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転生したら蝶でした。  作者: おとのそうくつ
31/43

渋谷由花5 and 新山隆介8

タイトル順とサイド順は逆です。正確には新山隆介8 and 渋谷由花5、ですね。

 馬車の中からヨマカコーハの隣の街、マカクーラが見えてくる。

 街はこの国にしては木造が多くどこか観光地の匂いを漂わせている。

「降りろ」

 自称騎士団に連れられ馬車を降りる。

 すると街の反対側から馬に乗った銀の鎧をつけた騎士がこちらに来るのが見えた。

 銀の鎧の騎士というのはこの国の国王、つまりお爺様に認められた勅命騎士という騎士ということで全ての騎士の憧れだ。

 また近衛騎士は金の鎧の騎士とも呼ばれ金の装飾が入った鎧を着ている。

 近衛騎士は王族を守るが勅命騎士はどちらかというと地方に派遣されることが多い。

 そのうちの一人が今こちらに向かっている勅命騎士なんだろう。

 多分カラットさんか馬車の御者あたりから僕たちのことを聞いたのかな?

 銀の騎士が来たことで朱赤騎士団に緊張の色が走る。

 馬が急停止し銀の騎士が目の前に飛び降りる。

 流石にただの構成員では格好がつかないのか騎士団の長と思われる赤い鎧を着た騎士が別の馬車から降りて対応し始めた。

「銀の騎士殿よ。そこを退いてくれぬか?」

「馬鹿者どもが!貴様ら極刑では済まさぬぞ!」

「なんのことだ?」

「この方をなぜ拘束した!騎士団を自称しているのに王族の見分けすらつかないのか!」

「何を言っているのだ!」

「もう良い!貴様らは一生騎士団になどなれん!」

 朱赤騎士団に何を言っても通じないと判断したのか銀の騎士は話すのを諦めてこちらに向かってきた。

「殿下、賢者殿ふざけるのも大概にしていただきたい。困るのはこちらです」

「すみませんね。馬車を運転するの疲れるので便乗しました」

 師匠が拘束具を引きちぎったのを見て僕も拘束具を引きちぎった。

 銀の騎士が跪く。

「アートラス王子殿下。どうか、この無能共に処罰を」

 銀の騎士が僕の名前を呼んだことによって、朱赤騎士団の全員が顔を青ざめた。

「朱赤が青ざめてますよ。滑稽ですね」

「笑い事じゃありませんよ師匠」

「じゃあ、さっさと処罰しちゃってください。殺しますか?それともアレを切り落としますか?」

「よくそんなことを公衆の面前で言えますね」

「まあよくある二択ですよ。死刑か宮刑か。どちらを選んでも地獄ですよ」

「そんなことしませんよ。とりあえず騎士団と名乗るのをやめてほしいですね。ややこしいので」

『『か、畏まりましたぁ!!!!』』

 朱赤騎士団、いや朱赤が一斉に跪いたことによって周囲の視線がこちらに向く。

 あの、そんなに見ないで下さい。

 恥ずかしいです。

「ま、いいでしょう。とりあえず子爵家に案内していただけます?この国の銀の騎士は大体伯爵級の権利がありましたよね?」

「はい、その通りです賢者殿。ご案内しましょう」

 銀の騎士に連れられて伯爵家の馬車へと向かっていく。

 馬車はすぐ近くに止めてありカラットさんが馬車の扉の前で待っていた。

 カラットさんは綺麗にお辞儀をして扉を開けてくれた。

 軽く礼をして馬車の中に入る。

 騒ぎを聞きつけていたのか周りには人だかりができていた。

 銀の騎士が人だかりを遠ざけてやっと馬車が進んだ。

 馬車は街の中心にある屋敷に向かっていく。

 見事な庭園が覗き見られる塀を通り、門の前に着く。

「む、その馬車は。ようこそおいでくださいました」

 門番の騎士が門を開けて馬車を通す。

 庭園は見事なもので夏の花が多く咲き中には聖薬という薬の原料になるものや王毒という毒の原料になる危険な花までたくさんあった。

「見事なものですね。しかしなるほど、ここの子爵にはある“趣味”があるようですね」

「趣味?」

「そのうちわかりますよ」

 それ以来師匠は何もしゃべらず、馬車は屋敷の玄関に到着した。

 玄関から肥った豪華な服を着た男と、その従者が出てくる。

「ほー。これはまた随分な“歓迎”ですね」

「はい?」

「そのうちわかりますよ。ほら、降りてください」

 師匠に急かされて馬車を降りると子爵が膝をついた。

「ようこそおいでくださいました殿下、賢者殿。どうぞこちらへ」

 子爵が重そうな体を持ち上げ僕と師匠、カラットさんを丁寧に案内した。

 屋敷の玄関は広くその中央には熊の魔物の剥製があった。

 玄関に魔物の剥製を置くのが流行っているのかな?

