#7 異界出生
キャンプ中でのこと。
「アルスルさんとヴィヴィアンさんはどこから来られたんですか?」
オレの何気ない質問だった。どこかの国の勇者と暗殺者なのだろうか?
「俺達もイトスケと同じ異世界から来た人間さ」
「えっ? そうなんですか?」
この世界の住人でさえなかった。
「と言っても私達を喚んだのはこの世界の人間じゃなく、この世界の神、ルノア様だけどね」
神による召喚。本物はやはり違う。
「嘘を吐くな」
とアルスルさん。嘘だったのか。
「ルノアに喚ばれたのは俺一人で、お前は〈異界潜り〉を使って勝手についてきただけだろ」
「ええ〜、ホントは独りじゃ寂しいくせに」
「寂しくない」
相変わらずヴィヴィアンさんに厳しいアルスルさんだ。
「あの、〈異界潜り〉って何ですか?」
「ヴィヴィが神から貰った加護の一つで、異世界から異世界へ渡る能力の事だ」
それはまた壮大な能力だな。…………ん?
「加護の一つ? ですか?」
「私二十個の加護持ってるから」
「に、二十個!?」
「〈異界潜り〉に〈聖剣造成〉に〈身体能力増大〉に〈魔力補正〉に〈アイテムボックス〉に〈百科事典〉…………」
「ち、ち、ちょっと待ってください!」
あまり一辺に言われても自分のキャパを超えている。
「とりあえず、凄い事だけ分かりました。…………ちなみに〈聖剣造成〉ってオレを助けてくれた時の剣ですか?」
「そうよ」
言ってヴィヴィアンさんは一振りの聖剣を光の中から生み出す。まさにそれはどんな宝石よりも美しい光輝く剣だった。
「私は〈聖剣造成〉の力で一振りの聖剣を造る事が出来るの」
「えっ? 一振り?」
確かオレが助けられた時は二振りの剣を持っていたはずだ。首を傾げるオレに、
「それはコイツの〈増殖〉の加護によるものだ」
アルスルさんが答えてくれる。
「〈増殖〉?」
「ヴィヴィは〈聖剣造成〉で造った聖剣を〈増殖〉を使って増やす事が出来るんだよ。その数最大一万本」
「い、いちまん!?」
勇者にしてもチートが過ぎるだろ。
「何か、オレ達いなくても魔王倒せそうですね」
「そうだな」
「そうね」
正直な人達だなぁ。
「アルスルさんはどういった加護なんですか?」
「…………」
これは触れちゃいけなかったかな?
「〈魔王殺し〉だ」
「おお! 何か強そうですね!」
「アルスルさんの加護は対魔王に関しては右に出る者がいないからね。指でチョンと触っただけで魔王なら即死よ」
それは凄い能力だ。
「他には?」
「それだけだ」
「えっ?」
「俺の加護は〈魔王殺し〉だけだ」
「それは…………」
随分なハードモードである。〈魔王殺し〉なんて名前が付いてるぐらいだから魔王以外には効果がないのだろう。
だが魔王なんて基本ラスボスで魔王城に引きこもり、四天王なんかに守られているイメージだ。自分から敵を招いたり、自分から敵のところに出向く魔王はいないだろう。
ということはアルスルさんが魔王を倒す為には、加護無しで敵がひしめく魔王城に特攻を仕掛けないといけないのだ。そりゃスキルが千個とか必要になってくるよ。
「俺のことはいい。イトスケはそんな事を訊きたかった訳じゃないだろ?」
そうだった。
「オレ達、何で会話が成立してるんですかね?」