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2-11:シマス討伐終わりに

「いやーお疲れさんお疲れさん。アズマ君ならやってくれると思っとったよ」


 森林を出てから外道近くで野宿をしてから、ようやくヴェルサスの街に帰ってきたので、その足でギルドへ報告しにくると、またマガツヒさんの元まで通された。


「あれ?当のアズマ君は?」


 この場には俺だけで、エウロスはハナオレの臭いが強すぎるのでヴェルサスに入ることができなく、ハナオレの臭いがとれるハナスキの蜜を手に入れるまでヴェルサスの検問所に待機していた。


 クエストの始終とその事をマガツヒさんに説明する。


「ぶっはっ!なんやそれ!めちゃウケるわ。あひー腹捩れてまうー」


 かつて無いほど笑っていた。

 あいつ自身は臭いに慣れていたが、一緒にいる俺さえも臭いが少し移っているのが気がかりだ。早くナナリーのところでハナスキの蜜を買わなくては。


「クエストは完了したので、そろそろあいつを迎えに行ってやってもいいですか?」


 置いていくだけでも喚いていたので、迎えにいくのが遅く慣ればなるほど不貞腐れそうだ。後々面倒臭い事になりそうなので、早めに行きたいのだ。


「ふふふ……うん?あ、帰る?帰る前にちょっとエウロスちゃんに尋ねたいことがあんねんけど、時間ええかな?」


「まぁ迎えに行って帰るだけなんで、長時間じゃなければ」


 クエストの報告だけで、多忙なマガツヒさんと対面できるはずがない。何か他に用事があるのだろうとは予測していた。


「アズマ君のことやねんけど、エウロスちゃんはアズマ君の噂知ってる?」


 俺の噂?最近で言うと勇者パーティーから追放されたくらいか。


「えぇ知っています。勇者パーティーから追放されたんですよね?」


「あらぁーそれだけかー」


 マガツヒさんは扇子を額に当てて困った顔をする。


「それだけ?それ以外にもあるんですか?」


「それがね。女性に引きづられて運ばれたり、往来で女性に告白したり、終いには君にお金を集り、喧嘩に発展や」


 全部あいつの奇行じゃねぇか!!!

 往来で目立たないようにしていたのに、所々目立ちすぎて噂になっているのか。どうりで最近通りすがる人のエウロスを見る目が冷ややかなものだと思ったよ!


「何や勇者パーティーを追放されてから自棄になったんか、人が変わったように女性絡みの噂を聞くようになったんやけど。

 私生活にはあんま首突っ込みたく無いねんけど、僕としてもアズマ君には貢献してもろとるし、何か力になってやりとうてな。エウロスちゃん、そこらへんなんか知らへん?」


 何か知らないかと言われようも、アズマ本人は俺である。どう説明すればいいのか。この人に本当のことを話しても、面白がるだけだろうし、あんまり信用ならない。この言葉も労りの言葉じゃなくて、真相を知りたい好奇心からの言葉に聞こえてならない。


 俺が知ってるマガツヒさんはそんな人だ。


「あいつは難病を患っていて、気が病んでいるんです。もしかしたら前とは違うかもしれませんが、そこのところはあたしが管理するんで大丈夫です」


 マガツヒさんに真剣な眼差しを向けて伝える。マガツヒさんの細い目が俺と見つめ合い。そして、マガツヒさんはニコリと頬を緩めた。


「ほなええわ。エウロスちゃんが手綱を握る言うんやったら、今はそれを神様の名の下に信じようやないか」


 ん?……あぁエウロスの名前が女神エウロスと同じだからか。エウロスの見た目をしている俺をエウロスだと勘違いでもしているのかと思った。


「ほんで、言質取ったし、これ渡しとくわ」


 マガツヒさんは一枚の紙を俺に渡した。何だろうかと受け取ると、紙はどうやら書類のようで、書類に書かれた内容に目を通すと声にならない声が出た。




「遅いじゃない!」


 ナナリーの店でハナスキの蜜を買って、検問所へと戻ってくると、地下の勾留場へと入れらていたエウロスがそう言った。


「これで身体を洗うと臭いが落とせるから洗ってこい」


 鼻をつまみながらハナスキの蜜を渡すと、顔を歪めた検問官が鍵を開けてエウロスは釈放となった。


 暫くしてエウロスが検問所の簡易風呂で身体の臭いを落として、さっぱりした様子で出てきた。


「じゃあ帰るぞ」


 既に検問官へのご迷惑の挨拶を終えて、エウロスへと背中を向けて、あのボロ屋へと歩き出す。


「ちょっと待ちなさいよ。ニニリーのところで晩御飯はどうするのよ!」


「行かない」


「行かないって、あたしお腹ぺこぺこよ!あのクエストでお金出たんでしょ!行くわよ!久しぶりにがっつり食べるわよ!」


「金はない」


「はぁ?嘘つきなさいよ。だってあれ、Aクラスのクエストってあんた言っていたじゃない!あ!もしかしてあの細目にちょろまかされたのね!だったら文句言いに行きましょう!あたしが一発殴れば泣いて差し出すわよ!」


「これを読め」


 俺は肩を落としながらエウロスにマガツヒさんから貰った書類を渡す。


「何よこの紙」


 エウロスは眉を顰めながら書類を受け取って読み上げる。


「なになに?貴ギルドで受注された祈り鬼シマスの討伐の完了に感謝の意を示します。しいては討伐におけるアリフレータ森林の生物、植物の被害が甚大であり、討伐報酬から差し引かせてもらいますぅ!?」


 目をひん剥いて声を上ずらさせるエウロス。


「え!?討伐報酬50万ゼンで、被害総額130万ゼン!?何これ借金してるじゃない!!!!」


 そうなのである。エウロスがコレコレを掃討に使ったあの技で、アリフレータ森林に植えてあった貴重な植物群生地を根こそぎ粉微塵にしてしまったらしく、おかけで討伐報酬は無と消えた。


「最後まで読めよ」


「付きましては、余剰の被害額に関しては貴ギルドへと請求させてもらいます。アリフレータ森林環境保護団体より」


 読み終えたエウロスは先程までの元気はなく、俺と同じように肩を落としていた。


「それでマガツヒさんが立て替えてくれる代わりに、これからは高額な討伐任務に就く事になった」


「そ、そう。でもあんたはランクが足りないんじゃないの?」


「俺はどうやらシマス討伐によってABまで格上げらしい。だからそこのところの心配はいらない…」


「お、おめでとう……」


 ようやく空気を読んでエウロスは大人しくなった。


 俺たちの借金は嵩張る一方で、元に戻る方法を試せるのが遠のいていくのであった。

「面白い!」「続きが気になる~」と感じ、お思いになられたら、


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I need more power!!!!

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