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3-8:お姉ちゃん

 鍋は鍋でも食えない鍋。

 パンはパンでもなら聞いたことがあるけど、鍋のバージョンは聞いたことがない。


 鍋だと食べるのを止められる鍋は何だ?とかなら記憶にある。この問いかけはクイズではなく、なぞなぞだな。


 答えは鍋敷とか?


「おなべですよ!」


 クエピーがそう答える。


「……正解」


 はたまた軽快な正解音が鳴って、上空からポトリと季節外れの柿が一つ落ちてきた。これが賞品だろう。


「更なる問題を求めるならば、先に進むが良い」


 森に響く声はそう言い残すと聞こえなくなってしまった。


「やーんクエピーちゃんすご〜い!どうして分かったの、お姉ちゃんに教えて教えて」


「ふへへー一見食用の問題かと勘違いしますが、出題が食べられないじゃなくて、食えないですから、人を表しているんじゃないかと予測したですよ。なので女中さんを表すおなべと答えたまでですよ!」


 イマテラスさんの豊満な胸の中に顔を埋められながら、上機嫌にクエピーは語った。

 成程……なのか?そもそもこれはなぞなぞとして成立しているのだろうか?


「凄い凄い!クエピーちゃんなぞなぞ博士だ!」


「私に任せて欲しいですよ!」


「きゃー頼りになるー」


 ベタベタと可愛い素敵と触れ合っている二人を尻目に俺は先に歩を進める。

 別にあんな豊満で優しいお姉さんに褒められて羨ましいとかは思っていない。俺はただ自分がこのクエストに貢献できなさそうと感じて、落ち込んでいるだけだ。決してクエピーが羨ましい訳じゃない。


 またある一定のとこに足を踏み入れた途端に声が降って沸いてきた。


「問題!朝は足が四本!昼は足が二本!夜は足が三本になる生物はなんでしょう!」


 定番の問題であった。


「はいはーいお姉ちゃん分かりまーす」


 片手をあげてぴょんぴょんと飛び跳ねるイマテラスさん。エウロスの胸と見比べて、あれが付いていたら運動し辛いだろうな。との感想を述べておく。


「人間です」


「待っ」


「不正解!」


 クエピーが何か言いかけたが、イマテラスさんが答えた後に、取り付く間もなく直ぐに正答ではないと返ってきて、当たり一体が暗くなる。

 そしてピカッと、発光したかと思うと。


「きゃー!!!!!」


「あばばばばばばば」


 イマテラスさんに雷が落ちた。ついでにくっついていたクエピーも雷の餌食になっていた。


「大丈夫か!?」


 突然の雷に撃たれてしゅーと音を出して焦げ臭い煙をあげているイマテラスさんとクエピーに近づく。


「イタ〜いヒリヒリする〜」


 イマテラスさんは軽い苦悶の表情で雷に撃たれた肌を触っている。どうやら軽症のようだ。


 クエピーは口から煙を出して白目を剥いていた。こっちはかなり重傷と言えるだろう。とりあえず息もあるし、脈拍も普通なので命に別状はない。はず。


 そもそもクエピーが死んだら綺麗になって蘇るから、まだ死んでいないと言える。


「なんでー!何で人間じゃないのー!」


「正解は爆傑龍バルドルゴンでした!」


 んな馬鹿な。赤ちゃんは四つ足で這い、そこから二本足で立ち歩き、往年には杖をつくから三本足。だから人間という答えなのだが、爆傑龍バルドルゴンって、ただの六脚の龍じゃないかよ。


