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暗殺者の結婚  作者: 萌木野めい
I.廃業と転職
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6.結婚相手

 サザが乗っていた馬車の中に、土で汚れた顔の青年が顔を出した。


「ど、どうも……」


「疲れたか? 案外遠かっただろ」


 青年はそう言いながらこちらに手を伸ばした。

 サザは戸惑いつつ、差し伸べられた手を取ると、青年は馬車から降りるのを手助けしてくれた。

 

 短い黒髪に黒目の青年は、サザより二、三才位年上に見える。


 馬車から降りて分かったがかなりの長身で、小柄なサザが見上げる位の身長差だ。

 整った顔立ちはどちらかと言うと女性的で柔和な雰囲気がある。目を見張るような美青年という訳では無いが、優しそうな瞳が印象的だ。

 青年は動きやすそうな綿のシャツとズボンを着ていて、どうやら農作業をしていたらしく顔だけでなく体も土まみれだ。

 しかも、青年の体からはひどい匂いがする。サザは思わず顔をしかめた。


「匂うか? ごめんな。

 今日は堆肥を撒くのを手伝ってたんだ。あそこの畑で」


「は、はあ」


 青年が指差した方に、少し離れた畑の脇で農機具の片付けをしている人達が見える。

 もしや、このすごく農家っぽい感じの人がユタカ・アトレイドなのか?という考えがサザの頭の中に浮かんだが、すぐに打ち消した。

 服が完全に平民だし、何より、この人は帯剣していない。国一の剣士が外で丸腰はないだろう。


(とりあえず、この人ではないな。近所の世話好きな人かな?)


「領主さまー! 今日はありがとー!」


 畑で農機具を片付けていた市民たちが、手を振りながらこちらに向かって叫んだ。


「またなー!」


 隣にいる黒髪の青年が手を振り返している。


「えっ」


(じゃあやっぱり、この人が……?)


 困惑しているサザの様子に気がついた青年はサザの方に向き直った。


「おれがイーサの領主、ユタカ・アトレイドだよ」


 サザは慌てて頭を下げた。


「私はサザ・アールトです。

 あの……剣士様とお聞きしましたが、剣は……?」


「農作業するのに邪魔だから置いてきた。みんな怖がるしな」


「そうですか……」


 サザは戸惑いを隠せなかったが、ユタカは気にしない様子でサザの手を取り、一緒に城の中へ歩き出した。


(なんか、思ってたのと違うな……)

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