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2-9:シマス討伐

「アズマ!助けて!助けて!」


 低級モンスターに群がられて行動が制限されているエウロスが助けを求めてくる。

 森林に入る前の会話は聞いてなかったと。


「こっちも手が離せないから、自分で何とかしろ!」


「お願いよ!助けてください!アズマ様!神様!」


「神様はお前だろ!」


 群がったモンスターの体重に負けて地面に倒れ込みながらもなお助けを求めてくる。

 俺は俺に群がってきたモンスターで手一杯で助けてやれることはできなかった。


 どうしてこうなったのか。


 遡る事30分前。


「ねー、全然低級モンスター見つからないじゃない。あたし足が痛くなってきたんですけど」


 森林に入って三時間、少し休憩を挟みながらシマスの信奉者となっている低級モンスターを探しているが、モンスター一体とも出会わなかった。


 その事実に耐えられなくなった堪え性の無いエウロスは文句を垂れ始めた。


「我慢しろ、シマスを討伐しないと野宿だからな」


「何よそれ!一旦中断して街に帰ればいいじゃない!」


「残念な話だが、ここまで運んでくれた馬車は行き専用で、帰りは近くの村まで歩きだ」


「その村に行けばいいじゃない」


「半日かかるぞ」


「は…半日?もう日も傾いているし、帰れないじゃないの!」


 馬車の中で寝ていたエウロスはどれくらい移動したかを考えていなかったようだ。

 アリフレータ森林はヴェルサスから徒歩で半日と三時間くらいかかる。


 話した通り一番近くの村で半日だ。


「だから気張れよ。今から一時間くらいならこの森林内で野宿はせずに済む」


「何よそれ!てかこの森林にモンスター一体もいないのがおかしいんじゃないの!?モンスターって言ったら自動エンカウントシステムが流行りじゃないの!?いや……今の主流はシンボルエンカウントだったかしら……」


 何やらよくわからないことを言っているがエウロスの言うことにも一理ある。


「確かにこれだけ歩き回って一体も出会わないのは確かに珍しいな」


 普通ならモンスターの気配がすぐに察知できるほどに出現するのだが、今日は全くと言って気配さえなかった。


 エウロスの身体だから気配を察知する能力が落ちているのかもしれないが、草むらをガサゴソとすれば虫かモンスターかの二択で出てくるはずなので、出会わない事自体が不思議であった。


「アズマ!分かったわ!」


「何がだよ」


「あたしの神々しさに恐れをなして逃げたのよ!それなら合点がいくわね!?あぁ、あたしって罪な女。モンスターでさえも惑わしてしまうのだから」


「馬鹿言ってないでちゃんと探せ」


「馬鹿ですって!?ムキーッ女神を馬鹿にしたことを後悔なさいな!出てこないなら、出てこさせてやるわ!」


 そう言うとエウロスは足元に落ちている小石を拾って俺とは反対方向へと投擲モーションをして投げた。


 小石は風の力を纏って木々を貫通し、小石大の穴を開けて遠くまで飛んでいった。


「どう?これがあたしの十八番ジャイロボールよ!当たればタダじゃ済まないわよ」


 ジャイロボールで空いた木の穴を見ると、回転した何かに抉られたような傷があった。恐らくだが、風を回転させてカマイタチのような現象を作り出しているのだろう。ふむ、これは確かに当たればタダじゃ済まない技である。


「良い技だな」


「でしょでしょ!他にも消える魔球とかL字ボールとかあるわよ!どう?見直した?」


 自信満々に他の技名を言うエウロス。何で全部投擲なんだよ。まぁしかしここは素直に言っておこう。


「あぁ見直した」


「ふふん。素直なのは神と接する場合には良い心がけよアズマ」


 俺は木々の穴を見直す。穴の奥には同じように木に穴が空いて、ジャイロボールの通り道になっていた場所は抉り削られている。かなり遠くまで飛んでいったようだ。


「!」


 穴を見終えて再び歩き出そうとしたら突然周囲にモンスターの気配が湧き始めた。その数は一体とかじゃなく、複数。十、二十と倍々に数が増えていく。


「ね、ねぇアズマ?」


「何だ?今ならまだゆっくりと離せそうだから聞いてやる」


「あたし達、沢山のモンスターに囲まれてない?」


「エウロスにしては察しがいいじゃないか。その通りだ」


 俺達は気配の感じからして百体程の低級モンスターに囲まれていた。


 モンスターの一体が茂みから身体を現した。成人男性の膝丈程の体長に緑の体毛でねずみのような顔を持って、二足歩行の低級モンスターコレコレだった。


「何よあれ!低級モンスターって言うぐらいだからゴブリンだと思ってたのに何あの出来損ないのゆるふわキャラ!セオリー通りにゴブリンが出てきなさいよ!」


 コレコレを見てゴブリンを求めるやつを初めて見た。ゴブリンは中級モンスターだ。喋る知恵を持っているし、まぁ色々と人間に対して害がありすぎる。


「コレ!コレ!!」


 コレコレが歯をむき出しにして鳴いた。


「ねぇなんかコレコレって言ってるけど、あれはあたし達に向けて言っているのかしら?」


「だろうな。どうやら怒っているらしい」


 コレコレは俺達二人に敵意剥き出しといった感じだ。


「コレ!コレ!!」


 コレコレの後ろからもう一体コレコレが出てくる。そのコレコレは小さな体躯に何かを担いでいた。


「げぇ…何よあれ、頭吹っ飛んでんじゃない。グロ注意ならグロ注意警報だしてよ。あたしグロテスクなの苦手なのよ」


 コレコレが担いでいたのは魔物の死体であり、その死体は頭部が無くなっていた。エウロスは目を逸らすも、俺は嘘であってくれと目を疑って死体をまじまじと確認していた。


「コレ!コレ!」


 コレコレが死体を指さした後に俺達を指さした。あの死体の傷跡とタイミング的にエウロスのジャイロボールが当たったのは明確だろう。それだけでこんなにもコレコレが集まるわけがない。


 コレコレ達は今、俺達を疑っている段階。下手なことを言わなければ、もしかしたら逃げられる可能性がある。


「何よ、あんたらの仲間をあたし達が殺したってこと?はん。低級モンスターの分際で仲間意識だけはご立派なことね。その傷からしてあたしのジャイロボールね。だとしたらあんた達の言う通りもごもごもご」


 エウロスの口を慌てて押さえた。

 コレコレは喋ることはできないが、意思の疎通くらいなら若干できる。なので態度や雰囲気で察知されることもある。


「何するのよ!」


「馬鹿野郎!あの死体がシマスだ!」


「はぁ?あんなちんちくりんのが?」


 祈り鬼シマスは掌くらいの大きさで、ゴブリンのような見た目で、額に三つ目の目があるのと、シマスの体長の三倍ある細長い尻尾があるのが特徴だ。


 エウロスは有言実行通り、モンスター達を集め、発見した。出来たのはいいが最悪の形となったのは言わずとも分かる。


「とにかく、まだ疑われている段階だったのに要らんこと言うから」


「言ったから……何よ」


 エウロスは生唾を飲む。


「事前に説明しただろ。来るぞ」


 エウロスの余計な言葉で完全に俺達を実行犯だと決定付けたコレコレ達が一斉に草むらや木の影から飛び出して襲いかかってきた。


 こうして今に至るのであった。

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