新山隆介9
全話と比べて短いです。
『『転生者?』』
僕たちの声が重なった。
「うん?何語ですかそれ?」
『黙っていてください』
日本語で言ってしまったがそんな事は今はどうでもいい。
重要なのは、目の前の小さな転生者だ。
『転生者、なんですか?』
『う、うん。貴方も?』
『創哲学園高等部?』
『ええ、A組』
『僕もだ』
『渋谷由花よ』
『新山隆介だ。よろしくね』
『どうしてここに?』
『君こそどうして?あまりいい状況ではないみたいだけど』
『話せば長くなる。それよりもあの肥った奴が貴方を殺そうとしてるわ』
『子爵が?』
『知らないけど、念話で聞こえたの』
「もしかして子爵が暗殺しようとしてきてるっていう話してます?あの侍女が暗殺者ですよ?」
『なんて言ってるの?』
『子爵と一緒にいた侍女が暗殺者だって言ってる』
『そう。あの、お願いがあるんだけど』
『首輪を外すんだね?分かった』
鳥籠を引きちぎり、そして渋谷さんの首にある首輪を外す。
『ありがとう。おかげで魔法が使えるわ』
「それは封魔の首輪ですね。かなり高いアイテムですよ?子爵が買えるものじゃないですけど、、」
『その首輪はかなり高い物で子爵じゃ買えないって言ってるけど』
『攫われたの。気づいたら袋の中でこれを嵌められてた』
『そうか、災難だったね。後ろの魔物達はどうする?』
『できれば連れて行きたい』
『人を襲わない?』
『言い聞かせる』
『じゃあいいよ』
魔物に近づいて、鎖を壊していく。
《かっかっかっ・すまんのう小僧》
「竜の方ですね?」
《いかにも。あのデブを今すぐぶち殺しに行きたいんじゃが?》
「ダメです。僕たちに任せてください」
《しょうがないのぉ》
竜やアーマードゴブリン、ヘルウルフというかなり強力な魔物達の鎖を解いていく。
「子爵と暗殺者が来ますよ」
『来るよ。気をつけて』
『わかってるけど私はこう見えて強いのよ?』
『知ってるよ。お互いにね』
『そうね。光明鎧!』
渋谷さんが魔法を発動する。
光が輝き渋谷さんが鎧に覆われる。
『別に魔法の発動は意思だけで大丈夫だよ?』
『え?、、、、』
顔を赤面させて俯く渋谷さん。
まあそりゃあ恥ずかしいよね。
『まあいいわ。あのデブに一太刀浴びせてやる』
渋谷さん、口が悪くなってる。
「はい、上ですね。弟子」
「わかってますよ」
水魔法・水矢を使って上にいる暗殺者の体にダメージを与える。
「うっ!!」
天井に亀裂が入りそこから暗殺者の格好をした侍女が落ちてきた。
僕の魔法は足を貫通したらしい。
それでも立ち上がり彼女は僕にナイフを刺そうとしてきた。
土魔法・土壁を発動して足元を掬う。
空中で一回転した侍女はそのまま頭を打ち付け気絶した。
治癒魔法を使って足の傷を治す。
「激甘ですね。さっさと殺しましょうよ」
「ダメです」
「その考え方はそこにいる妖精族と何か関係がありますよね?」
「妖精族?」
「手を出してはいけない、禁断の種族ですよ。彼らは自主族を害した物に容赦はないです。なにせ一国が滅んだこともありますから」
「そんな危険な事を子爵が?」
「はい」
「子爵はどこにいますか?」
「もうすぐきますよ」
『なんの話をしているの?』
『もうすぐ元凶が来るよ』
『あのデブね』
扉が勢いよく開き、息を切らした子爵が飛び出てきた。
「このゴミどもめ!ガキのくせに偉そうにしやがって!私のコレクションを解放したなぁ!!!!」
「貴方にそんな事を言う権利はない!妖精族に手を出してはダメだという事を知っていたんでしょう?!」
「この屑め!お前達に何がわかる!」
「少なくとも貴方の未来はわかりますよ?」
『このデブがぁぁぁ!!!!』
鬼の形相で渋谷さんが光の剣を子爵の太ももに突き刺す。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
子爵が悲鳴をあげてその場で転げ回る。
その姿を見ながら、渋谷さんは脇目で虐げられていた魔物達を見た。
『ねえ、新山。あとは彼らに』
『いいのかい?』
『一番被害にあったのは彼らよ。彼らが手を下さなければならないの』
『そうか』
竜の方に振り向き釘をさす。
「殺さないでくださいよ」
《わかっとるわい小僧》
僕と師匠、渋谷さんは扉を出て子爵の悲鳴を聞きながら、そのまま銀の騎士の場所へと向かった。
数日後。
マカクーラ子爵は翌日に王都に連行され、直ぐに処刑された。
子爵家は取り潰し、マカクーラは王族の直轄領となる事が今日御触れとして出回った。
マカクーラ子爵、前子爵は領民から大量の税を取ってあの魔物達を買い集めていたと言う。
魔物達は人間を襲わないという事で、そのまま近くの山に住み着いた。
強い魔物が多かったおかげか馬車道での魔物の被害は極端に減り、一部ではお供え物の変わりとして食料を置いていったりする人もいるらしい。
それはそうといい、何故かカラットさんが渋谷さんの事を終始睨んでいる。
それに渋谷さんは『別に取りはしないわよ』と言っていたが、カラットさんは身につけているアクセサリーの心配をしているのだろうか?
日本語で言っても伝わらないと思うけど、、、
でも、それよりも問題なのは師匠だ。
結局、転生者の事を全部話す事になった。
その時にチートという言葉に聞き覚えがあるか聞かれたが、はいと答えたら師匠は黙り込んでしまった。
理由は話してくれないだろう。
そういう人だ。
『それで、貴方はどうするの?』
馬車の隣に飛んでいる、渋谷さんが話しかけてきた。
今は伯爵家の馬車の中だ。
流石に朱赤との一件を再発させるわけにはいかない。
『僕は一応出身地に帰るけど、君は?』
『私は帰れないの。母様達に、人間を見分けろと言われてきたから』
かなりまずい。
そう思った理由は、妖精族は手を出されたら容赦はしない、そう師匠から聞いたのがつい最近だからだ。
『別に悪く言うつもりはないわよ。他の転生者に会えるかもしれないし、助けてくれたしね』
『ありがとう』
『なんで貴方が礼をいうのよ?』
『多分そのうちわかるよ』
『教える気はないのね?』
『まあね』
馬車は進む。
他にも転生者がいるという希望が見え、僕の心は少し晴れ晴れとしていた。
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