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2-10:女神の力

「いやー!だずげで!だずげでー。あたし鼠嫌いなのよ!ぎゃー!耳齧られた!泣いて涙の色で身体が青くなるー!」


 コレコレの群れに埋もれて辛うじて右手と顔だけでこちらに助けを求めてくるも、俺と言えばコレコレに身体を張り付かれないようにするために、身体に見合わない剣を振るっていた。


 コレコレは複数体で狩りをするモンスター。大物相手には大勢で飛びつき、自重とコレコレの体重で体が支えれなくなって倒れると、そこから一気に重さを増し、地面に貼り付け状態まで持っていかれる。


 そうして鋭利な前歯で一噛み一噛みされていく。だから決して身体に張り付かさせてはいけないのだ。


 剣を振って、剣の残像が視界から消えると同時にコレコレが飛びかかってきている。振り返しをする体力もないので蹴りや肘で対応して、また飛んでくるコレコレを切り裂く。


 それでもまだ二十体程しか倒せておらず、俺に向かってくるコレコレは大量にいた。


 やはりエウロスの身体ではこの大量のコレコレを捌くのは難しい。体力もそうだが、一振りごとに体力を持っていく原因がある。胸が、胸が凄く邪魔!


「いっ!」


 疲れが出てきてガラ空きになってしまった背後からコレコレに肩に張り付かれて、コレコレの歯が刺さった。


「しゃらくさい!」


 そのまま後方へバックダッシュし勢いよく背中から木にぶつかってコレコレを潰す。


 木に背中を預けながら大きく息を吐くと、森林の明瞭な空気が肺に満ち浸る。


 駄目だ。息が上がってきた。

 このままではコレコレにかじり取られてしまう。逃げようにも周りには逃すまいとコレコレの大群。万事休すだ。


「助けてって!言ってるでしょー!!!」


 そのエウロスの叫び声と共にエウロスを覆い尽くしていたコレコレが天高く吹き飛んでいった。


「エウロス!お前!それ何だ!?」


 コレコレ達を吹き飛ばしたエウロスは荒々しい風を腕に纏っていた。

 俺の身体だからかあの大量のコレコレに噛まれても、針で刺された程度の傷しかついていなかったし、コレコレの歯が通っていない部分もあった。


「低級モンスターの分際で、女神であるあたしの上に乗るなんて無礼よ!

 神の力をその目に焼き付けなさい!!!あたしの必殺技!第二弾!神嵐風!」


 両腕をこちらに向ける。

 腕に纏っている風が回転し始めて回転する風に小石小枝葉っぱがエウロスの両腕の間に吸い込まれていく。

 吸い込まれた物は風と風に擦り合わされて粉になっていった。


 それだけかとコレコレも俺も思っていると、次第に吸い込む力が強くなってくる。

 へろへろの足腰なので、エウロスの方へと引き寄せられそうになるが、なんとか耐えた。


 吸い込む力が強くなればなるほど腕に取り纏っている風が大きくなっている。


「コレー!」


 怒りに頭を支配されているコレコレが飛びつきに行くと、飛んだことにより支えるものがなくなり風の中に身体が引き寄せられて。


 ギュチャっとえげつない音と共に肉塊になった。


 それを見て俺も周りにいたコレコレ達も顔を青ざめさせる。

 グロテスクなのが苦手と言っていたエウロスは怒りで我を忘れているようで、神嵐風の威力を上げていく。


「おいおいおい!エウロス!俺も吸い込まれるから!こっちに向けるな!」


「不敬殺戮不敬殺戮」


 どうやらコレコレよりも話は通じない状態らしい。

 そう言っている間にも吸い込む力は増し、遂には地に足をつけているコレコレさえも浮き、エウロスの腕と腕の間に吸い込まれていく。


 俺は木にしがみつき、腰のベルトを木に巻きつけて身体を固定する。これなら吸い込まれることはないと一安心だろう。


 逃げ惑うコレコレ達を的確に吸い込んで肉塊にしていく。今日の晩御飯はコレコレの挽肉だな。


 果敢に戦うコレコレはいなく、殆どのコレコレは戦意喪失状態の中、シマスを持っていたコレコレは俺の隣で同じように木にしがみついていた。


「コレコレ」


 目が合うと涙目で首を振ってきた。

 恐らくだが、助けを求めてきているのだろう。まさか低級モンスターに助けを求められるなんて思いもよらなかく、少しだけ放心する。


「コレー」


 涙目でシマスの死体をこちらへと差し出す。

 どうやら助けを求めているのではなく、シマスの死体を持っていて欲しいようだ。俺としてもシマス討伐の証が肉塊だとクエスト完了証明にならないので、確保しておきたい。


 手を伸ばしてシマスの死体を掴む。


「コレ〜」


 それと同時にコレコレは吸い込まれて肉塊となった。


「おい!エウロス!もう周りに魔物はいないぞ!それ止めろ!」


 今のコレコレでモンスターよ気配がなくなり、コレコレ達は全部肉塊になってしまったようなので、エウロスに向かって叫ぶも、なおも威力は上がり続ける。


 木の枝が折れて、草花が根っこから吸い込まれていく。


 これどこまで威力が上がるんだ?もしかしてこの木までもが根本から持っていかれるのでは?そうなれば俺もコレコレの二の舞だ。


 何か打開策はないかと服のなかを弄る。


 む、これは。


 服の中にハナオレの身が入っていた。これを使ってシマスを奪う予定だったのだが、エウロスがシマスを討伐してしまったので使う予定はないと思っていたが・・・とにかく使った方が身のためだ。


 大きく息を吸って、息を止める。

 手に持ったハナオレの実を投げ捨てると、ハナオレの実はエウロスの腕と腕の間に吸い込まれていった。


 ハナオレの実は嗅覚がある生物ならば有効的な実であり、すり潰した際に吐き気を催す程の臭い発生させる。

 モンスター避けとして使われることがあるが、投げ捨てて使用しないと、臭いがついて私生活が大変なことになる。


 それ程までにキツい臭いを放つハナオレの実を擦り潰し、風の通り道であろう場所に身体を置いているエウロスの反応はと言うと。


「くっっっっっっさ!!!!おえっ!えっ!?くさっっっ!!!おえっっっ!!!」


 そう大きく叫んでから、その場で嗚咽しながら神嵐風を解いた。

 どうやら臭さで我を取り戻したようだ。だが。


「うおええええっ」


 エウロスはそう言い残して。涙と鼻水と吐しゃ物を流しながら、その場で気絶した。


 エウロスに殺されそうになったが、何とかシマスを討伐できた。

 これにて懲罰任務達成だ。

 

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I need more power!!!!


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