#2 出逢遭遇
す、スゴい。クラスメイト達が手も足も出なかった悪魔達を、たった二発の銃弾で倒してしまうなんて。
「立てるか?」
銃を懐のホルダーに仕舞った青年銃士によって差し出された手。美しい顔と所作に相手が男ながらドキッとしながらも、オレはその手を握り返す。
黒革のジャケットを着たその青年銃士、一見すると女性と見紛う中性的な顔立ちで、金髪碧眼ということもあり、美青年と言うのに誰からも文句のつけようがなかった。
そしてその青年銃士に引き起こされるオレ。いつの間にか、腰抜かして座り込んでいたらしい。
「怪我は……ないな」
自ら立たせたオレを、ジロリと一瞥しただけでそう判断する青年銃士。まあ実際戦わずに逃げ惑っていただけだからな。
「あ、あの、ありがとうございました」
「気にするな。たまたま通り掛かっただけだ」
こんな真夜中にどんな用事があって森の中を一人で通るというのか知らないが、そのお陰で悪魔に追われていたオレは助けられたのだから、変に詮索はしないでおこう。
そんなことに頭を巡らせていたのも束の間だった。
青年銃士越しに、また見えてしまったのだ。悪魔が、しかも五体。宙に浮いて何かを探している。
「あ……、あ……、あ……」
言葉にはならず、オレは指を差すのが精一杯だった。
オレの仕草に青年銃士が振り返る。
「ああ」
だがそれだけだった。懐から銃を出そうともしないで、手は腰に当てている。
「あ、あの……」
「大丈夫だからそこでじっとしてろ」
青年銃士に言われて、オレは不安になりながらもその場に直立不動になる。
と悪魔達はオレ達の存在に気づいたらしく、一斉にこちらへ向かって襲い掛かってきた。
(もうダメだ!)
と思った時だった。
「はあああああああああ!!!」
と女性、少女の猛々しい声がこちらに近づいてくる。
声に気づいた悪魔達が、その声の方向を向いた瞬間だった。
ザザザザザシュッ!
一閃の元に切断される悪魔達。
やったのは先ほどの気合いの声を発していた少女、いや美少女だった。
「もう、ひどいですよアルスルさん。何で私を置いてきぼりにして行っちゃうんですか」
赤毛に紫の瞳をした美少女。ただその格好は白銀の鎧に包まれ、両手に剣を握っている。
「別に問題ないだろ」
「まぁ確かに。こうやってまた逢えた訳ですし、やっぱり私達、運命に選ばれた恋人同士……、ぐへへへ……」
確かに美少女なのだが、なんだろう言動が残念だ。
「しかし少年一人に対して雑魚とはいえ五体も差し向けてくるとはな」
少女の言動はスルーする方向なんだ。
「あの、それなんですけど……」
オレは二人をクラスメイトが殺された神殿跡地に案内した。
「ひどい……」
少女からそんな声が漏れる。
確かにひどかった。皆四肢はバラバラにされ、もうどれが誰だか分からない。ここまでひどいと涙は出なかった。
オレは〈インベントリ〉からスコップを取り出すと、近くの地面に穴を掘り始めた。クラスメイト達を埋めるためだ。さすがにこのままにしておくことはできない。そう思えたからだ。
穴を掘り始めると青年と少女が手伝ってくれた。
そして生徒手帳と遺品になるものを残してみんな埋めた。
空はもう明るくなっていた。