とある地形学者と魔物学者の対談
どうもこんにちは。
「あ、ご無沙汰です。最近どうですか?」
私の方は調子いいですよ。
なんせこの時期はエンペラーバタフライが産卵の為に森の端まで来る時期ですから。
「そういえばもうそんな時期でしたね」
ええ。
凄かったですよ、あれは。
初めて神と言われる魔物の姿を見ることができましたからね。
「え、そんなに端っこまで来たんですか?」
いいえ。
数名の冒険者を雇って行軍みたいなことをしてたらですね、餌の回収みたいに現れて冒険者たちを虐殺しちゃったんですよ。
「冒険者を撒きエサに使ったりはしてませんよね?流石にね?」
し、知りませんな〜。
いくらエンペラーバタフライが子供の為に人間を狩るということを知っていても流石にそんなことはしませんよ。
冒険者ではしません。
「はい、犯罪奴隷確定。いくら法で犯罪奴隷の扱いが自由にされていても流石にかわいそうなのでは?」
でもなるべく良装備を上げたんですよ?
生き残って帰れたら犯罪奴隷から解放する条件でしたので、犯罪者が減ったと思ってください。
「本当になんでこんなゲスが学者やってるんだろう?」
こらー、失礼ですよー。
「そういえば知ってますか?地形学的により高度が高い場所の方が魔物が強くなっていくということを」
お?
なんですかそれ?
詳しく。
「最近わかったことなんですがね?標高の高い山や深い渓谷などは魔物が多数生息しています」
それくらい知っていますよ。
いわゆる迷宮やダンジョンでしょう?
「はい。まあそれも地形学的にはただの森や山や谷ですけどね。それで資料を見ていたらどうにも不思議な点があったんです。深度の浅い谷やそこま標高の高くない山なのにかのリメル氷山よりも資料の少ない場所が多数存在したんですよ」
あの世界で最も標高が高い山と言われるリメル氷山ですか。
確か北の大陸にあると言われているんでしたっけ?
「はい」
それよりも資料の少ない山や谷となったら貴女的に看過できないのでは?
「そうです。なので過去の資料を全て洗ってみました。報告書にはどこでどの魔物に遭遇し調査を諦めたかなどが記載されているのですが、これはある岩山の調査報告です。読み上げますよ。『第1回調査隊・標高100m地点でナイトウルフの群れに遭遇。調査を断念』『第13回調査隊・標高200m地点でアースモンキーの群れに遭遇。調査を断念』『第14回調査隊・標高400m地点でアースサーペントに遭遇。調査を断念』『第15回調査隊・標高970m地点、頂上付近でAランク相当の地竜に遭遇。対話により頂上までの調査の承諾を得た為調査完了。これ以降の調査は無意味と判断』。ほらね?」
本当ですね。
ナイトウルフがDランク、アースモンキーがCランク、アースサーペントがBランク、下位地竜がAランク。
本当にぴったりですね。
上位竜や龍種はでなかったんですか?
「それらはでなかったみたいですね。特に龍種はエンペラーバタフライと並ぶで生ける伝説ですから」
いいえ、厳密には違いますよ。
龍種といっても上位竜からの進化したての頃の龍種はステータス的に4000〜6000程度、勇者には敵わないですし上位の龍種に至っては逆に勇者の方が手も足も出ません。
エンペラーバタフライは上位龍を軽く超える強さはあるのでそれこそ神話に登場する龍種でもなければ勝ち目はないでしょう。
「へ〜。ちなみにその神話の龍種とは?」
北の神話に登場する氷龍、地の世界の長と言われる地龍、かの火山・ボルクタの頂上に住まうと言われる炎龍、海上の嵐に住まうと言われる嵐龍、そして魔族領との間、先日私が出向いた蝶の山脈の頂上に住まう蝶龍ですね。
これら全てに名前があるとされていますがその尊き名前を知るのはその『領域』に足を踏み入れた極一部の生命のみだそうです。
ちなみに全て実在します。
「全て実在するんですか?」
はい。
「しかし、ボルクタですか。一度赴きましたがあそこすごい暑いですよね。鎧以外の服一式燃えました」
そうですか。
あなたは燃えなかったんですか?
「流石に火耐性を上げてから行きましたよ。地形学者だけ裸の行軍でしたけど」
それは是非見てみたいですね。
あなたの後輩の女の子かわいいじゃないですか。
「私も一応女ですけどあの子ほど可愛くないですしね。でもあなたは男探す気ないんですか?」
ないです。
正直な話女の方がいけます。
「その理由は?」
魔物が人型になった時に女の方が多いからです。
「そういえばお前魔物にヤられたいとか言ってたな。ゴブリンにでも犯されてろ」
ゴブリンは嫌ですね。
だって生まれてくるのゴブリンじゃないですか。
もっと上位の種族がいいです。
例えば人化できる上位龍とかですかね。
文献には龍人という種族ができたと言われていますが本当なのかどうか試したいです。
「話してるだけで気持ち悪くなってきますからこの内容はお終いにしましょう。因みに私、先日婚約しました」
出来婚ですか?
「ブッコロスゾ?」
すみません。
そういえばあなた貴族でしたね。
貴族の女性が犯されろといか言ってはいけませんよ。
お相手は?
「うちの国の第1王子殿下です」
思いっきり王太子じゃないですか。
こんな会話してて大丈夫ですか?
殺されるんじゃ。
「殿下はそんな人じゃないですよ。優しい方です」
あ、貴女の心配じゃないです私の心配です。
「殿下〜。魔物学者を一人殺して欲しいのですが〜」
わー!
すみませんごめんなさい許して下さい!
「冗談です」
本当に冗談ですか?
今貴女お抱えの暗殺集団がこっちに向かってきているんじゃ、、。
「さすがに大陸越してまで行くほど貴女に価値ないですから」
逆にひどいですね。
殺すなら龍種に頼んでください。
そうじゃないと私は死にませんよ?
「黙れこのクソ賢者」
そうですよ〜。
貴方の国の勇者君よりも強い賢者さんですよ〜。
「事実だからクソウザい」
まあ、先代ほど強くないですし精進の日々ですね。
う〜ん。
先代が事故で死んでしまったのが悔やまれる。
「そう言えばそうでしたね。死因は?」
馬から落ちました。
「嘘つけ。私でも生き残るわ」
嘘です。
でも再生能力が異常の騎士は一般人ではないのであまり比較対象にならないでしょう。
普通の人はそれで死ぬんですよ?
「そんなこと分かってますよ。それで?死因は?」
原因は次元魔法の行使の失敗ですね。
あれはステータスには表示されない、ある意味ステータスの枠を超えた魔法ですから。
「貴方はどこまでできるんですか?」
師匠の一万分の1くらいです。
師匠マジでバケモン。
空間魔法ですら一瞬で使ってたので魔法系のスキルが全てLv10いってたのは確実ですね。
「魔法系スキルが全てですか?流石にそれはないんじゃないです?」
あり得るのが先代賢者です。
実は次元魔法が暴発した後、死に際一緒にいたんです。
遺言なんだと思います?
「なんですか?」
『チートもらって調子乗ってたわ。ペッちゃんごめん』ですって。
「チート?ペッちゃん?誰ですかそれ?」
さぁ?
ゆくゆくは調べていくつもりです。
それではまた。
「ではまた」