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3-2:面接

「ぶはーっ!この一杯のために生きているって感じね!」


 上唇に麦芽の泡をつけながらエウロスは気持ち良そうに言い放つ。


 仕事終わりにパーティー募集と食事の為に酒場へとやってきていた。もう既にパーティー募集を済ませているので、後はパーティーメンバーが集まるまで待機である。


「んふーキンキンに冷えた麦芽発酵水は最高ね!お姉さんもう一杯!」


 エウロスがもうジョッキ一杯飲み干して、次の一杯を注文する。


「おい、飲み過ぎんなよ。仕事に響くし、そんな金ないからな」


「大丈夫よ!勘定くらいできるわよ。それに今日は週末だから明日は休みよ!じゃんじゃん飲むわよ!」


 何が大丈夫なのかが分からない。金の管理は全て俺がしていても、どこかで咎めないとこいつはベロベロになるまで無限に飲みそうだ。


「すみませんです」


 嬉しそうに麦芽発酵水を飲むエウロスを頬杖ついて眺めていると、俺の頭に影がかかって、可愛らしい声で声をかけられた。


 影をかけた主はエウロスよりも少し身長が小さい女性で、赤茶髪のセミロングにストレートな髪の毛の上に頭が隠れそうなほどに唾の大きな帽子を被っいて、首には沢山の笛がかけられていた。


 見た目的にはエウロスや俺よりも年下に見えるな。


「どうしましたか?」


「あの、この募集の張り紙を見たんですけど、まだ募集していますでしょうか?」


 ついさっき掲載したと言うのに、もうメンバー候補が現れた。エウロスは飲んでいて面接とかできる状態じゃないので俺が対応する。こいつに任せると碌なことにはならないのは承知済みなので、はなからそのつもりだけど。


「まだしていますよ。ですが募集分にも書いてある通り、一応身分証明と面接のようなものをしますが、よろしいですか?」


「はい!是非にもですよ!あ、私はクエピー•ワタツミと申します。よろしくお願いしますですよ」


 椅子に座ってから俺とエウロスに挨拶をし、ギルドカードを見せてくれるクエピー。この時点でエウロスより礼儀は良し。比較対象に持ち上げるレベルのラインが低すぎる気がするが、仲間内で比較した方が分かりやすいからヨシ。

 ギルドカード名も同じようなので、嘘はついていないな。


「職業を教えていただけますか??できればでよろしいのですが、加護も教えていただけると助かります」


「職業はテイマーですよ。加護はごにょごにょですよ。申し訳ないですよ」


「いえ、大丈夫です。言える範囲でいいので」


 加護を晒すのは自分の手の内を明かすのと一緒だから、パーティーメンバーにさえも明かしていない人は多いと聞く。あのユウヒもゼウスの加護全てを出しているわけじゃないから一般的な応対ではある。


「どうして俺達のパーティーへ?」


「それはシマス討伐の経緯を噂で聞いたからですよ!」


 もうシマス討伐の噂が広がっているのか。この街は噂が広まるのが早いな。


 シマス討伐の経緯なんて損害賠償が高くついただけが印象に強く残っているが。


「下級モンスターとくんずほぐれつして肉体的スキンシップで触れ合い愛を確かめる!更には愛でるだけではなく、撃退し、自然の厳しさの象徴弱肉強食を教え込む為に、肉塊にする、また別方向の愛!そしてそして最後はモンスターの意図を汲みシマスを抱いて帰ってモンスター最期の願いを叶える慈愛!愛愛愛!私はエウロスさんのモンスターへの愛に感動したのですよ!ですので、私は敬服を示し、エウロスさんの為ならば力になろうと思ったのですよ!」


 超絶に早口で鼻息を荒くして俺へと近付きながら熱弁するクエピー。その熱意に押されて若干引き気味なりながら俺は咳払いをする。すると、クエピーはハッとして前屈みになっていた腰を戻した。


 暑くなるスイッチがモンスターの話なのかな?


