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魔王殺しの弟子  作者: 西順


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18/40

#18 浮遊茶筒

 円柱? 円筒? そう円筒だ。メタリックな茶筒ほどの円筒がオレの目の前をふよふよ浮いている。


「なんでしょうこれ?」

「ちょっと待ってね」


 二人とも首を傾げたが、ヴィヴィアンさんが直ぐ様〈百科事典〉で調べてくれる。便利な加護だ。


「あった。精霊のページから、その子の名前は「手長足長」と言うそうよ」

「テナガアシナガ……ですか? 手も足も無いんですけど?」


 だって見た目茶筒だし。


「私に言われても、事典にはそう書かれているのよ」

「どういう能力を持っているんだ?」


 アルスルさんが問い掛ける。確かに能力は大事だ。この場を乗りきれる戦闘系だとありがたい。


「空間移動ですって」

「……確かに空間を移動してるな」


 アルスルさん、宙にふよふよ浮いているのを空間移動とは言わないと思います。


「しかし〈インベントリ〉に〈ディレイ〉、そして手長足長の空間移動…か。イトスケの属性は時空系のようだな」


 時空系! なんだかカッコいいぞ!


「それは、良いんですか?」


 いや、そこは首を傾げる所ではないのでは?


「空間と時間に作用するということは、戦闘において主導権(イニシアティブ)を取れる確率が高い」

「良いじゃないですか」

「ただし時空系の使い手ってのは、得てして他の属性が覚えられない事が多い。つまり自分の才能を時空系に全部注いでるって事だ。まあヴィヴィのような例外もいるが、イトスケがその例外に当て嵌まるとは…」


 はい。当て嵌まりませんね。だってオレ才能無いもん。


「分かりました。で、この子達どうすればいいんですか? これで契約完了って事でいいんですか?」

「いや、名前を付けて契約完了だ」


 名前か。さっきの〈圧縮砲(スプレッシャー)〉で分かったが、オレには名付けの才能も無さそうだ。だがこの世界には言霊があるという。おいそれと精霊に変な名前は付けられない。

 だが悲しい事に思い付くのは「てっしー、あっしー」に「アイン、ツヴァイ」である。センス無さすぎだ。

 オレの気なぞ知ってか知らずか、この二つの茶筒はさっきからまるで双子星のようにオレの周りをふよふよ飛んでいる。双子星…、双子…、


「ポルックスとカストール」


「ほう」とアルスルさんもヴィヴィアンさんも悪くない、といった顔をしている。


「どうしてその名前にしたんだ?」

「いや、単にオレの世界の星座、双子座から取っただけなんですけどね。その双子座の由来になった双子が、ポルックスとカストールなんです」

「なるほどな。まあイトスケの精霊だ。好きに付けるといい」

「はい! よし、お前達はこれからポルックスとカストールだ!」


 名付けが完了すると、返事の代わりにメタリックな表面にデジタルな文字で『了解』と出る。その後にそれぞれの頭文字である『P』と『C』が表面に刻印された。

 なんだこれ? 本当に精霊なのか?

 不思議だ、と思い好奇心から人差し指を伸ばしてポルックスに触れた瞬間だった。目の前に居るのが『C』の刻印がされたカストールに代わっている。

 不思議に思ってアルスルさんとヴィヴィアンさんを振り返ると、二人とも驚いた顔をしていた。


「今、何が起こったんですか?」


 オレが疑問を投げ掛けると、「もう一度体験した方が早い」と言われた。ただし今度はポルックスとカストール、二体を広間の端と端に待機させられて。

 オレがもう一度ポルックスに触れると、やはり目の前にはカストールが居る。


(おかしい)


 カストールは広間の反対側に居たはずだ。と辺りを見回せば、オレの居る位置の方がおかしかった。ポルックスが反対側でふよふよ浮いている。そしてポルックスもカストールも位置を替えていない。これはつまり、


「テレポート…」

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