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#21 火山襲来

 明くる朝。その日オレは地響きで起こされた。

 ズシンッズシンッという地響きのせいでベッドから落とされ、床とキスした寝起きは最悪だ。

 原因は何事か、と窓から顔を出すと、山が動いていた。

 遠くの森から小山がポッカリ顔を出し、こちらへ向かってくる。山頂から煙が立ち上っているから火山なのだろう。

 動く火山を注視していると、その下に顔があるのが分かった。カミツキガメのような顔。


(カメ? という事はあの火山は甲羅なのか?)


 火山の甲羅を背負ったカメが、ズシンッズシンッとこちらへ向かってくる。

 大き過ぎて距離感が分からないが、多分砦や佐々木の龍なんかよりもっと大きいだろう。

 オレがその威容に呆気に取られていると、火山ガメは前肢を低くして火山の噴火口をこちらへ向けてくる。


(え? 嘘だろ?)


 ドンッ!


 体が震える程の轟音と共に火山が噴火し、大量の土砂噴石がこちらへ飛んでくる。

 慌てて窓の下に隠れると、


 ドザザザザザザザッッ!!!


 土砂噴石はオレから見て右手、砦の外壁をかすり、外壁をバラバラに壊して見せた。


(うわーマジかー。魔王様本気出し過ぎじゃね?)


 などと悠長に思ってはいられない、とオレはポルックスとカストールを連れて広間へ急ぐ。早いとこ対処しないと皆土砂の下敷きだ。


 広間に着いたのはオレが最後だった。

 既に広間ではあの巨大ガメをどうするか議論が交わされていた。

 バレないように扉をそうっと開けるが、議論に加わらず暇していたヴィヴィアンさんに気付かれてしまった。


「おはよう、よく眠れたみたいね」

「…………おはようございます」


 ヴィヴィアンさんとアルスルさん以外からは総スカンだ。皆白い目でこっちを見ている。大越からは「おそよう」とまで言われてしまった。

 オレはスススッと議論の輪の外側に加わると、ソニアさんにどういう状況なのか訊く。


「敵は魔王直下の四魔将、ミサイルボルカのようです」


 ふむ、四天王的なやつですね。


「その力は強大で、ひとりで一国を滅ぼすとも言われている程の傑物です」


 そりゃあんなのに襲われたら、国一つ滅んでもおかしくない。あいつが通った跡は確実に人っ子ひとり居ないだろう。


「で、どうするんですか?」


 オレの質問にソニアさんは首を横に振る。騎士隊長が「まさか四魔将が出てくるなんて」と(おのの)いているから、まあ、何も対策が決まっていないのだろう。

 こうしている間にもミサイルボルカは、ドンッ! ドンッ! と火口から土砂噴石を撒き散らしている。ノーコンなのが救いだが、何時ここを直撃するか分からない。


「イトスケ、何か策はあるか?」

「え? オレが倒しちゃっていいんですか?」


 上座に座るアルスルさんに突然振られ、ついポロッと本音が出てしまった。

 オレの発言に対して、アルスルさんは「ほう」と目を細め、ヴィヴィアンさんは興味なし。他の皆は何言ってんだこいつ? て顔だ。

 ま、そりゃそうなるわな。


「策があるならお前に任せよう」

「ちょっと待ってください!」


 声を張り上げる佐々木。


「なんだ? 代案があるのか?」

「いや、それは……、無いですけど。でもイトスケがひとりで倒せるとは思えません!」

「それはイトスケの身を案じての事か? それとも手柄を独り占めされたくないからか?」


 アルスルさんの詰問に押し黙る佐々木。いや、それだとオレの身は心配じゃないって事になるんだが。…………ま、いいか。


「じゃ、行ってきます」

「な? 本当にひとりで行くのか!?」


 と騎士隊長。


「? そうですけど。付いてきます?」


 ありゃ、騎士隊長も黙っちゃた。こういう時って本性出るよな。人間命あっての物種。

 オレは今回のカメに関してはスケール感が違い過ぎて、多分頭の中でピンときてないんだと思う。

 だから今は平気でも近付いたら怖じ気づくかもしれない。


「失敗しても怒らないでくださいね」

「いいからとっとと行ってこい」


 アルスルさんに追い出されるようにして、オレはミサイルボルカ討伐に向かった。

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