#9 蘇生条件
「だがその前提条件は魔王討伐完了だ」
「え? 何故ですか?」
クラスメイトを生き返らせる事と、魔王討伐がイコールで結び付かない。
「魂ってのは本来神の管轄でな、人間が人間を生き返らせようなんて思ったら、神に頼まなきゃならない」
「はあ」
「で、神に頼みをきいて貰える一番の方法が、自分の世界を荒らす魔王を討伐する事なんだ」
なるほど、神様も只でお願いをきいてくれる訳じゃないんだな。しかしその代償が魔王討伐とはスケールがデカいな。魔王討伐と同等ぐらい人の命は尊いと考えておこう。
「ちなみに俺の時は魔王ひとりで生き返ったのは片親ひとりだけだった」
「ひとりなんですか!?」
それじゃいったい何人の魔王を討伐すればいいんだ。そもそもそんなに魔王っているものなのか?
「安心しろ、今回は特例になるだろうからな」
「特例、ですか?」
「本来死んだ人間を生き返らせる場合、ほんの少し時間を遡らせる必要がある。でなけりゃ生き返らせてもまたすぐ死んでしまうからな」
確かにそうだ。外傷や病気にしろ、寿命にしろ、死んだ瞬間に戻らせられても、またすぐ死ぬだけだ。何なら火葬とかされて肉体が存在していない事もあり得る。だがオレ達の肉体は違う。無傷で地球にあるはずだ。
「肉体を健全な状態にする必要がないから、その分多くの人間を生き返らせられるって事ですね」
「そう言うことだ。もっというなら、生き返らせることさえ必要ない」
? いや、さすがにそれはどうなんだ? アルスルさんの言にオレは首を傾げずにはいられなかった。
「イトスケ、お前は神に会った時にこう頼めばいいんだよ。「召喚された四十人全員を元の世界の肉体に戻してください」とな」
そうか! そうやって頼めば、死んだクラスメイトが生き返るだけじゃなく、オレ達生き残ったクラスメイトも地球に戻れるのか!
おお、なんか出来そうな気がしてきた! 何を? 魔王討伐を…………無理だ。
「えっと〜……」
「分かってる。イトスケ達が元の世界に戻れるよう俺達も助力する」
「ありがとうございます!」
これほど心強い助っ人はいない。何せチートな勇者に魔王専門の暗殺者だからな。
「それにしても……」
とアルスルさんがオレに向かって愛銃のリボルバーを構える。
ダァンダァンッ!
「襲ってくる魔物の数が多いな」
どうやらオレの後ろの茂みにモンスターがいたらしい。
でもいきなり銃をこっちに向けるのはやめて欲しい。心臓止まるかと思った。
「ホントですね」
ヴィヴィアンさんもそう言いながら聖剣で三体のモンスターをバッサリいっていた。
しかしそんなにモンスターとの遭遇率が高いのだろうか? 日に数体のモンスターと遭遇するのだが、こっちに来てからずっとそんな感じだったから分からない。
「俺達はイトスケと会うまで魔物と一匹も遭遇しなかった。と言えば分かるな」
なるほど、異常だ。
「明らかにイトスケに狙いを定めて襲ってきているな」
マジか!? オレ魔王に対して何かしたかな? いや、これからするんだけど。それともオレが臭いとか。だったらアルスルさん達が指摘してくれてるよな。
「これは……ヴィヴィ、イトスケに聖剣を持たせてみてくれ」
「え? でも……! そう言う事ね」
ヴィヴィアンさんは何か得心がいったらしく、自身の聖剣をオレに差し出す。
アルスルさんを見れば頷いている。
なのでオレはヴィヴィアンさんの聖剣に恐る恐る触れた。とその瞬間、聖剣は光となって消えてしまった。
「違ったか」
「みたいですね」
「いや、二人だけ納得されても、オレにも分かるように説明してください」
「アルスルさんはイトスケが勇者じゃないかと考えたのよ。だから私の聖剣を触らせたの。私の聖剣は勇者にしか扱えないから」
「でも違ったと?」
「ああ、だがイトスケが勇者じゃなかっただけだ。
おそらく魔王自身かその側近に〈予知〉や〈予言〉が出来る奴がいる。その〈予知〉か〈予言〉によってお前達四十人の中に勇者がいると出たのだろう。だから魔王は躍起になってお前達四十人を始末しにきているんだ。こうなってくると、残り二十人の方も安全とは言えないな」
なんて事だ。皆無事だといいのだが。