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#34 全会一致

 凄く面倒臭い。

 スローリーな世界で、罠だらけの通路を進む。

 下からは槍が飛び出し、横からは弓矢、上からギロチンが落ちてくる中、〈ディレイ〉のお蔭でどれも紙一重でかわす事は出来るのだが、ゆっくりとしか進めないというのはストレスが凄い。

 オレを先頭に進んで行くが、先に行く程に罠が増えていく。

 落とし穴の底には鋭利な刃が上を向いており、火攻め水攻めに天井が落ちてきたり、まるで罠の見本市だ。

 更に途中には分岐路まであるのだから、〈ディレイ〉のお蔭でスローリーな進行が、更にスローリーにならざるを得ず、一行のストレス値は限界をとうの昔に越えていた。

 誰も暴れ出さないのは〈ディレイ〉のお蔭かせいなのか、なんとか罠ゾーンを抜けた時には、暴れるのを通り越して全員ぐったりしていた。

 オレも限界まで〈ディレイ〉を使ったので、魔力はもう無い。


 パチパチパチパチ


 拍手が聴こえてくる。オレ達の誰かがしたものではない。

 オレ達が出た先はガランとした議場のような場所で、椅子とテーブルが放射状に並び、奥の中央にその焦点が集まっている。

 そこでひとりの男が拍手をしながらオレ達を見ていた。


「素晴らしい! 私が作り上げた罠の数々を全て()()()ここまでやってくるとは、さすが四魔将を三人も倒してきただけある」


 黒髪をオールバックでキチッとまとめ、左目に片眼鏡(モノクル)付けた、年の頃なら三十代といった所だろうか? 燕尾服のような正装に身を包んだ男。


「エンヴィーさん」

「ええ、あいつがロイゼル・ミュシェンよ」


 横のエンヴィーさんに確認すれば、ロイゼル・ミュシェンから目を反らす事なく答えてくれる。


「おや? そこに見えるのはブラッディーエンヴィーではありませんか。おかしいですね? あなたはガルゼイネス様の命により、勇者討伐の任を与えられていたはず。にもかかわらず、逆に勇者どもをここまで招き入れるとは、どういった了見ですかな?」

「ふ、私は目を覚ましたのよ。真実の愛に触れることで」


 言ってオレに抱きつくエンヴィーさん。ここで否定すると余計ややこしくなりそうだからしないが、そうするとエンヴィーさんとの間に真実の愛があるという事になってしまうのだろうか? あと何気にヴィヴィアンさんが強く頷いているが、昔アルスルさんと何かあったの?


「はあ、いけませんねえ、それは重大な背任行為だ。王に、国家に仕える者としてやってはいけない行為だ。諸君! ブラッディーエンヴィーの背任行為に対して、私は死罪を要請する! 反対意見のある者は挙手を!」


 いきなり何を言い出すのか? と周りをよく見れば、椅子にはロイゼル・ミュシェンと同じような服をきたミイラ達が座っていた。


「どうやら反対意見は無いようだ。全会一致でブラッディーエンヴィーを死罪とする!」


 狂っていやがる。ミイラしか居ない議場で議会ごっことは、ピエロにしても笑えない。


「さて、続いて勇者諸君に対してだが、不法入国にピストの村やこの城下町での罪の無い国民への虐殺行為、その他諸々の罪により当然、 死罪だ!」


 シンと静まり返った議場に、ロイゼル・ミュシェンの声だけが響く。


「反対意見も無いようなので、全会一致で死罪! それではこれより刑を執行する!」

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