林港1
新キャラです。
目が覚めた。
僕に何が起きたかなんて、僕自身説明がつかない。
赤褐色の腕が視界に入る。
僕は転生した、授業中に気を失って。
どうしてこうなったのかは説明がつかないが、とりあえず僕は転生してしまった。
「おいガスト。どうしたこんな時間に起きて?」
僕と同じ赤褐色の肌を持つ、人型の大きな鬼、オーガが話しかけてきた。
「なんでもないよ父さん」
「おまえも10だ。そろそろ狩りを教えたい」
「本当に?」
「ああ」
前世では柔道部の部員だった。
一番強かったけど、僕の人生でも忘れられない経験がある。
実は僕は中学の時に一度、山で遭難した事がある。
そこで助けてもらった山小屋の猟師さんに世話代を働けと狩りを教え込まれた事がある。
二日後には家に戻れたが、あの体験は今でも鮮明に思い出す。
楽しかった。
命を刈り取る行為が。
柔道は人を殺さない。
でも、初めて生物を殺して、皮を剥いで、肉を食べた時の感動は、忘れがたい。
「お前の歳だと普通は怖がるんだがな。おまえは力は強いし何よりも鬼になれる才能がある。だからこんなに早く教えるんだ。他の子には内緒だぞ?」
「わかったよ父さん」
僕はオーガに生まれた。
全てのオーガは鬼になることを夢見ていて、過去に数度鬼になったオーガもいたそうだ。
オーガは狩猟の一族。
村全体で狩りをして、村で分け合う。
一年に一度は狩ったものに感謝をする祭りを行って盛大に祝う。
暮らしは原始的だけど、ここには確かな社会が構成されている。
父さんに連れられて家の外に出る。
外はまだ薄暗く起きるのには早い。
「この時間に毎日起きて森の三本大木に来るんだ。わかったな?」
「うん」
「よし寝るぞ」
「二度寝するの?」
「今日は蛇狩りだからな」
蛇というのは土魔法を使ってくる大きな蛇らしい。
この世界にはステータスというものがある。
生まれつき鑑定というスキルを持っていた僕は、自分のステータスを覗き見ることができた。
オーガLv1
名前・ガスト
HP300/300
SP540/540
MP30/30
速度400
物理攻撃力700
魔法攻撃力40
物理耐性500
魔法耐性360
スキル・威圧Lv1鑑定Lv4打撃Lv1格闘技Lv1狩猟Lv1
称号・《転生者》転生者のみに見える称号。成長に補正と促進がある。
僕の力は、オーガの中では特に強い方らしい。
多分だけど、前世での経験が少しだけこの世界にも反映されている。
家の中に入る父さんを見ながら、僕は狩猟へと思いを馳せた。
そして、5年が過ぎた。
僕はもう狩猟する組の一人に数えられていて村では一番強くなってしまった。
今日も猟の日だ。
僕は一人でも大丈夫と判断されているのか、一人で守りに入っても誰にも文句を言われないし逆に狩った獲物で喜ばれるのだ、
だから僕は今日も狩りをする、
狩りは楽しいし、強くなって行く実感もあるし、何より家族が喜ぶ。
獲物を見つけたら、まず威圧で相手を萎縮させる。
そして一気に襲いかかる。
突進してくるものはそのまま頭をつかんで投げ飛ばし、逃げ出すものは後ろから打撃を与える。
そんな日々を繰り返しているうちに、Lvが上がっていった。
オーガLv10
名前・ガスト
HP1300/1300
SP1540/1540
MP530/530
速度1400
物理攻撃力1700
魔法攻撃力540
物理耐性1500
魔法耐性860
スキル・威圧Lv5鑑定Lv5打撃Lv7格闘技Lv6狩猟Lv8
称号・《転生者》転生者のみに見える称号。成長に補正と促進がある。
《狩人》獲物を狩り続けたものが得る称号。
村一番の強さ、それは誇りに思うし僕だって嬉しい。
でも、ここ最近はあまりLvが上がっていない。
苦戦らしい苦戦もせずに、唯作業のような狩りを続ける日々が多い。
どうしようかと悩んでいると。
父さんが家の中から出てきて、僕に手招きした。
何事かと思って行ってみると、僕と同い年ぐらいのオーガの女子が座っていた。
「父さん、この人は?」
「ああ、隣の村のアイシャさんだ」
「こんにちわ」
「どうも。でもどうして隣村から?また狩猟線を越えたの?」
オーガの村は、ここ周辺にも幾つかある。
そこにはお互いの狩猟できる範囲を決められている線があり、そこを越えるとそこで狩った獲物はちゃんと渡さなきゃいけないし、ちゃんと謝らないといけないのだ。
「いや、違う」
「じゃあなにが?」
「縁談だ」
「ふーん。、、、、え?」
「隣村の村長の娘さんとおまえが婚姻を結ぶことになった」
「え?」
「末長く宜しくお願いします」
「え?え?ちょっと待って?え?」
「混乱するだろうが、これは村で決めたことだ。それに、双方の村がひとつになる、きっかけでもある」
「話が大きくなってきたんだけど、、、」
「まあおまえは美人な嫁さんをもらえるし狩りの範囲も広がる。いいことずくめだ」
「うーん、、、、、、わかったよ」
「そうか!」
父さんはこれ以上ないくらいに笑顔なり、僕の背中をぶっ叩いた。
まあ確かに美人とは言えなくもない。
実際、オーガの体は人に近い。
近すぎるぐらいに。
唯ガタイがよくなって身長が伸びただけみたいな感じだ。
「じゃあ、頑張れよ」
「え?」
父さんや家族が家から出て行く。
僕とアイシャさんだけが取り残され、なんか気まずい雰囲気になった。
「あの、お茶をどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
思わず硬い返事になってしまった。
お茶を飲んでみると、ほのかな温かみが全身に回った。
少しぼうっとする。
体が熱い。
アイシャさんが僕に迫ってくる。
顔が近づき、キスをした。
唇が触れる程度の、軽いキスだ。
でもそれだけで、僕の理性は崩壊した。
「やってしまった」
「どういう意味でだ?」
「全部だよ父さん。まさかあのお茶に、、、」
「っはっはっは!俺もそんな感じだったぞ!」
「笑い事じゃないんだけど、、」
僕の眼の前では、アイシャさんがニコニコしています。
「とても激しかったですよ?」
「あの、アイシャさん?揶揄うのやめて下さい。お願いですから」
「責任取ってくださいね旦那様?」
「、、、、はい」
「はっはっは!!!」
「だから笑わないでよ父さん」