「バルドルゴンは六足の龍でしょ〜お姉ちゃんもそれくらいは知ってます〜」


 森の上方に向かってイマテラスさんは不満を露わにすると、声が返ってくる。


「爆傑龍バルドルゴンは朝は四足で地を歩き、昼は二足で空を切り、夜は三足で立って寝ます。人間は全てが杖をつくとは限りません。よって不正解」


「引っ掛け問題だー」


 引っ掛け問題というよりも、ヒントママの出題が妙なのだが。最初は一般的に簡単な問いかけから始まるときく。

 確かに問題は一般的に使われている問題だが、答えが予想外である。


 そして与えられる罰が答案者に直接危害を加えるものなのも妙だ。

 答えられるようになるまで森から出さないという趣旨の罰しかない筈だが、こうして雷に撃たれるのは初めての事例だろう。


「クエピーが目を覚まさないようなので、一旦帰りますか。今のが罰なら帰れるはずです」


 クエピーに気付けとして頬を叩いてみても気を失ってしまっていて、起きやしなかった。治療とこの先の問題を二人で解けるとは思えないので街に戻った方が賢明だ。


「そうしましょう。クエピーちゃんの怪我が心配たもんね」


 イマテラスさんがクエピーをおぶってから、二人で来た道を戻ろうとすると。


「問題!ご飯を食べる時に抱いているものは何でしょう!」


「は?なんでだ?」


 また軽快な音と共に問題が出されてえ、流石の俺も疑問の声を上げてしまう。


「帰り道もあるの?」


「いやヒントママは来るものを拒まず、去るもの追わずを徹底していますよ。何か妙ですね」


「そうなんだー、とりあえず答えればいいのかな?」


「待ってください。俺も答えは分かりますが、さっきのような引っ掛け問題かもしれません。通常のヒントママとは違うのかも」


「分かったわ。お姉ちゃん身体が丈夫だから、お姉ちゃんが答えるわね!答えはお姉ちゃんへの愛!」


 予想外な答えであった。だがもしかしたら正解なのかもしれない。

 因みに俺の答えは板だ。


「不正解!正解は板!」


「ご飯の時に板なんか抱いたら行儀が悪いよ!きゃー!!!!」


「あばばばばばばば!」


 イマテラスさんが再び雷に撃たれる。おんぶされているクエピーも一緒にまた撃たれてしまった。出題された動揺で、こっちに受け取るのを忘れていた。


 それにしてもクエピーはだんだん見るも無惨な姿に近づいているのにも関わらず、イマテラスさんは殆ど傷がなかった。本人が言う通り丈夫なのだろうけど、雷に二回撃たれて平気な人っているか?


「エウロスちゃん大変!大変!クエピーちゃんが息していない!」


 さっきは呼吸していたクエピーの呼吸が止まったようだ。

 ならばクエピーは蘇るが、新たな問題が発生する。


「イマテラスさん、尻尾の納品から、ヒントママの討伐に変えてもいいですか?」


「えっ?どうして?」


「クエピーは持っている加護で死ぬと蘇るんです。ですが蘇った後に、加害対象を捕食しないと本当に死んでしまうんです。だからヒントママを討伐しなければ、クエピーは死にます」


「それは大変!じゃあお姉ちゃんも本気出しちゃうね!エウロスちゃん!お姉ちゃんを手伝って!」


「はい!何でも手伝います」


 あのSランクを超えるギルド員オネイと共に肩を合わせて戦える機会なんてない。

 実はオネイと手合わせしてみたいとか考えていた時期もあり、密かに心の中で偶像化させていたりもする。


「じゃお姉ちゃんコールをお願い!」


「はい!……はい?」


「お姉ちゃん頑張れーとか、お姉ちゃん負けないでーとか、お姉ちゃん大好きーとかを大きな声で言ってくれると嬉しいな!」


 耳を疑い聞き間違いがないことを確認したけど聞き間違いではなかったようだ。満面の笑みで何言ってんだこの人。


 まぁそれでヒントママを討伐できる可能性が上がるなら、恥を忍んでやるけども。


「お姉ちゃんガンバレー」


「もっと!」


「お姉ちゃんマケナイデー」


「もっともっと!できれば名前も添えて!!」


「イマお姉ちゃんダイスキー」


「ひゃぁ!!!!!キタキタキタキタ!オネチャニウムが全身に満ち溢れてる!エウロスちゃんからパワーを貰ってお姉ちゃん!頑張っちゃう!!!!」


 心のこもっていない黄色い声援を受けてイマテラスさんは気を強く貯める。その気がどんどんと高まっていくのを俺はハッキリと理解する。こんなにも凄まじく研ぎすまれた気、これがSランクの本気か、物凄いな。


 気が最大に高まったところで、ひゅん。と、俺の横を風を切って何かが飛んでいく。その物体を目で追うと、塵のように投げられたのはクエピーだった。


 クエピーはイマテラスさんがおぶっていたから、イマテラスさんが投げ捨てたのは確定だった。いくら蘇ると知ったからってそんな扱いは酷いと思う。


「あーん?んだぁ?ここ……」


 最大限に気を溜めたイマテラスさんは逆立った髪を髪留めでまとめながらあたりを見回して、そう呟いた。


「イマテラス……さん?」

「面白い!」「続きが気になる~」と感じ、お思いになられたら、



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I need more power!!!!


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