「成程、志望動機は理解しました。一テイマーとして思うところがあったのですね」


「ですですよ」


「次の質問ですが、どのようなものをテイムしているのでしょうか?」


 テイマーなら何かをテイムしていないと名乗れない。リスとか狼とか。上に行けば行くほどモンスターとかをテイムしている人もいるとかなんとか。


「とりあえず今いるのはこの子ですよ」


 そう言ってクエピーは帽子を脱いだ。脱いだ頭の上にはハシビロコウの顔にペンギンのような胴体をうつ伏せにしている怪鳥がいた。


 その怪鳥は挨拶するかのように短い羽をあげて。


「プ」


 と、鳴いた。


 えぇ、何々、全然見たこともない生き物が現れたんだけど。可愛いリスとか、鳩とかが出てくると思ったんだけども、出てきたのは頭と胴がアンバランスな生物だった。


「怪鳥ペンコウのぷーちんですよ」


「プ」


「お返事できて偉いですよ!」


 どうやらこのわけわからん生き物と意思疎通ができるようなので、それなりのテイマーとは認めよう。だが何だか悪い予感がするので予防線をもっと張っておかねば。


「その子で何ができますか?」


「物を消すことが得意でございますですよ」


「物を消す?視覚的にという意味でしょうか?」


「視覚的に消える現象でもありますが、具体的に言うと、溶解液を吐くことができますですよ」


「溶解液?」


「はいです。物を溶かしたり出来ますですよ」


「どれくらいのものを?」


「ぷーちんの限度はありますが、溶かせないものはないですよ!やってみせましょうか?」


「いや、いい」


 物を消すって溶かしつ尽くすってことかよ!物騒すぎるし、そんな溶解液を吐く生き物を頭に乗せているこいつの神経が図太すぎて理解できない!


 まずい。変な人だ。変な人が来てしまった。しかし欠点という欠点が大きく見えたわけでもないし、突き返すのもどうかと思う。


「あらペンコウじゃない。刺身にすると美味しいのよねー」


 隣で焼き鳥を肴にしながら麦芽発酵水を飲んでいるエウロスが口を挟んできた。


 その発言にぷーちんが身を震わせて怯えた表情をしていた。


「お前あの生き物こと知っているのか?」


 怯えるぷーちんに配慮してエウロスに耳打ちする。


「えぇ、天界でよく目にするわよ。刺身にしてもよし、焼いてもよし、煮ても良し、乾燥させても良しの食料としては最高の生き物よ。下界にはいないの?」


「俺もモンスターには詳しくないが初めて見る生き物だな。で、危険性はあるのか?」


 今のクエピーとの質疑応答では危険な生き物と認識しているが。


「温厚な生き物よ。沢山生息してるからペットとしても需要があるし、育てやすいわ。ただ他のペンコウとあんまり交流させないのが飼い主同士の暗黙の了解らしいわよ」


「何でだ?」


「知らないわよ。あたしは食べる専門よ」


 口振りからして知らないと思っていたよ。


「大丈夫です?」


「えぇ、こいつと少し相談していまして、お待たせしました。えぇっとまずはクエピーさんの実力と、私達の相性を確かめる為に、一度何か討伐クエストをしたいと思うのですが、よろしいですか?」


「はいですよ!」


 清々しいほどの二つ返事。

 それにしても、あそこまで明確にシマス討伐の情報を話したのはマガツヒさんにだけなのだが、もしかして噂の発生源って……。


「因みに、噂は誰から?」


「えぇっと、前のパーティーメンバーですよ」


 どうやら直接ではないか。まぁマガツヒさんが言いふらしていても、あの人は自分の名前が出ないように細工くらいはしていそう。


「そうですか。ありがとうございます。では明日の朝にここに集合ということで……お前はいつまで飲んでんだ!」


 明日の約束を取り付けたところで、六杯目を飲み干して七杯目を注文しようとしていたエウロスを止めて、本日は解散となった。


 心配だなぁ。

「面白い!」「続きが気になる~」と感じ、お思いになられたら、




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