエウロスを探す。エウロスは丁度ギルドの上階へと続く階段から急いで駆け降りてくるところだった。
お互いに存在を発見し、ギルドのエントランスで合流し、大きく息をして同時に言葉に発する。
「「世界樹林に行くぞ(わよ)!」」
珍しく意見が一致した瞬間であった。
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