「この魔物は私のコレクションの一つでして、最も出来が良いものです。ご不快でしたら撤去しますが?」

「いいえ、大丈夫です。気遣いありがとうございます」

 流石に面と向かって嫌だと言えるほど豪胆ではない。

 カラットさんは怖がって僕の後ろに隠れてる。

 まあ流石にそうか。

「では狭い屋敷ですが別館にご案内したします」

 再度子爵に着いていき中庭に出て裏手にある少し小さめの館に案内された。

「こちらはお好きにお使いください。ですが地下室にはあまり近寄りませぬよう。使用人達の噂では霊が出るかもしれないとのことなので」

 一礼して子爵は下がっていく。

 館自体は古いがしっかりしておりその古さがいい雰囲気を出していた。

 カラットさんは怖いらしく震えている。

 まあ幽霊屋敷に見えなくもないからしょうがないか。

「成る程成る程。さて、入りましょうか」

 何かに納得したように師匠は頷いてそのまま館に入っていく。

 僕とカラットさんもそれに続き屋敷の中に入る。

「っひ」

 雰囲気が怖いのかカラットさんが僕にしがみついてくる。

 うーん、そこまで怖くない。

「地下室、行ってみます?」

「いや、です」

 カラットさんが小さな声で否定し僕にしがみつく。

「うんうん。私そういうの好きですよ。さて、一応幽霊なんてものは出ない。これだけは言っておきましょう」

「そうなんですか?ゴースト系の魔物の可能性は?」

「こんな海に近いところに出ませんよ。出るのはせいぜい大陸中央の墓地か戦場です。まあとりあえず後で話がありますから弟子は4時間後ここに集合してください。カラットちゃんは好きにしていいですよ」

