1-10:解決策あるよ
「加減ってものがあるだろ!!!!」
ナナリーに治療してもらって10分後の世界で目覚めた俺は、まだ少し痛む額をさすりながらエウロスを叱った。
「だ、だって、同じ威力の方が再現性あるじゃない?」
人差し指と人差し指を胸の前で横に回しながら申し訳なさそうに言った。
「お前、仮にも自分の体によくも全力のヘッドバッドできるな!
俺が威力抑える術を知らなかったら頭と胴体さよならしてたぞ!」
「あ、あははーそうならなくてヨカッター」
何故カタコトか。
何故顔が少し青ざめているのか。
何故酸っぱい臭いが少しして、ゴミ袋が増えているのか。
考えるまでもなさそうだ。
「まぁまぁ、額同士をぶつけても戻らないと証明できて良かったじゃないかー」
「……じゃあ今度はこの髪の毛を巻き合うやつやるか」
「いっ!そ、それ、なんか特別な条件とか書いてない?ほ、ほら、絵の神代文字のところ」
気を取り直して解決策の話へと戻すと、エウロスは本文とは違い、絵に描かれている神代文字を指した。
神代文字は神が使う文字で、まだ人間が天界にいた頃、人間も同様に使っていたとかなんとか。
エウロスは女神だから読めると思っておいてよさそうだ。
「俺、神代文字読めないんだよな。ナナリーどうだ?」
「エウロス神の言う通りに髪を巻き合うためには、特殊なエキスが必要だよー」
「特殊ってことは、滅多に手に入らないのよね?ね。ね。ね?」
ナナリーに再三確認するエウロスは喜んでいる様子だった。
「なんで嬉しそうなんだよ。安心しろナナリーの店に特殊じゃないものはない。だよな?ナナリー」
何に使うのか分からない甲殻とか、ドロドロした何かの体液とか、まぁ薬学に関するのならなんでもある。
「アズマ君は私を買い被りすぎだよー。まぁあるんだけど、お値段張るよー」
「いくらだ?」
ナナリーは片手を大きく広げる。
「5万ゼンか、それだったら払えるな」
ナナリーは首を振って答えた。
「5000万ゼン」
「払えるか!なんだその法外な値段!」
「しょうがないよー、世界樹の夜露って言って世界樹の近辺で一週間雨が降り注いでから、その世界樹の樹木と一週間分の雨水が、超厳選されて濾過して奇跡的に融合した代物だもん。
それに他の弊害も色々とあるしね。それを加味して大体50年に一回取れるかどうかだよー」
世界樹の夜露。噂には聞いた事があるが、眉唾物だと思っていた。
一週間雨が降った後一攫千金を狙って世界樹に行く夢追い人もいる。どいつもこいつも旅立ってから帰ってきていないので、まさか、本当に存在しているとは。
因みに効能はどんな傷でもたちまちに治る。
「流石に5000万ゼンは払えないな」
「そうね。違う手段を探しましょう」
妙に諦めが早いな。ぐだぐだ言われずに済むならそれでいいか。
「友人でもこれは商売だからねーごめんねー」
「いやいや、力になってくれているだけでありがたいよ。
神学の観点からはこの解決策があるとして、魔導学の観点からは解決策はないのか?」
「んー、あるっちゃあるけど、世界樹の夜露を取るより難しいよー」
「あるの!?教えなさいな!」
人が変わったような食いつきよう。やっぱり情緒が壊れてしまっているんだろう。
「元に戻った後のことだけど、戻ってからエウロス神は天界に帰りたいんだよねー」
「そうよ、誰だって故郷には帰りたいでしょ」
「んでんで、アズマ君は例の病気を治したいと」
「ま、まぁそうだな」
誰にも言いたくないが、医者としての腕は確かなので恋患いという事は伏せて、ナナリーには伝えてある。
良かった、最低限のプライバシーは保持してくれるみたいだ。エウロスに恋患いの事がバレたら物凄く馬鹿にしてくるだろうからな。
「勿体ぶらないで言いなさいよ。どうやったら戻れて、あたしは天界に帰れて、アズマの病気が治るって言うのよ」
「言っても腰を抜かさないでねー」
「抜かさないわよ。なんならしっかり口も閉めておくわよ」
「じゃあ解決策を言うよー。解決策はねー、魔王を討伐することだねー」
どんがらがっしゃん!と医療器具を巻き込んでエウロスはこけた。
腰を抜かすとかいうレベルじゃなく、いきなり天と地が裏返ったかのようにひっくり返った。
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