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3-3:機甲精霊

「頭がガンガンするわよ……」


 翌日、酒場に集合ということで、予定時刻よりも早く俺たちは来ていた。


 集合時間より早く来すぎたが、エウロスが全く起きないことを予想して俺は早起きし、予想通りに深く眠っていたエウロスを叩き起こし、エウロスの身支度を全て俺が終えて、引っ張るように連れてきた。


 待ち合わせに早すぎる事に支障はないだろう。


「水でも飲んでろ」


「うー、そうするわ」


 エウロスは立ち上がってふらふらとした足取りでセルフサービスの水を取りに行く。


 心配なので観察してると、酒場のウェイトレスさんにぶつかって謝り、他人の朝食をじっと見つめたり、動き出したかと思えば俺の身体よりも大きいモヒカン巨漢とぶつかって謝った後に握手をしていた。


 見た目が強面で悪そうだったから難癖つけられと思ったが、別に特段問題を起こすことはなく水を持って戻ってきた。なんで握手したんだ?


「おま――」


「お待たせしましたです!」


 エウロスに何故握手をしたのか訊こうとしたらクエピーが昨日と変わらぬ姿でやってきた。


「元気ねー」


「元気元気ですよ!アズマさんとエウロスさんと共にクエストに赴けるのに元気がなかったら失礼ですからね!」


「こいつと同列に語られるのは解せないけど、クエピー、あなたあたしの中ではいいポジションに付いているわよ」


 解せないのはお互い様のようだな。というか、エウロスは何故上から目線なんだよ。これからパーティーメンバーになるんだぞ?上下関係を作るな。


「こいつの発言に思うところがあったらいつでも言ってくれ、折檻は得意なんだ」


「ぼ、暴力反対よ!」


「私は何も気にしていませんですよ。早速ですですが、本日はどんなクエストに行かれるのですか?」


 心の広いクエピーはエウロスの発言を許してくれるようだ。エウロスにも見習って欲しいものだ。


「既にクエストは選んでいて、これなんだが」


「機甲精霊アーマードロア?なんか闘争を求めてそうね」


 エウロスは水を飲みながら首を傾げる。

 クエピーのランクはAAなので、たまたまクエストボードに張ってあった、このBのアーマードロアが肩慣らしには丁度いい。


「アーマードロア!!!あの妖精帝国が一度瓦解した際に出現した第二勢力フェアリーグルーブの特攻精霊であり、時には世界を滅ぼしかけ、時には世界を救ったと言われている魔導具アーマードマナに身を包んだ精霊アーマードロアを討伐するですよ!?」


「そ、そうだ。クエピー説明ありがとう」


「ですですよ」


 やっぱりモンスター関連になると早口で説明してくるようだ。説明の手間が省けるのでいいのだけど、熱意が物凄い。


「そのアーマードロアは強いの?」


「一体ならアズマさんなら楽勝ですですよ。ただ隊列を組まれるとぐんと討伐は難しくなるですよ」


 俺自身なら楽勝だが、エウロスだと難しいかもしれない。

 周りに被害を抑えるように技を使えと耳にタコが出来るほど説教したので、シマス討伐時のような技は使わないだろう。てか使わせない。


「今回のクエストの場所で見かけられているのは単体だから隊列を組まれることはないはずだから、そこまで構えなくていい」


「そうねー。今回はクエピーのお手並み拝見クエストだし?あたしも張り切らなくて済むわねー」


 体調が良くないからと言ってクエピー任せにしようとしているな。俺達との相性も見るのを忘れているが、エウロスには大人しくしていてもらった方が面倒ごとが減るのは確かだった。


「任せてくださいですですよ!」


 クエピーが元気発剌に言ったので、承認を取り、クエストを受注した。



 今回のクエストの場所はヴェルサスから近めの草原、ヒレェ草原。低ランクの人達が薬草集めや、低級のモンスターを討伐したりする場所なのだが、どこからか迷い込んだのか、気性が荒く、縄張り意識が高いアーマードロアがいるらしい。


