捏造の王国 その32 “ニホン国はバカ文明滅亡論実証国”説 ニホンはマイティフールトップのせいで滅びるのか?
自然災害に増税に肺炎ウィルス感染拡大という不幸に見舞われているニホン国。春をまつガース長官にさらなる悲報が。”アホなトップのおかげで滅亡しつつあるのだニホン国は、バカ文明滅亡論の実証国家だ”なる珍説がネットで出回り、思わず信じてしまうものもいるという…
早咲きの桜も咲きほこり、桃の節句も間近にせまる二月末。しかし、ここニホン国では、いまだ厳冬の厳しさが天候だけではなく景気ほかに続いていた。
「ああ、新型肺炎ウィルスもなかなか終息しないうえ、賃金下がり、消費も悪化し、何も春らしいことがないではないか。いつニホン国に春、春はくるのか」
思わず、春を呼ぶ歌を口ずさみそうになるニホン国のトップ補佐、官邸のガース長官。しかしニホン国では春の歌はたいてい桜とセット、桜を愛でる会の追及でもう桜は見たくもないといった手前、桜というワードは口にしたくない。
「ううう、あのピンクの花びらの例のお茶も、その、飲みにくいし。この季節あの例の花にちなんだ限定茶が発売されるというのに手に取るのはちょっと」
素直に“桜”という言葉を発することができないガース長官。
ため息をつきつつ、桜の花びら模様の湯飲みを撫でまわすガース長官。彼のもとに珍しく静かに直属の部下であるシモシモダ副長官がよくない知らせをもってきた。
「ガース長官、ちょっとよろしいですか。その、これは、未確認の情報なんですが」
「なんだね、また何か問題でも。大事になる前に手を打った方がいいようなことかね」
「それが、なんとも。なにしろネットの2.5チャンネルとかいう掲示板でのトンデモ論ですから。ただ“アベノ総理が阿保だからニホンは滅ぶんだ。エピデンスはこの通り…”との主張に現在のニホン国の、その実質賃金低下、ウィルス対策の大不手際、消費の落ち込みなどが証拠としてあげられておりまして、信じる者も…」
「く、くうう」
否定したいが反論する材料が見当たらず、苦悶するガース長官だった。
「その、シモシモダ副長官。2.5チャンネルというのは信頼のおけるようなところなのかね」
「いや、その、なにしろ匿名のネット掲示板ですし、いい加減なデマを流布するツールになっていることが少なくないですが、これは、その」
「ニホン国ダダ下がりの現状が我がジコウ党トップのせい、ということだな。まあデマにしても看過できないが」
「いや、その、まるっきりデマと否定しきれないのではないかと。証拠として挙げられているものの原因は直接間接も含め、我が政権の政策が元であることは確かですし。しかも共産ニッポンの議員なみに細かい話を正確にとりあげ、レイワンのヤマダノ党首のごとくわかりやすい言葉で書いてあるので、掲示板に張り付くような連中にも大うけで」
「くそ、どこの政党の連中だ。ミンミンとか共産ニッポンでもない。メイジやレイワンに感化された奴等か。あいつらはニホン政党政治のルールなんてお構いなしだからな。何をやりだすかわからん。やはりつぶすか」
「いや、その、主張しているのは自称文化人類学者でして。博士号まで取ったものの、ニホンでは就職先がなく、世界あちこちで各文明の滅亡について実地調査したとか。文明と言っても、最近の独裁国家もありまして。その衰退のあり様も現地に入って調べたという現場主義の強者のようです」
「そ、そんなノンポリらしいのが、なんで我がジコウ党のアベノ総理を批判するようなことをー」
「いや、その、彼…だと思いますが、性別不明なので、彼としておきましょう。彼がいうには“ほとんどの文明、国家は建国のときは賢人の集団がトップについて運営し、国民も彼らを監視し、軌道修正できるほど賢かった。しかし、徐々に子孫たちの教育がおろそかになり、トップの親たちは子の可愛さのあまり、子供、特に息子に能力の有無にかかわらず高い地位につけようと制度を彼らに有利なように変えていった。そのため知能が低く国の運営などとてもできない息子たちが増えすぎ、能力に見合わないのに横暴にふるまったのが文明崩壊の要因ではないか。さらにそれを支えていた賢い部下たちは仕事が忙しすぎて子孫もろくに残せない、または教育を受けさせられなかったため、権力者を支える側に頭が切れるが激減した。一代の独裁者に限っていえば高齢になり次第に能力が衰え、時代の変化についていけなくなったことを認められずその地位に固執し続けことである”と」
「う、うーん。そ、それは…」
確かにまるで今のニホン国。ガース長官は思わず腕を組んで考え込む。
戦後すぐはアメリカの占領から逃れるため、どう民主主義独立国家としてふるまうか知恵を絞って画策した。なんとか独立を果たし、国民を無理においたて無茶な経済成長を果たして、先進国のふりをし続けたのだ。しかし、その偽りの繁栄に胡坐をかき、のちの世代を賢くするという点はどうもおろそかになっていたのは事実だ。もっとも子供に自分より賢くなってほしくない、というニホン国特有の変なプライドに固執したオヤジどもが少なくなかったことも原因だが。とにもかくにも先進国でダントツに次世代に金も手間もかけなかったのは事実である。
