#4 自己紹介
「アルスル・レイロードだ」
金髪の美青年がそう言った。
「ヴィヴィアン・レイ……」
「違うだろ」
鋭いツッコミだ。
赤毛の美少女の方は渋々居住まいを正すと、
「ヴィヴィアン・ニムエよ。ヴィヴィって呼んでくれていいわ。もう、アルスルさんたら、近々そうなるんだし……」
「ならねえよ」
鋭いツッコミだ。
だがヴィヴィアンさんの方はツッコミ入れられて「ぐへへへ」と笑っている。これがドMってやつか。
「オレは伊藤 助と言います。皆からはイトスケって呼ばれてました」
「イトスケ……ね。それでイトスケくん、俺達に頼みたいのは、この森から出るための護衛でいいのかな」
オレが頼む前に正鵠を射られてしまった。
「そ、その通りです。そんなに顔に出てましたか?」
「まあな。というか状況的に見てそうだろ? 二十人で行動し、内十九人が死亡したんだ。残った一人が死んだ十九人を足したより強い可能性の方が低い」
「確かに、そうですね。命を助けてくださった恩人に、重ね重ね無礼だとは思いますが、出来ればオレの護衛をやってはいただけないでしょうか? ヒルト王国の東の国にクラスメイトが居るはずなんです。出来ればそこまでお願いします。お金はヒルト王国から軍資金としてもらったものがあります」
自分で言っていて、自分の厚かましさに情けなくなってくる。命あっての物種と、涙を堪えて、恥を忍んで頭を下げる。
この二人は強い。クラスメイト十九人が束になっても敵わなかった悪魔をたった二人で倒してしまったのだから。この二人に断られたらオレは死ぬ。
「はあ、まあいいだろう。出来ればさっさと済ませたかったが、急ぐ旅という訳でもないからな」
「そうね」
おお、やった。オレは心の中でガッツポーズをした。
「すみません、旅の途中で厄介事を背負いこませてしまって。…………あの、それでどこに行くおつもりだっんですか?」
もしも目的地と反対側に行くようなことになったら更に申し訳ないな。
「ああ、魔王城までちょっとな」
「私達魔王退治に行くところだったの」
…………いや、そんなちょっとコンビニまで。みたいなノリで魔王退治って言われても。
「あの、それじゃお二人とも勇者なんですか?」
オレの質問は二人のツボにハマったのか大笑いされてしまった。
「何で魔王を倒すイコール勇者になるんだ?」
言われてみれば確かにそうだ。自分達が勇者だなんだと持ち上げられたから、いや、単にファンタジーに毒されていただけだ。魔王を倒すのが勇者や英雄じゃなくたって構わないのだ。
自分じゃ見れないがオレは恥ずかしさで顔を真っ赤にしていたと思う。
「まあ、私は勇者だから、半分正解かな」
「そうなんですか!? じゃあアルスルさんも……」
「俺は違う」
鋭いツッコミだ。
「え? じゃあ一体?」
「はあ、俺は魔王専門の殺し屋だ」