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#8 供物召喚

「イトスケは言霊というのを聞いたことあるか?」

「はい。オレの国にもある言葉です」


 アルスルさんの言葉に素直に答える。


「そうか。謂われの通り言葉には魂が宿る。だから知的生命体みたいな脳機能が複雑な存在を召喚するとき、その魂がこちらの世界と齟齬を起こさないように、脳の召喚、特に言語系にはとても神経を使うんだ」

「それをしなかったらどうなるんですか?」

「魂と世界が解離し、ただ本能のまま動く魔物になる」


 それはかなりきつい。


「だからこうやって俺とイトスケが普通に会話出来ているということは、脳のアジャストに成功しているということだ。ヒルト王国もそこには金を掛けたんだろう。召喚した勇者が本能のまま暴れまわる魔物じゃ格好がつかないからな」


 確かにそうかも。とここでヴィヴィアンさんが話に割り込んでくる。


「でも召喚にも色々あって、世の中には言語系を無視して召喚する者もいるのよ」

「え? 何のために?」

「大きく分けて二つ。一つ目のパターンとして召喚するものが知的生命体として弱い場合。犬や猫なんかの動物は向こうの世界の事を覚えていてもしょうがないでしょ?」


 なるほど。逆に飼い主の記憶とか持っていたら召喚してもなつかないかも。わざわざペットを召喚する意味は分からないが、そういった好事家でもいるのだろうか? それとも初歩的な実験だろうか?


「二つ目は高位の存在を魔物として使役するパターン。言語系が疎かになっていれば、相手が本能的だからこそ、餌付けに成功しさえすれば、強力な戦力として使える。もう誰がそんなことしているか分かるでしょ?」

「…………魔王……ですか?」

「そう。そうやってこの世界の魔王は強力な戦力をどんどん増やしていってるの」


 なんてこったい。普通に軍隊を作り上げるよりもそっちの方が効率やコスパがいいのはオレでも分かる。

 魔王がどれぐらいの数を一日に召喚出来るのか知らないが、日一日と魔王軍が増殖していってるのなら、のんびり事を構えている訳にはいかない。各国が躍起になる訳だ。


「そういえば大きく分けてって言ってましたけど、他にも召喚の仕方があるんですか?」

「そうねえ、もう少し細分化するって感じよ」

「細分化、ですか?」

「その二つの召喚どちらにも、実態召喚と、供物召喚の二つがあるの」

「実態召喚と供物召喚?」

「実態召喚というのは、その名の通り実物そのものを召喚する方法。アルスルさんがその召喚例ね」


 まあ神様が召喚したそうだしな。


「もう一つの供物召喚っていうのは、こちら側で召喚する存在の器を用意し、魂だけを召喚して器に憑依させる方法」

「俺の勘だがイトスケ達は後者、供物召喚だろう。人間を一度に四十人なんて召喚、出来る訳ないからな」


 そうなのか? 全く身体に違和感がないのだが。あ、でも〈インベントリ〉なんてスキル使えなかったんだから、そう言われるとそうなのかもしれない。


「でも魂だけ召喚されたってことはオレ達の肉体は元の世界に存在したままなんですよね?」

「おそらくは集団昏睡事件かなんかで処理されてるんじゃないか」


 そうかあっちで肉体はまだ生きてるのか。


「でも皆の魂はもう死んで天国だか地獄だかに行ってるんですよね」

「いや、まだこの世界に留まっているはずだ」

「え?」

「その世界にもよるが、大体魂ってのは一年ぐらいは現世に留まっているもんなんだよ」

「それじゃ、クラスメイトの魂を元の肉体に戻すことが出来れば……」

「そうだな。確かに生き返らせることは可能かもしれない」


 希望が見えてきたかもしれない。

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