その結果として、政治家を始め官僚の子弟は能力に見合わぬ地位につき、下層階級で知能が高くても適切な教育が受けられず、能力が発揮できない。さらにちょっと鍛えればもう少し賢くなるのにーという人々は、軍隊式の何も考えない阿保になるような義務教育のおかげで、自分の首をしめるお任せ民主主義に甘んじている。いずれもジコウ政権、経済界の安定のためーというか、自分らのおバカ子弟でもなんとか支配階級で居続けさせるための策である。
しかし、昨今、いささかやりすぎの感はある。現場で働く国民の大半が搾取されすぎて貧困に陥っている。彼らは子孫を残せず、野垂れ死という将来に絶望しきってモラルも破綻寸前。長年裏方でニホン男性を支えてきた女性は支えが重すぎて息も絶え絶え。少子高齢化はヤバいといいながら、カギを握る女性支援はなおざりにするか、オッサンの独りよがりなものばかりで実行力はゼロ。さらに場当たり的な政策、時代遅れの経済対策、はては昭和のオッサンのロマンといわれる原発・リニア・国際大運動大会開催だの無駄に国費を投入する。そして今回の景気を零下に陥れる消費税増税に、砂糖菓子より甘い新型肺炎ウィルス対策。
何しろ外国のクルーズ船の対応は寄港地のニホンにお任せ!といって引き受けたものの度重なる不備で世界中から非難ごうごう。かえって感染拡大を広めたと追及されている。対応にあったった厚労省職員が穴だらけの防護のおかげで感染してしまったのだ。船内の様子を詳しく述べた感染症専門家の医者にかみついたハシモトト厚労省副大臣に至っては、あろうことか船内のいい加減な感染、非感染の区分け写真をツィッターにあげ、厚労省の対策がザルでまったく対策にもなっていないことを内外に知らしめた。さすがに党内からもクレームがつき、そのツィッターは削除された。しかし、職員発症、さらに総理のバンキシャやら、総理気に入りのテレビ局の職員感染の疑い濃厚やらで、官邸閣僚、国の中枢が危険にさらされている。そんなお間抜けな事態が全国いや全地球に知られてしまい、全世界で一番対策がアホな国と世界から呆れられているのだ。
これでは、ニホン国のトップおよび閣僚、官僚たちはバカと言われても仕方あるまい。しかも、御用マスメディアがいかに必死に隠そうともSNSそのほかでアベノ総理らの呆れかえる答弁が連日世界に拡散されるのだ。
そのうえ、国際大運動大会後、ニホンは悲惨なことにーという言説があちこちでとびかっている。自然災害、パンデミック、景気の落ち込み、アベノ総理災害などでニホン国は駄目になるという。
「い、今の状況を考えれば確かにニホンは滅亡に向かいつつあると判断するものもいるのは、おかしくない。そ、それが政治家ではなく、学者、しかも文明、国家滅亡を研究する学者であっても。いや学者だからこそ気が付いたのか」
「いや、その、自称“あらゆる文明・国家の滅亡を研究対象とする”とのことですから。今まさに滅びんとする国家があれば、確かに実証研究としてはもってこいでしょう。しかもGDP世界2位を一度は獲得した国ですから、ニホンは、一つの文明国といえるのではないでしょうか」
「そのニホンが自国のトップのせいで滅びようとしているというのに、何をそんな説をのんきにだしてるんだ、その自称学者とやらは。だいたい、ニホン人なんだろう、そいつ。愛国心というのはないのか!」
と喚き散らすガース長官。
「いや、その、“ニホン人だからこそ、ニホンはこのおバカをのさばらせる性質が変えられないのはよくわかる。せめて私ができるのは国外に出たニホン人の子孫が将来、新生ニホンを作るために負の記録を残すことぐらいだ”と言ってまして、この人」
「や、奴のなかではニホンの滅亡は確定かー!」
「いや、その、そうですね。“バカトップがいますぐやめて野党の賢い党首たちが協議の上ニホン国を運営すれば、なんとか滅亡はしないけれど、完全に立て直すのは無理だねー。女性陣は疲弊しすぎてるし、相当女性の地位上げないと無理、もちろん若者の支援も充実させて、制度も全部変えないと。でも原発にロマン感じるような昭和のオッサンやそのお仲間たちは嫌がるからね”などと書き込んでますし」
「く、くう」
そんなことは…心当たりがありすぎるほどあるガース長官。散りゆく桜が描かれた湯飲み茶わんを眺めながらつぶやくようにいう。
「や、やはりバカなトップは強力な敵より最悪なのは本当なのか」
桜は何も答えず、その薄いピンク色はかすかに寂しげな色をしていた。
どこぞの国では政府のトンデモな対応でウィルスの感染が拡大し、担当省庁のトップらまで感染の可能性ありという事態になっているようですが、最高権力者様は会食にご熱心で対策会議には今一つ身がはいらないようですね。そのうち、その国もマスメディアの演出だけはうまかったアホトップらのせいでダメになったなどと言われてしまうのでしょうか。