第十三話:心
雅人は少し安心した顔をして俺に話し掛けてきた。
「坊ちゃん大丈夫ですか!?余り無茶をしないで下さい!それと旦那様の命令でこの部屋で監禁だそうですので……。お食事は僕がお持ちします。学校は入院とさせて頂いてます。えっと?中道さんから聞きました。僕のクビ……。旦那様に伺いましたところ、認めていないということです。」
雅人はいつものように笑っていた。
「そうか…。わかった。雅人、お前はもう休まないでいいのか?もう…無理をするな。中道さん色々すいませんでした。そして中道さんと雅人にもうひとつ、内密にやって欲しい事があるんだが引き受けてくれるか?」
もう一人の場所じゃなくなる。
心の中の雅人達のオアシスが涸れたままなのに何かを失うような気がした。
そして、そこに一滴の水が上から落ちてきた。
砂漠にのまれ、すぐに消えてしまった。
一つの声が耳に届いた。
雅人の声……。
「何をしたらいいですか?」
やっぱり雅人は頭の回転がはやいな。
「俺の部屋から…右の廊下を真っ直ぐ進むと壁に隠し扉がある。その中には組み立ての梯子と鍵がある。それを使って天上のドアを開けて梯子を回収して、その中にあるハーモニカをとってきてくれないか?誰にも見られず、元どおりにして戻ってきてくれ。」
俺は目を閉じ少し休んだ。
そして中道さんは思った。
息遣いが荒いな……
頭で理解しているが体がついて行ってないみたいだ。
「行くぞ!雅人」
僕は少し不安だった。
坊ちゃんが誰にも教えてない場所があるなんて…
「あっ…はい!」
急いで中道さんを追い掛ける。
ゆっくり歩いているので聞いてみた。
「急がなくていいんですか?」
中道さんは目を輝かして言った。
「急いだら怪しまれるだろ!凄く楽しみじゃないか?あいつが隠していたものが見れるんだぜ。今は弱気というか悩んでいるというか…まぁ、あいつらしくないよな。けどプライドが高くて無口であまり本心を見せないやつだから……凄く嬉しいんだ。」
廊下をゆっくり進んでいくと曲がり角がある。
そこの壁をくまなく探すと横1センチで縦5センチくらい、へっこんでいる取っ手みたいのを見つけた。
そこをあけると鍵と梯子がでてきた。
それを出したあと隠し扉を閉じた。
誰もいない事を確かめ、梯子を立て天上にあるドアを鍵を使って開けた。
最初に上がった中道さんが驚き声をあげた。
「なんだよ!これ!」
そのまま中に入っていった。
僕も中道さんに続いて入った。
梯子を回収してドアを閉じて回りを見渡すと、窓がついた屋根裏部屋だった。
「す…すごい………!」
僕はその一言しか言い表せなかった。
とっても豊かで一人くらいなら暮らせるぐらいの場所だった。