「四時間後って夜ですけど?」

「だからこそですよ。まずは適当な部屋に入って体を休めましょう。はい、解散!」

 そういって師匠は廊下に消えていった。

「カラットさんはどうしますか?」

「あの、、その、、、」

「?」

「殿下と、、一緒がいいです」

 少し恥じらいを見せながらカラットさんは僕の裾をつかんだ。

 多分怖いからなんだろうな。

 それだったらしょうがないか。

「いいですよ。じゃあ部屋を選びましょうか」

「はい!」

 カラットさんの今日一番のをもらったところで、僕たちは部屋探しを始めた。










 ここにきて気づいたことがある。

 それは私の他にも、囚われている者がいるということ。

 私が閉じ込められている鳥籠は大きな部屋に宙釣りにされていて、その周囲には鎖で繋がれた色んな魔物がいた。

 真っ黒の狼や鎧を着た人型の大きな魔物、毒々しい蛇やドラゴンのような魔物までいる。

 私は気紛れに、この魔物達に念話を使ってみた。

 すると、何故か日本語で、彼らの考えがわかるようになったのだ。

 私は、私たちはお互いを励ましあいながら、しばらくの時間を過ごした。

 今も、その最中だ。

『妖精よ、汝は優しいのだな』

『竜さんこそ優しいんですね。見た目と違って』

『はははっ!御主はわしより強かろう。優しくしとかんと後がわからんからな』

『ヨウゼイ、ヤザジイ』

『鬼さんはかっこいいのね』

『アリガドウ』

『皆さん名前はないんですか?』

『名付け親がいんからのう』

『ナマエ、ナイ』

 この部屋には多くの魔物がいる。

 その魔物達一人一人と話しながら、私は自分を保っていた。

 そうじゃないと、気が狂いそうだったから。

 不意に、念話の中に一つの思考が混じってきた。

 ごく小さな思考だ。

 いや、小さいというよりも遠い。

 ギリギリ聞こえるかどうかの、そんな遠い思考。

『このガキが偉そうに。まあ今日殺すがな』

『子爵は私たちの命を狙ってそうですね。対策を、、うん?成る程理解しました』

『師匠何考えてるんだろう。相変わらず変な人だなぁ』

『殿下殿下殿下殿下殿下、、かっこいいかっこいいかっこいい!あぁ、好き!結婚したい!』

 よくわからないけど、変な一団が近くにいるみたい。

 一人だけどこかの親近感がわいたけど、多分それは気のせい。

 それに最初の物騒な男は、多分私を閉じ込めているあの太った男だ。

 それに二人は子供の声、太った男は貴族なのかな?

 それで二人の子供を殺そうとしている。

 正直言ってその子供がどうなろうがしたこっちゃない。

 私の人間に対する信頼性は、もうとっくにないのだから。

 数時間が経ち、魔物のみんなは寝てしまった。

 私はそこまで眠くないから、魔法が使えないか試しているけど、多分この首輪のせいで使えてない。

 どうにか外せればいいのに私には、妖精族には『物理無効』というものがあって壊せない。

 物理攻撃を受けない代わりに物理攻撃ができなくなるスキル。

 この中の魔物達を一体づつ見ていたけど、多分妖精族にしかないスキルなんだと思う。

『これ添い寝なんじゃないかしら!!!ああ殿下とベットで同衾なんて!!夢みたい!!!』

 うるさい思考が私に流れてきた。

 声は子供だけど本当に子供なの?

 かなり大人っぽいけど。

 一瞬転生者という言葉が頭をよぎったが私のクラスにこんな人はいなかったし少年好きの女子もいなかった。

 はず。

 唯一あまり誰とも喋らず学校の裏アイドルと言われていた渋波雫という女子だけはわからないけどいかにも清楚な感じのあの人がこんな人なわけもない。

 だんだんと少女の思考が収まり、今度は少年と女性の声が聞こえてきた。

『師匠は何で地下室に行こうなんて言い出したのかな?謎だ』

『これを知ったらびっくりするでしょうねこの弟子は。まあ少し厄介な事になりそうですけど』

『この人、人の事考えないし人の話聞かないし自己中心的だから何するかわからないんだよな』

『うん?誰かに馬鹿にされた気が。中年勇者ですかね?』

 なんなのこの人たち?

『お、扉発見。やはりここでしたか』

『よく扉見つけたなこの人。規格外生物だから考えても仕方ないか』

 ガシャンという音がして少しの風が吹き抜ける。

 まさか地下室ってここの事なの?

「&”$’#%&#$&#%%%$”%$”$”%$#%+`*?」

「%”&’”%#’**`**`’#&’#’#’&’#」

 人な話し声が聞こえる。

 なんて言っているのかは分からない。

 でも少なくとも、あの肥った男よりはましであるという事がわかった。

 声で魔物達が目を覚ます。

『何事じゃ?』

『人です。悪い人じゃなさそうですけど』

『一応身構えておいたほうがいいかもしれんの。この状態じゃ何もできんが』

 竜さんと念話してドアを見つめる。

 ドアノブが捻られ、少年が入ってきた。

 一応、鑑定をする。



 人族Lv37

 名前・アートラス・レルザロンド

 HP3780/3780

 SP328/3770

 MP1026/4785(+60)

 速度3740

 物理攻撃力3770

 魔法攻撃力4765(+250)

 物理耐性3740

 魔法耐性4637

 スキル・火魔法Lv5水魔法Lv5風魔法Lv4土魔法Lv4光魔法Lv2治癒魔法Lv3思考加速Lv5高速演算Lv7鑑定Lv4魔法攻撃力増加(中)Lv5MP量増大(小)Lv6

 称号《転生者》転生者のみに見える称号。成長に補正と促進がある。

 《魔導師》五つの魔法を習得せし者が得る称号

 《神官》治癒魔法を習得せし者が得る称号


 強い。

 多分、私だけじゃ勝てないだろう。

 でも、それよりも、何よりも、優先すべきものが目の前にある。

「「転生者?」」

 私たち二人の声が、重なった。

「%#’”%’”%#?」

 よくわからないものを聞くような女の声が、その場に響いた。










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