「まずはアーマードロアを見つけないとな。えーっとクエスト概要によると、草原の中央地帯で見かけることが多いと」


「中央地帯って、見晴らしはいいけどかなり広いじゃない。そのアーマードロアはどれくらいの大きさなのよ」


「アーマードロアはですですね。だいたいぷーちんと同じ大きさですですよ」


「かなり小さいじゃない!それって遠目に分からないわよね。どうするのよ」


 エウロスの言う通り見晴らしの良い草原でも肉眼で探すとなれば一苦労である。脚で探すか、魔導を使って探すかだ。


「私に任せてくださいですですよ!いけぇ!ぷーちん」


「ぷー!」


 クエピーの帽子の中からぷーちんが飛び出した。


「その食べ物で何かできるの?溶解液を吐くか、食べられるしか能がないじゃい」


「ふっふっふっ。ぷーちんと私を舐めてもらっては困りますですよ。ぷーちん!いきますですよ!」


 クエピーは草原の空気を大きく吸って、首に下げていた緑色の笛を口につけて、大きく鳴らした。


 ひょろぴーと、気の抜ける音が鳴った。


「……何も起きないじゃない」


「これからですよ」


 代わり映えせずに立っていると、ぷーちんはかっと目を見開き、エウロスの頭の上に飛び乗って、重そうな頭を右へ左へと振り始めた。


「あたしの頭の上に乗るとは畜生の分際でいいご身分ね!」


「あー!違うのですよ!ぷーちんには今視力向上のバフをかけているのですよ!ですので、見渡しの良い場所からアーマードロアを探しているだけなのですよ。アズマさん、ここは寛大の心で許して欲しいですよ」


 ぷーちんを掴んで首でも締めようとの手つきだったので慌ててクエピーが静止にかかる。


 首からかけている笛はテイムした生き物にバフをかける物だったか。あの中にぷーちんをテイムしている笛もあるのだろう。


「お前の今回の唯一役立つ点かもしれないんだから大人しくしてろ」


「なっ!あたしだって」


「大人しくしてろ」


「……はい」


 ドスを効かせて言うと黙った。シマスの後に相当絞ったからな、力関係を解らせておいてやった。


「ぷ」


「なんか言ってるわよ」


 ぷーちんは探し終えたのかクエピーに小さな羽で何かを伝えた。


「うーん、どうやらこの辺りには見えなかったようですね。もうちょっと先に行ってみませんか」


「もしかして、このまま?」


「できれば、アズマさんの頭の上がよろしいかと」


 エウロスがチラリと俺に降ろしたいような目線を送ってくるが、そんなのは許さないので圧のある笑顔で現状維持を指示すると、泣く泣く呑んだ。


 暫くぷーちんをエウロスの頭に乗せて歩いていると。


「ぷーぷー!」


 突然ぷーちんがエウロスの頭の上で跳ね出した。


「爪が痛いわよ!!!」


「ぷ〜」


 頭の上で爪を立てられて飛び跳ねられ、我慢の限界だったかぷーちんを掴んで首を絞めるエウロス。ぷーちんは涙目になりながら苦しそうな声をあげて鳴いていた。


「やめろ馬鹿」


「いだい!追い打ち止めなさいよ!血が出てるわ!絶対出てるわ!」


 後頭部を強く叩くと、エウロスはぷーちんを放した。


「安心しろ。小動物の爪で傷つくほど、そんなに軟じゃない」


 ぷーちんの爪程度では頭皮まで鍛えている俺は傷つけられないだっろう。まぁ痛みはあるだろうが。そこは我慢するしかない。


「大丈夫ですか?ぷーちん。あれもアズマさんなりのぷーちんへの愛ですよ。ちゃんと受け入れるのですよ」


 クエピーはぷーちんの身を案じながらも歪んだ愛をぷーちんへと説いていた。テイムされているからぷーちんも頷いている。いずれ、これも愛だと言って本当に絞めて血抜きして毛をむしり取られて食べられそう。


「あれがアーマードロア?なんか男の趣向を詰め込んだような見た目をしているわね」


 ゴツゴツとして太陽の光を反射する魔導具に身を包み、生き物というよりも、道具や機械に近い見た目の精霊。

 片手にはマナブラスターという精霊が作った銃を持ち、もう片方にはマナシールドという盾を持っている。羽がある背中にはバーニアが装着されており、精霊が空を飛ぶ際に出る鱗粉が噴出されていた。

 まぁ、俺もああいう見た目は好きだが、エウロスに芯をつかれるのは腹立たしいな。


「他にアーマードロアはいなそうだな」


 アーマードロアに気づかれない程度の距離から肉眼で確認する。低級モンスターしかいないヒレェ草原だから、アーマードロアを恐れて近くにはいないようだ。


 周りに人もいないようだし討伐を始めても良さそうだ。


「じゃあやるぞ」

「面白い!」「続きが気になる~」と感じ、お思いになられたら、


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