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1話 転生しました。でも、もう死にそうです。

ふっとなぜか見たことのある光景だとデジャヴを感じたら、前世を思い出した。

ここは、死ぬ少し前に絵柄が好み ( 特に主人公が好みなタイプだった ) で買ったゲームのゲームそっくりな世界だと。

そして、自分はその序盤で魔物に襲われて亡くなる勇者の幼馴染と同じ名前で、しかも、確かここはその場所だったのでは…?


冷や汗がぶわりと全身から噴き出す。


「( いやいやいや、普通は高熱をだしたり、転んだ拍子にとかなんか前置きあるでしょ?!

そんで、死亡グラフ折るために、回避するための計画を立てるとか行動とかすんのがストーリーのお決まりであって!!)」


――いや、まぁ、確かにふっと思い出すとかデジャブを感じてのパターンもあるけど!!あるけどさぁ?!

それでも、もうちょっと時間あるよ?!

思い出し早々、死亡イベント発生とか無理ゲーすぎるでしょ!!

精神年齢は(前世も含めたら)大人でも、今は、無力な幼女だし!!これ、初期装備でボスに挑むようなもんじゃん?!


「ふ、ふざけんなぁぁぁぁーー!!」



叫ばずにはいられないほどの混乱中の心情もお構いなしに、待った無しで登場した魔物を見ることもなく、ポケットからある物を投げ捨てながら既に体は走り出していた。



転生前のいろいろと容赦ない親友は言っていた。

『あんた、条件付きだけど、瞬発力は凄いよね。』と。

昔から全くの超がつくほどの破滅的な運動音痴な筈なのになぜか逃げ足だけはとても速かった。

しかも、なぜか身に危機が迫るときだけ直感が働くため、危機を感じた時には、タイムロスなしで速やかに逃走する事ができるという自分でも意味のわからない仕組みだった。


まぁ…体力はないため、早々にバテてすぐに捕まるが。

そして、こうも言っていた。

『てか、それを取ったらほとんど何も残らないんじゃない?』と。

いや、親友よ。酷すぎるんじゃないだろうか?それでも親友なのかと。

私にだってそれ以外にも何かあるはずだ。

確かに、頭脳は凡人のレベルよりやや低く、また運動にいっては、皆無なほど才能はない上に、反射神経だけはいいという変な運動音痴。

たいした特技もなく、手先も不器用、生活能力はほとんど壊滅的で、料理(母親がせめてと叩き込んだ。)だけは、多少できる程度…。


…うん。やっぱない気がしてきた…。



色々と前世に思いを馳せて悲しいような虚しいような気分になっているので、なんかある意味走馬灯みたいな気もするが、今の所は、まだ生きてはいるし、希望はある!…と思いたい。




ーーよし、話は戻そう。


今、少し離れた茂みに隠れ、隙間から様子を伺っているところだったりするので、まだ全然危機は脱していないのだ。



ちなみに魔物は登場とか同時に手を振りかざしていたので(横目で確認した)私がいた場所は大きく地面がえぐれている。あの場にいたら即死か良くても深傷を負い、動くことも出来ず、二度目の攻撃で間違いなく死んでいただろう。



えぐれた地面を見ながら、本当にこの体に感謝した。

どんなに瞬時に動けようと持久力が無いのでは、すぐに追いつかれて即座アウトだ。

その点この体は、前世と違ってとても身体能力が高いし、体力もある。


――それに、とても頭が回るようだ。



確かに、あのまま走って逃げようならば、少しの間、時間は稼げても、子供の足では、逃げられる距離はたかが知れている。


我を取り戻した魔物にすぐさま追いつかれ、今度こそ確実に殺されるだろうと即座に判断し、魔獣が混乱している間に、来る前に見かけていた草花のある茂みへと隠れていた木の陰から素早く逃げ込んだ。

この草花が近くにあったのも運が良かったとも言える。


この茂み付近に生えている草花は、魔物が嫌がると言われている。事実、確かに嫌がっているのかこちらに来ない。


でも、ずっとここに隠れて通せるわけではないし、気づかれたらバッドエンド(死亡)ましぐらだ。


魔物は、先程まで混乱していたようだが、今は、周囲を探ぐるように必死にヒクヒクと鼻を動かしながらあたりを見渡している。


ーーちなみに、逃げる際に投げ捨てたのは、少しの量でも目や口などに入ると凄まじい痛みを感じる植物を丸ごと乾燥させ、粉状にした物をふんだんに使用し、また強烈な臭いを放つ果物の汁を中に仕込んだ二層式の村オリジナルの目鼻潰しの煙玉だったりする。しばらく涙はとまらず、匂いにいたっては一週間は取れない代物だ。嗅ぐだけでも気絶する者もいる程、本当にヤバい代物だ。


魔物と言えど、獣に近い形をしているためもあり、効果抜群だったらしく先程までは、強烈な臭いのためもがき苦しみ、暴れまわり、気を失いかけていた。



万が一(魔物や変な大人に出会った場合)の為、一応いつも持ち歩くように渡されていたが、使う日がこんなにも早く来るとは思わなかった。

ちなみに、専用の特製の紙で包まれていて、匂いなどは心配ないが、扱いには細心の注意が必要だ。


残念な事に、多少の知性のある魔獣だったらしく、土を掘り返し、その土に体を擦り付け、だいぶ粉も匂いも落としてしまったためか、徐々に落ち着き始めた。

未だに遠目からでも魔獣の大きな目が潤んでるのがわかるが、目つきはかなり凶悪だ。


ーーつまりは、激おこ状態である。



いつか見つかるかわからないこの状況に恐怖と緊張のため、身体がガタガタと震えそうになるの力一杯体を抱きしめながら息を潜める。

まるで、永遠に続くかのような時間の感覚に心身共に疲労していくのを感じながらも必死に耐えていた時だった。

 


ーー彼の、今の私の幼馴染みの声が聞こえてきたのは。



一瞬、ほっとしたのか少しだけ体から力が抜けた。

だけど、その際に少しだけ音を立ててしまったのだ。

しまったと思うよりも先に魔物がこちらを見たのがわかった。というか、バッチリ目が合ってしまった。



――今日二度目の逃走劇の始まりを告げるように魔物が唸り声を上げるのを聞きながら、私はまた走り出していた。


 






「(もう!!ほんとーに!自分の不運さを恨みたいぃぃぃ!!!)」




この始まりの日、数日後に目覚めた私は誓った。

ストーリー上、幼馴染みである私が死ぬことで覚醒イベントが始まるが、死ぬなんて冗談じゃない!と。

傍観者の位置を確保しつつ、ヤバい時は、一応フォローをする形で、全力でグラフを折り、私は、生きて、生きて、生き抜いて!地味でもいいから安全に平穏な人生を送って寿命で死にたい!!と。


ーーこの日、まだ5歳の今の私の人生の目標が決まった。



『ある程度安全で、地味でいいから平穏な暮らしを手に入れて、出来る限り病気や事故に気おつけて、天寿を全うすること。』




――でも、思わぬ所でその目標がある意味狂うなんて今の私は知らなかった。


幼馴染みであり主人公でもある()がストーリーをガン無視で行動し、なぜか私に執着を見せ始めるなんて思いもしなかったのだ。




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