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暗殺者の結婚  作者: 萌木野めい
I.廃業と転職
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3.転職

 しかしそれは実際のところ、全く大丈夫では無かった。


「もう、ほんとに、どうしよう……」


 日が暮れたギルドからの帰り道をとぼとぼと歩きながら、サザは一人呟いた。


 三人は翌日から、仕事を探すためギルドに通った。そこでカズラは武術の経験から子供向けの道場でのアシスタント、アンゼリカは毒殺の知識を生かして薬屋の仕事を見つけたが、サザの新しい仕事は一向に見つからなかったのだ。


 戦争が終結し平和になったイスパハルにはサザ達のような移民が増えたことで、スキルが無くても出来るような下働きの仕事は枯渇した。そういう仕事はコネがなければありつけないという。募集があるのは高いスキルの求められるものばかりだ。


 メイドの仕事だって誰でもなれるのではない。メイドにはメイドとしての高い能力を持つ者の募集しか無かった。

 スキルと言えばサザは元々腕利きの暗殺者なのだから、暗殺者でなくとも用心棒や傭兵のような仕事であれば十分に就くことができる。しかし、そんな仕事に付けば暗殺者であった過去がばれやすくなる。それはこの国、イスパハルで生活する上では死活問題でもあるのだ。


 イスパハルでは暗殺者は最も忌み嫌われる職業だ。それには理由がある。

 現在のイスパハルの国王アスカは、二十年余前に妻である女王と生まれたばかりの王子を、カーモスの暗殺者に殺された。

 イスパハルは王と女王による共同君主制を取っていたが、女王は不在となり、今の君主はアスカのみだ。


 国民の自由に重きを置くイスパハルではあらゆる職業に就く自由が憲法で保証されており、暗殺者も例外ではない。

 しかし、その事件の後からイスパハルの国民の間で暗殺者は「最も卑怯な職」と揶揄されるようになり、暗殺者とばれれば追放同然の扱いを受けてしまう。


 女王と王子の暗殺から二十年に渡り続いた戦争は遂に二年前、カーモスの降伏によりイスパハルの勝利で終結した。

 その後はアスカ国王の優れた治世により、イスパハルには絵に描いたような平和が訪れたのだ。平和の世では、それを脅かす可能性のある暗殺者への目はより厳しいものになる。

 だからサザ達は絶対に、『普通の娘』らしい仕事に就かなければいけないのだ。


(カズラとアンゼリカは暗殺の他に得意なことがあっていいなあ。

 私だって、暗殺だったら、誰にも負けないんだけどな。でも、もう絶対にやらないんだ)


 サーリが店を畳む日が日に日に迫ってくる。サーリの栄転は喜ぶべきだが、サザはここのところ、ため息をついてばかりだ。

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