#22 業火消沈
デカい!!
高さで言えば確実に東京タワーは超えている。
そんな巨大物体がズシンッズシンッと地響きを立てながら、森の木々を薙ぎ倒し縦断してこちらへやってくるのだ。顔がひきつっても仕方がない。何ならおしっこ漏らしそうだ。
自分の口の軽さを呪いながら、オレは顔を叩き気合いを入れ直す。
と、目が合った。ミサイルボルカと。
グバアアアアア…………と大口を開けるミサイルボルカ。その口の中、胃の腑はまさにマグマのように燃え滾っていた。
ボオオオオオオオオ!!!
そこから吐き出される息は火炎さえ生易しい業火だった。
眼前の全てを燃やし尽くすような業火の波がオレを襲う。
ズシンッズシンッとまた前進を始めるミサイルボルカ。だが、
ズズンッ!
ミサイルボルカの片足が空を切り、体勢を崩す。オレが事前に〈インベントリ〉で掘っておいた落とし穴に落ちたのだ。
「よかった、引っ掛かってくれて」
辺り一面焼け野原の中心で、オレのいる場所だけは青い草が生えている。オレは〈インベントリ〉の吸排口を一枚の布のようにすると、体に纏わせ業火を吸収したのだ。
自重のせいで落とし穴から抜け出せないミサイルボルカがこちらを睨んでくる。
ドンッ! ドンッ!
今度は噴火口から噴石を飛ばし、オレを押し潰しにくるミサイルボルカ。
が、オレはその悉くを〈インベントリ〉に吸収していく。
オレの〈インベントリ〉は最長でもパーソナルスペースとほぼ同じ、体から約60センチ程しか離して出す事は出来ないが、その大きさは今では直径50メートルを超える大きさまで拡げる事が可能になっている。
ミサイルボルカが出す土砂噴石なんてオレには欠片一つ当たらない。
オレは〈インベントリ〉を盾の傘にして、全速力でミサイルボルカに迫っていく。
そんなオレに土砂噴石の雨あられに業火の波がオレを襲い、その悉くをオレは〈インベントリ〉に吸収していく。
「これでチェックだ」
オレは左手でミサイルボルカに触ると、反対の右手でポルックスに触る。瞬間、オレとミサイルボルカはカストールのいる場所へテレポート。その場所とは、ミサイルボルカの噴火口より遥か上空、おそらくポルックスとカストールでテレポート出来る限界高度だ。
そこにオレとミサイルボルカは頭を下にしてテレポートしていた。
オレは思ったのだ。カメならひっくり返せば起きられないのではないかと。まさかこんな上空に飛ばされるとは思わなかったが。だって大陸の端が見えるし。
そのまま自由落下していくオレとミサイルボルカ。違いがあるとすれば、オレにはポルックスとカストールが付いているという事だ。
二体が一斉にオレを脇から支えてくれる。それにしがみつくオレ。ミサイルボルカだけが四肢をバタバタさせながら大地に叩きつけられた。
ゆっくりと降りていくと、ミサイルボルカはまるでクレーターのような円形の跡を残しながら、その中心でまだしぶとく仰向けになってバタバタしている。がそれもオレの想定内だ。
「これでチェックメイト!」
オレはもがくミサイルボルカの首めがけ、さっきまで吸収してきたミサイルボルカの土砂噴石業火を吐き出す。
自身の攻撃をその身に浴びて、ミサイルボルカはその命を散らした。
ふよふよとポルックスとカストールに抱えられながら戻ってくるオレを、アルスルさんとヴィヴィアンさんは笑顔で、他の皆は呆然とした顔で迎えてくれました。




