第十一話:親父
後、屋根から降りるための隠し梯子をつくるだけだった。
だがそれは困難だった。
俺がいない事で皆が探している。
そして誰かの声が高く響き渡った。
親父だ…………。
俺は床に耳をあてた。
「悠一は、ここらへんに隠れているはずだ…!外では目立ちすぎ噂になっているからありえない…!雅人を人質にとれ!必ず出て来る。」
まずい事になった…!
抜け道さえ作る時間も与えてくれなかった。
折りたたみナイフをポケットに入れると窓に近寄る。
窓から無理矢理でて下の窓から侵入し雅人の所へ向かった。
バンッ!!
俺が急いで雅人の部屋を開けるとドアが開く音がなり響いた。
そこには寝ている雅人と中道さんがいた。
中道さんはいきなり立ち上がり言った。
「お前何処行っていたんだ!皆お前を心配したんだぞ。」
心配という言葉初めて聞いた。
「その事は後です……。奴が雅人を狙っている。」
少しの沈黙があり、やっと口を開いた。
「どういう事か話してくれるな?悠一」
足音が聞こえる…。
中道さんの声はもう届かなかった。
「来る…………。」
独り言を発しドアの方を睨みつける。
足音はドアの前で止まりドアノブが動くのがわかった。
俺は親父の入ってくるのを待った。
そしてドアが開く………。
どんどん親父の姿が見えていくとあたりに異様な空気が流れた。
その後、気付くと親父はもう中に入っていてドアは閉まっていた。
一番最初に口を開いたのは親父だった。
「ほぅ……。先ほどの話しどうやって聞いたかは知らぬが駆け付けて来たみたいだな。」
気持ちをおさえながら言い返す事が精一杯だった。
「雅人を人質にして、おびき出そうという最低なお考えを述べられた時には、あなたを刺し殺そうとかと思いましたけどね……。俺はこの家を出ます。それが許されないならあなたを殺してでも出ていきます。」
ポケットからナイフを取り出し親父の方にむけた。
親父は何も恐れずにあざけわらうように言った。
「すえ恐ろしいガキだな…。捕まえて牢屋にぶち込んでおけ!ただし殺すな」
後ろから出てきたのは家のSP達三人だった。