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転生したら蝶でした。  作者: おとのそうくつ
23/43

新山隆介5

 帰国する。

 そう言われた時は嬉しくてつい叫んでしまった。

 僕は今、大陸間を移動する船の上に乗っている。

 なぜかというと師匠の家、と言うか拠点がある大陸とレルザロンド王国がある大陸は全く別の場所にあるからだ。

「いや〜、海っていいですねー。強そうな魔物がうじゃうじゃいます」

 その師匠、アーニャさんは船のふちで足を突き出て周辺の魔物を探していた。

 強そうな魔物って言ったってどうせ師匠なら瞬殺だろう。

「五年ぶりの帰国はどうです?懐かしい事とかありますか?」

「あの、逆に聞きますけど何かあると?強いて言えば目が覚めたら王城から連れ出されていたって云うのが一番強烈な思い出です」

「5年も言われ続けると流石に賢者でも疲れますよ?」

「だって目が覚めたらいきなり足を掴まれて空中に浮いてたんですよ?びっくりしないほうがおかしいでしょう」

「あなたの母親絶叫してましたもんね」

「え?リメル母様が?」

 正直イメージない。

「はい。『この変態っ!うちの息子をもっと丁寧に扱え!』って叫んでましたね」

 この人、帰国早々母様に殺されるんじゃ?

 まあこの人の場合殺しても死ななそうだけど。

「ま、過去の話はいいとして、帰国の要件ですが、あれですね、社交界の顔合わせみたいなやつです。貴族様は大変ですね」

 社交界の顔合わせ。

 将来を担う同じ世代の貴族の子息令嬢が一夜に集うパーティー。

「はぁ。嫌だなぁ」

「まあ、腹黒狸共の相手をするって事ですからね。いらっと来たら魔法でぶっ飛ばせば万事解決です」

「解決してませんよそれ」

 この人、偶に本当にアホになる。

 まるでヤンチャしている女子高生みたいに。

 いや、この人といて5年経ってるけど未だに成長がない。

「うん?今どこかで私が馬鹿にされたような?帰ったら中年にでも奢らせますか」

 危ない危ない。

 勇者さんとはまだあった事ないけど聞く限りかなり優しい人の様だ。

 この人のストレスとかの捌け口はいつも勇者さんになる。

 理由は簡単に壊れないから、だそうだ。

 思わずあくびしてしまい今更自分が眠いという事に気がつく。

「はいはい、眠そうですが未だあと3時間残ってますよ。頑張ってくださいね」

「はい、、、、」

 今まで普通に会話してたけど僕は今修行中だ。

 題して、爪先立ちで水魔法・発水を長時間耐久!正直足が限界です。

 足つりそう。

 魔法より足が辛い。

「集中が乱れてきましたよ。もっと水の量を多くしてください」

 僕はここ5年で非常に強くなれた。


 人族Lv37

 名前・アートラス・レルザロンド

 HP3780/3780

 SP328/3770

 MP1026/4785(+60)

 速度3740

 物理攻撃力3770

 魔法攻撃力4765(+250)

 物理耐性3740

 魔法耐性4637

 スキル・火魔法Lv5水魔法Lv5風魔法Lv4土魔法Lv4光魔法Lv2治癒魔法Lv3思考加速Lv5高速演算Lv7鑑定Lv4魔法攻撃力増加(中)Lv5MP量増大(小)Lv6

 称号《転生者》転生者のみに見える称号。成長に補正と促進がある。

 《魔導師》五つの魔法を習得せし者が得る称号

 《神官》治癒魔法を習得せし者が得る称号


 ほら、昔とは大違いだ。

 でもまだまだだと僕は思う。

 何故ならこんなに強くなっても、師匠には全く届いていないからだ。

「はい、そろそろ着くのでやめでいいですよ」

「はぁ〜、やっと終わった」

「おいにいちゃん!大丈夫か!」

「はは、大丈夫で〜す!」

 床に座り込んでしまったからか一緒に乗ってる旅人の人に声をかけられてしまった。

「全く、まだまだ修行が足りませんね。ほら、見えてきましたよ。港町です」

 師匠が指差した先には、王国の港町・ヨマカコーハが見えてきた。

 ヨマカコーハ、よまかこーは、よこはまーか、横浜か?

 いや、深く考えないようにしよう。

 きっと偶然に違いない。

 船の速度がゆっくりになり碇が下される。

 そして船のから降りようとすると数台の馬車が目の前に止まった。

「あらら、ばれてますね。ヨマカコーハの領主の馬車ですよ」

「誰にも教えずに来たのに?」

「おそらく船の中に影がいたんでしょうね。貴方のその瞳は珍しいですから」

 そう言って師匠は僕の目を見た。

 僕の目は灰色の虹彩を持っていてこの世界でも珍しく持っている人物は限られる。

「密告のようなことをして申し訳ありません。殿下」

 船の船長と思しき人物が僕に頭をさげる。

 この人がヨマカコーハの領主の影だったのか。

「謝罪を受け取ります。案内していただけますか?」

「では、ご両名こちらへ」

 船から降りると地面の有り難みがわかる。

「やっぱり地上っていいですね」

「同意します」

 船長に案内されて馬車の中に乗り込む。

 先程声をかけてくれた冒険者は何故か青ざめていた。

 なんでだろう?

