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転生したら蝶でした。  作者: おとのそうくつ
25/43

蝶の山脈調査隊2

 バルティッシュ要塞の司令室は、様々な情報が行き渡り、戦場のあらゆる事が決定されていた。

「中央の被害は!北の情報がないぞ!」

「第五中隊壊滅!南も押され気味です!」

「本国からの増援は!あと6時間後との事!」

「遅すぎる!第一と第二は!」

「都にいる冒険者たちに緊急要請を出せ!」

「第二はあと5分!第一は後30分との事!」

「中央と南に回せ!北は!」

「北は今の所前進中!小規模の接敵のみだそうです!」

「第九大隊のゲイル少佐が死亡!瓦解しつつあるとの事です!」

「早急に立て直せ!」

「第二が到着しました!即時応戦で北は進みつつあると!」

「よし!次に来る第一の半分もそちらだ!残り半分を中央に!持ちこたえて両面包囲の形にしろ!」

 北が立て直し南は優勢、中央もどうにかという所で全員が一旦落ち着いた。

「どうにかなるか」

「北は援軍によりAランクを三体撃破!中央もAランクを二体撃破したそうです!」

「吉報だな。どうにか切り抜けられそうだ」

「一時はどうなるかと」

「気を緩めるなよ。まだ後一体残っている」

「「「「「っは!」」」」」

 その時に、少しでも気が緩みすぎたのだろう。

 戦場を見渡せる窓に、何かが近づいてくる事に気づくものは、誰もいなかった。

 轟音と衝撃、司令部の建物は瓦解し将校たちはミンチと化した。

 バルガは痛めた足を引きずりながら状況を確認する。

 司令室を破壊したものは、ボムボアという低レベルの魔物だった。

 司令室は要塞のかなり上階にある。

 そしてボムボアに飛行能力はない。

「何者かに、、投げられた?」

 一人窓だった場所に血を流しながら歩いていく。

 そこで彼が見たものは、信じがたい光景だった。

 映るのは優に5mは越えようという巨人。

 Sランク魔物、ストーンドビックマン。

 その種族は別名でこう言われる、投石巨人と。

 大きな声で咆哮したそれは、魔物人構わず掴み取りひたすら投げる。

 高速で連射される肉の塊は新たな肉を作り投石巨人の武器を増やしていく。

「閣下!ご無事ですか!?」

 崩壊した入り口から声が聞こえる。

 偶々外に出ていた将校なのだろう。

「それよりも北の兵の半数を中央に寄せろ!あれを何としても食い止めろ!」

「了解!」

 バルガは現役時代に酷使した筋力を総動員し瓦礫の山を退けて司令室であった場所から脱出する。

 そして、要塞内から城壁へと移動して自ら部隊の指揮を始めた。

 しかし圧倒的暴力の前には成す術(なすすべ)なく敗北し、第一から第九までいた大隊は既に半分を切った。

 一つ幸運だったのはストーンドビックマンが魔物すら攻撃手段として使っていたことだ。

 そうでなければ今頃数で押し負け最悪の結果になったのは必須であっただろう。

 中央にいた魔物は既に引き返すように森の中に逃げていき残るはストーンドビックマンのみ。

 しかし圧倒的脅威の前に震える兵士たちに、バルガは喝を入れる。

「お前たちはなぜここにいる!なぜここにきた!家族を!祖国を守るためだろう!ならば戦え!無論私もその為にここにいる!戦え!祖国の為に!家族の為に!」

 バルガは近くにあった剣をとってそれを掲げると、自ら城壁の下に飛び降りた。

 バルガが司令室の中で唯一の生き残りの理由。

 それは、圧倒的物理ステータスの高さである。

 元Aランク冒険者にして武闘派将校、それがバルガである。

 剣を握りしめバルガは走る。

 全盛期より鈍ったといってもステータスは未だに高い。

 その信頼か、はたまた家族の為か国の為か兵士たちも突撃を開始する。

 総勢5000の突貫。

 その姿は圧巻だ。

 投石巨人は再度咆哮し下にある肉の塊を掴もうとした。

 しかし、柔らかすぎた。

 幾度の攻撃により肉はミンチと化し、投げるものはない。

 バルガの剣が巨人の足に届く。

 ほんの10センチほど断ち切った剣は、其の儘耐久限界に達し敢え無くへし折れた。

「くっ!剣を!」

 近くの兵士が剣をバルガに投げる。

 それをタイミングよく掴んだバルガは先ほどの10センチの切り込みに剣を突き刺した。

 先ほどよりも深く入った傷で巨人はバランスを崩し膝をついた。

 しかし仕返しとばかり空中にいたバルガを巨人は殴り飛ばした。

 バルガは其の儘地面と衝突し一瞬気を失いかけた。

 自身の舌をかみバルガは意識を強制的に覚醒させる。

 近くの兵士から剣を受け取りそれを杖として立ち上がろうとするがバルガの足に力が入らなかった。

 巨人は向かってくる兵士を握りつぶしバルガに向けて振りかぶった。

 誰もが終わりを覚悟したその時、火の砲弾が巨人を焼いた。

 叫び声をあげながら肉を放り投げ悶え苦しむ巨人。

「助太刀するよ。バルガ准将」

そこにいたのは純銀色の鎧を着た一人の青年だった。

彼こそが本国の最強、第一騎士隊長だった。

「第一騎士隊長殿、もっと早く来てほしかったものですな、、Sランク冒険者殿も呼び寄せていただけるとは、感謝する」

「いや、先に南を片付けていたんだよ。結果、貴方の思い描いた通りの両面包囲だ」

騎士の後ろから背丈二倍もある強弓を持った男と杖を持った老婆が歩んでくる。

「将軍様はそこで休んでなぁ。こっからは俺たちがやる。行くぞぉ!!」

 火の弾丸が、名剣の斬撃が、高速の矢が巨人を傷つける。

 そして、強者三人の参戦により、ストーンドビックマンは、地に伏した。

 歓喜に溢れる戦場。

 嫌い合っていたもの同士が抱き合い、泣きあい、家族が祖国が守られた喜びを噛み締めた。

 しかしその場にいた強者4名は、焦りと危機感を抱いていた。










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