4-4:後輩の実力
「行くですよ!ぷーちん!」
「ぷ!」
黄色い笛を吹いてぷーちんを強化するクエピー。緑色の笛が索敵能力だったが、黄色は一体。
見た目は変わった様子はないが、ぷーちんがバッファローサンシロウの群れに突っ込んで行く。
そして一頭のバッファローサンシロウに向けて頭突きをかました。
「黄色の笛は肉体強化ですよ!あぁなったぷーちんを止められる魔物はそうそういないですよ!」
「いや、あの非常食もお手玉されてるわよ」
頭突きをかましたところまでは勇敢であったが、直ぐに力負けして他のギルド員同様にバッファローサンシロウにお手玉されていた。
「ぷーちーん!」
クエピーがぷーちんを助けるために群れの中に入って行って、案の定お手玉状態にされた。
「何かクエピーだけ楽しんでないか?」
「助けなくていいんじゃない?」
お手玉状態のクエピーはアトラクションを楽しむ少女のような顔をしていた。ぷーちんが負けるのを理解していて敢えて突っ込ませて、自分があの中に入る大義名分が欲しかった。そんなわけないよな。
「クエピーはほっといても、他のギルド員は助けなきゃならんだろう」
幸いお手玉されている状態なのでバッファローサンシロウの群れの進行は止まっている。しかし一匹ずつ処理していくのは時間効率的によろしくない。まとめて処理しようにもギルド員に被害が及ぶ可能性がある。クエピーだけならクエピー事やるんだけども。
「アズマ!さん!」
「あらガウェイン。どうしてここに?」
そんなこんなを考えているとガウェインが助っ人としてやってきた。咄嗟に俯いてガウェインから目を逸らし、極力禁止ワードを考えないようにする。
「アズマ!さんと肩を並べて戦いたかったんです!皆さんを助けるんですよね!」
「……えぇそうね。だけどあたし一人で片付けてもいいんだけど、ここはあんたならどうするか見せて頂戴」
一瞬悪そうな笑顔を口元だけで作ったエウロスがガウェインに向かってそう言った。こいつガウェインにだけ働かせるつもりか。
「うす!俺なら一匹ずつ処理します!」
そんな腹づもりも梅雨知らずガウェインは答える。
「この数を?」
「一匹一の半秒で倒せばいけます!」
「じゃあやってみなさいな」
「刮目ください!」
握った拳と拳を胸の前でぶつけ合わせた瞬間にガチン!と何かが嵌まるような音が聞こえた。その音と共にガウェインが消えた。
目で追えずにいると、手前のバッファローサンシロウから倒れていく。手前からドミノ倒しのように倒れて、お手玉されていたギルド員が少なくなってくる。
2分もしないうちに最後尾のバッファローサンシロウが倒れてしまい。その最後尾にガウェインの姿が見えたと思った時には、エウロスの前に移動してきていた。
「どうでした?」
「……は?え?えぇ!?す、凄いわ!流石はあたしが見込んだとおりの人間ね!」
只々人間の域を超えたものを見せられて、呆けてしまっているエウロスは虚勢で威張るしかなかった。
「いえいえアズマ!さんには及ばないですよ」
「そ、そうね」
恐怖した目でエウロスは俺を見つめてくる。いやいや俺もあんなに早技で倒せないからな。ガウェインの上位互換の存在みたいな目で見るな。
倒れたバッファローサンシロウを観察する。脇腹に一撃深い拳の痕が出来上がっている。それが他のバッファローサンシロウにもある。あの速さで動いて、どのバッファローサンシロウにも寸分の狂いもなく同じ場所に撃ち込まれている。これだけの所業ができるのに俺が耳にもしない人物か。
「これ食べていいですよ?」
「駄目に決まってるだろ」
お手玉状態から解放されたクエピーは倒れているバッファローサンシロウをさして言う。
何故駄目なのかはクエピーは理解しながら敢えて訊いてきているが、エウロスが理解していなさそうなので説明しておく。
「一匹でも倒せばまた群れで襲われる。今回はこいつらの通り道に俺たちがいたから、討伐よりも撃退をしなければならなかったんだよ」
そもそもお手玉されていた奴らも撃退ではなく討伐なら出来ただろう。バッファローサンシロウは根性があるから撃退の方が難しいんだよな。
「ほら全員が伸びているうちに行くぞ。ガウェインも手助けありがとうな」
礼を言う時でさえもガウェインの顔を見れないのは失礼極まりなかったが、致し方なし。
「は、はい」
俺の距離を取るような態度を感じ取ったのかガウェインも少しよそよそしかった。
「では俺は戻ります。皆さんも列に戻ってくださーい」
ガウェインの掛け声でお手玉状態のギルド員達はとぼとぼと列に戻っていく。全員が列に戻ったのを確認して最後に俺達が最後尾について、再び繚乱撃退に向けて進軍した。
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