 馬車が揺れて街の中心にある大きな建物に向かっていく。

「あちらが領主館になります」

 少し早い馬車が市街を突き進んでいく。

 通ろうとする人は歩みを止め馬車に轢かれないように道を開けていく。

 船長、飛ばしすぎだと思います。

 早いなぁと思いつつ裏路地を見ていると、そこで、男たちに襲われている少女を見つけた。

「すみません!止まって下さい!」

 思わず叫ぶと馬車が急停止して少しばかり土煙が立つ。

 馬車から降りて急いでさっきの裏路地まで向かう。

 ステータスのおかげかあっという間につき、裏路地に入っていく。

「あぁ?おいガキ。さっさと消えろ」

「いやぁ!助けて!」

「うるせぇな。縛っておけ。ガキは殺す」

 一番体格のいい男が僕に向かって剣を振り上げながら突進してくる。

 土魔法・土弾を男の腹部にめり込ませる。

 あまりの衝撃に気絶した男をみて、他の男たちも襲ってくる。

 土魔法・土壁を使い男たちの間に壁を作る。

 壁の上に飛び乗り上から土弾で男たちを気絶させていく。

 縛られた少女に向かって歩いていく。

「もう大丈夫だよ。怪我してるね」

 治癒魔法・回復を使い擦り傷を直していく。

 路地裏に入ってくる人が一人。

 足音がする。

 それと鎧の音も。

 土壁を解除してその鎧を見る。

「っむ、この者たちは、、君が助けてくれたのか?礼を言う」

「いえいえ、これで失礼します」

 裏路地から出て行き馬車に戻る。

 そしたら、師匠が呆れた顔でため息をついた。

「お人よしですね」

「人は助けるべきです」

「全く甘い男の子ですね。英雄系の絵本とか読んで育ったわけでもないのにどうしてまた人助けがこんなに好きなのか、、不思議です」

「僕は人を助けようとしないあなたが理解できません」

「人に興味がないので」

 そこが理解できない。

 人が死ぬことは、人として忌むべきものだ。

 それを、この人は理解しようとすらしていない。

「ま、それはそうとして着きましたよ」

 領主館の門が開き馬車が中に入っていく。

 美しい庭園を通り過ぎ、玄関前に馬車が止まる。

「お先にどうぞ」

「分かりました」

 開いたドアから降りると、この街の領主ヨマカコーハ伯爵とその一家が出迎えてくれた。

 壮年の伯爵は僕が馬車から降りるなり膝をついて対応した。

 堅苦しい。

「アートラス王子殿下、長旅でお疲れでしょう。どうぞお寛ぎください」

「伯爵ご好意感謝します」

「外ではなんです、中へどうぞ」

 伯爵が立ち上がり中へ案内される。

 豪華絢爛な広間が広がり、その奥には二手に分かれた階段、中央には何かの魔物の剥製があった。

 魔物の全長は10m程中央の柱に巻きつくように飾られている。

「Aランクのウォータークリスブルですね。なかなか穴から出てこないのによくこんなに傷が少ない状態で狩れましたね」

「これは英雄級冒険者殿に狩っていただいた物でしてね。我が家自慢の宝ですよ。まあ、小さい娘は見るたびに泣きだしてしまいますが」

「それは大変ですね」

「では、こちらへ」

 剥製の横を通り過ぎ階段の裏にある扉の中へ入っていく。

 そこは大きな食堂のような物で机にはすでに人数分の食事が置かれていた。

「そう、マールはどこに行った?」

「騎士隊長を連れて市外に出ていたはずですが、、やけに遅いですね」

マールというのが先ほどのウォータークリスブルを見るたび泣いてしまう女の子なのだろう。

どこに行ったのかと伯爵家の人たちが考えていると、鎧を着た騎士が扉を開けて入っていた。

「し、失礼します!伯爵様にご報告が、、」

「今は殿下がいらしているのだぞ?それを知っての行動か?」

「も、もちろんです。実は、、、、」

騎士が伯爵の耳元に口を近づけ何かをしゃべった。

「、、、何!?殿下、賢者殿、一時失礼する。クリスタ、お二人にご一緒し先に会食を始めておきなさい」

「わかりましたお父様」

そう言って、伯爵は出て行った。

何が起きたんだろう?

















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