#19 武器披露
「テレポート…」
「そのようだな」
アルスルさんもヴィヴィアンさんも得心いった顔をしている。
オレはと言えばまだ信じられず、カストールに触ったりポルックスに触ったりして、テレポートで行ったり来たりしてみる。
(面白い…!)
オレが段々面白くなってきて行き来のスピードを速めていくと、ヴィヴィアンさんが「面白そうね! 私にもやらせて!」とポルックスを触ろうとするが、スカッとその手が空を切る。
「え?」
「あれ?」
「ほう?」
ヴィヴィアンさんが何度も触ろうとするがポルックスに触る事は出来ず、まるで立体ホログラムのようだ。がオレが触るとテレポートが出来る。
不満気な顔になるヴィヴィアンさんをよそに、アルスルさんもポルックスに触れようとするが触れられない。更にカストールにも触れようとするが触れられない。
「どうやらイトスケにしか触れられないようだな」
「どうでしょう? オレも触ったと思ったらテレポートで跳ばされちゃいますから」
「ああ」と呟き一考するアルスルさん。
「二体と同時に触ったらどうなるんだ?」
「同時、ですか?」
オレはポルックスとカストールを自分の下へ呼び寄せ、言われた通り二体同時に触れてみる。と今度は実態を持って触れる事が出来た。
なるほど、テレポートの出口と入口両方を塞げば、触れるのか。
そこにアルスルさんが手を伸ばしてくる。触れた。がテレポートも起こらない。
「ふむ、なるほどな。イトスケ今度はオレに触れてテレポートしてみてくれ」
アルスルさんに言われ、オレはポルックスとカストールを手から解放すると、アルスルさんの肩に手を置き、もう一度ポルックスに触れてみる。
と今度はアルスルさんごとカストールの場所までテレポート出来た。
「おお!」
「なるほどな」
「私もやる!」
とヴィヴィアンさん。ヴィヴィアンさんがアルスルさんと腕を組む。今度は三人でテレポート。出来なかった。
アルスルさんと腕を組んでいたヴィヴィアンさんだけがテレポートせず、テレポート出来たのはオレとオレが肩に手を置いたアルスルさんだけだ。
「ふむ」とアルスルさんがヴィヴィアンさんにオレに触れるように指示する。その指示に従いヴィヴィアンさんがオレの肩に手を置き、また三人でテレポート。見事にポルックスからカストールに移動出来た。
「面白いわ〜」
「そうだな。これだけテレポートをして、イトスケ的には魔力の減り具合はどうなんだ?」
「え? どう、と言われても、全然減った感じはしないですけど」
「おおお! 無限テレポートね!」
そう言われるとこの能力、面白いだけでなくスゴいモノのような気がしてきた。
「ただしテレポートの条件は第一に二体のマスターであるイトスケ。第二にイトスケに触れている者だな」
そのようだ。どれくらいの人数テレポート出来るのか分からないが、オレの体表面積にも限界があるからな。頑張っても二十人はいかないだろう。
「それとこれは憶測だが、一体一体だと触れられないし攻撃も効かなそうだが、二体同時に攻撃されるとやられる可能性があるな」
ああ、二体同時だと触れたからな。全体攻撃なんかで一辺に攻撃食らわないように注意しないと。
「これで〈詠唱魔法〉の訓練に入れるな」
そう言えばその為の精霊召喚だった。でも戦闘系ではなさそうだ。というかどうやって〈詠唱魔法〉って覚えるんだろう?
そう考えていると、ポルックスとカストールの表面に、『大丈夫です』『お任せを』と映し出される。どうやら大丈夫なようだ。
「それとイトスケ」
「はい」
とアルスルさんは懐の〈アイテムボックス〉から円柱の棒を出して、オレに投げて寄越す。紫のガラスか宝石で出来たような、オレの身長ぐらいある棒。重さは同じ大きさの鉄パイプぐらいだろうか?
「これは?」
「イトスケ、これといった武器無かったろ。それを使え」
「はあ」
そう言われてちょっと振ってみたりするが、何故、棒? 剣でも槍でもなく、棒?
「なんだ不服か?」
う、顔に出ていただろうか。
「いや何故、棒なんだろう、と思っただけで不服な訳では…」
「何故も何も、イトスケ、剣も槍も銃も、武器系のスキル持ってないだろ」
そうでした! 恥ずかしい、自分で顔が赤くなってるのが分かる。
「分かりました。有り難く使わせて頂きます」
「ああ」
「……でこの棒、丈夫なんですか?」
紫のガラスと言うか宝石で出来たような棒は、敵に当たったら砕けてしまいそうで怖い。
「丈夫だ。ミスリル銀で造ったからな」




