新山隆介2
うっすらと意識が覚醒し始め、天井にある光を発する魔道具が視界に入る。
ここは?
「あ、王太子妃殿下!」
「目が覚めたのね」
リメル母様が僕に抱きついてくる。
鑑定の儀の途中から記憶が無い。
何が起きたんだろう?
「貴方、鑑定の儀から二日も目を覚まさなかったのよ?」
「殿下。私は王太子殿下、とアレン殿下をお呼びいたします」
「ええ、頼むわ」
「一体、何が?」
「覚えていないの?」
「ええ、鑑定の儀の後から記憶がありません」
「当たり前でしょ。貴方は儀の途中で意識を失いここに運び込まれたのよ。そのまま二日間意識が不明で今やっと目が覚めたんだから」
「え?」
「なんで意識を失ったかは原因不明。敵対勢力による魔法か謎の病気か、あるいは呪いか。まあただの体調不良っていう線もあるけどね」
「呪い?」
「正確には呪魔法という魔法の一種だわ。特有の魔物しか持たず非常に強力かつ凶悪な魔法。まあ、ここら辺はそこの変態に聞いた方がいいかもしれないわね」
「へ、変態?」
「変態なんて酷いですよ。貴方も地形と戦いにしか興味が無いかわいそうな女でしょう」
「貴方と違ってちゃんと結婚してますので」
「毎回どうして私に敬語もしくは暴言なのか気になりますがそこは置いておいてそこの少年よ」
いつの間にか母様の背後にいた赤髪の女性が話しかけてくる。
「誰ですか?」
「誰と聞かれれば答えるしかないでしょう!そう!私こそが17代目賢者にして全ての魔物と魔法を探求せし者!アーッ!?」
「いちいち長いです」
母様がいつの間にか赤髪の女性の脇腹に蹴りを入れ部屋の隅に吹き飛ばした。
つ、強い。
そして早い。
「痛いですよこの馬鹿力乙女、失礼女騎士。腕吹っ飛ばしますよ?」
「そんなことで私が死ぬと思いますか?」
「思いません。まあ、それは置いておいて17代目賢者のアーニャ・ベルトスと言います。要件としては鑑定結果からみた貴方の第18代賢者としての育成、および貴方の警護といったところですね」
「け、賢者?」
さっきからわからないことだらけだ。
「そこからですか?まあいいでしょう。魔族の王様であり人類に厄災をもたらす魔王がいます。それを倒す勇者がいます。貴方のお兄さんの師匠ですね。そしてそれを支える、あるいは共闘する賢者・聖女がいます。その片方が私なんですよ。まあ勇者よりも強いですけど。それで貴方の類稀なる魔法の才能を聞き私が貴方を次の賢者にすべくわざわざやってきたと言うことですよ」
「まず賢者の弟子とかどうでもいいから休みなさい。体調が優先よ」
「母親になって丸くなりました?」
「とりあえず黙れクソ女」
は、話についていけない。
母様とノリで生きてそうな自称賢者が言い合っている所に金髪の男性二人が入ってきた。
片方は父上、片方はアレン兄さんだった。
「起きたと聞いてやってきたがまあ大丈夫なようだな」
「鑑定の儀で倒れたって聞いたからびっくりしたよ。ちなみに僕は今日ここについた所」
「おや?勇者の弟子くんじゃないですか。魔法耐性上げに来たんですか?」
「勘弁してくださいアーニャさん。まだ死にたくないです」
「人の息子を脅すのは止めて頂きたい賢者殿。それで、先日の返答はいかに?」
「そうですね。正直辞めようかなと思っていたんですけど見た感じなかなかの素材なのでまあ物は試しでやってみようかな?と」
「そうか。さてアートラス。お前はどうする?」
「え?」
「賢者の弟子となるか否か。この場で決めろ」
「殿下。この場で決めるのは難しいのでは?」
「何も言うなリメル。これは本人の問題であるし先延ばしにしても時間がなくなるだけだ」
「分かりました。私からは何も言いません」
賢者の弟子となるかどうか。
僕が決めなきゃいけない
メリットは多い。
ならば、この話は受けるべきだろう。
それでもまだ懸念が残る。
だったら、、
「で、どうしますか?」
「なります」
「そうですか。それは良かったです。でもその顔は、何かありますね?」
「はい。とりあえず、まず一ヶ月だけ貴方の弟子になります」
「一ヶ月後にそのあと恒久的に弟子になるか決めるということですね?すぐに決めない分慎重でいいと思いますよ」
「そうか。賢者殿、何かご要望は?」
「そうですね。正直そのままの弟子であったら拠点に連れて行きたいんですがちゃんとした弟子以外に見られていいものは置いてありませんのでとりあえず応急魔道書庫の全閲覧許可証と魔法師団の訓練場の貸し出し、それと彼自身の貸し出しですね。あとMP回復薬を大量にお願いします」
「了解した。陛下に伝えておく」
「では、また明日」
そう言い残して赤毛の賢者、アーニャさんは消えていった。
「あの女は空間魔法まで使いこなすか。恐ろしいな」
「まあ龍にも匹敵する女ですから」
「アートラス」
「なんですか兄さん」
「ごめん」
「え?」
そう言って兄さんは部屋を出て行った。
兄さんはどうして謝ったんだろう?
そう思っていると父上も無言で退出していった
「アートラス。貴方はしばらく休みなさい」
「分かりました」
「メリアーヌも心配してたのよ?妹を安心させなさい」
「はい」
「よろしい。メイリーネ。後は任せたわ」
「承知いたしました」
そう言って母様は部屋を出て行った。
「アートラス様。何かお飲みになられますか?」
「うん。水でいいよ」
「承知いたしました」
メイリーネさんが棚に入っているコップに水を入れて渡してくれる。
乾いた喉潤い、なんとも言い難い快感が身体をめぐる。
「もう一杯」
「はい」
持っていたコップにメイリーネさんが水を注いでくれる。
それも飲み干し、僕は眠りについた。
次も遅れる気がします。
と言うか遅れます。




