日常編Ⅰ
「寒い!」
氷雨は鼻水を垂らしながら叫ぶ。
「だから、言ったじゃない!こんなとこ充実してないって!」
アレクシアも文句を言う。
「お前のせいだろうがぁ!」
氷雨はアレクシアの頭を軽く叩く。
「そういえばなんで俺ら部屋ぶっ壊れてんのに寝れてるんだ?」
「痛いじゃない!知らないわよ!」
二人は朝から夫婦のような喧嘩をしていた。
「お前らが喧嘩しなきゃよかったんだろうが!」
氷雨とアレクシアが風邪をひき始めてるのには理由があった。それは、部屋が外と同じ空間になっているからだ。壁だった場所に代理で氷の壁でも作ればよかったものをなぜか作っていなかったのだ。
「ふ、普通、氷雨が風呂上がった時に気づくでしょ!」
「な、なんか気づかなかったんだよ!」
二人とも責任転嫁のみしているので話が進まない。だが、この会話から分かるのは2人の仲がいいということだ。
「あぁ!もういい!〈霜氷柱〉」
氷雨が氷の壁を作って話しは収まった。
「まあ、いいわ。それより私は聞きたいことがあるんだけど」
「なんだよ」
ピリピリした空気の中、アレクシアは質問をする。
「氷雨、あなた昨日本気出していなかったわよね」
「あぁ。だから?」
氷雨は制服に着替えながら話を続ける。
「だったら、氷雨は三流剣士なわけないじゃない!」
「俺は、本気を出さないんだよ」
「なんでよ!」
「本気を出したら、またあいつが来ると思うと怖いんだ」
氷雨は頭の中でそのあいつという人を考えたら鳥肌が立っていた。
「あいつって誰よ」
「まだ、本当のことは言えない。だが、俺から言えるのは俺だけど俺じゃない奴のことだって事を、覚えといてくれ」
「分かったわ」
アレクシアはその話に深入りせず、話を切り替えた。
「それだとしてもあの力はおかしいわよ。魔力量とかの問題じゃなくて、戦術や剣術が完璧じゃない」
「この学校の、いや、この新人類系の学園全ては戦術などは全く見ない。見るのは魔力量だけだ」
だから、氷雨は三流剣士なのだ。
(階級が高ければ色々と楽なのにな)
「あぁ、そうだったの」
静かな声の後、彼らは教室へ向かった。
(そういえば、アレクシアはいつの間に着替えていたんだろう)
疑問に答えられる者など居らず、考えているうちに教室へ着いた。
◆
「えー、では、昨日仕切れなかったこの学園の話とこの後の方針について話して行くぞ」
普通の学校は入学初日で学校説明などがあるだろうが、この学校では初日は入学式のみという珍しいスタンスなのだ。
「まずは、皆も知っている通り私達は新人類だ。魔法が使えるし、さらには身体能力も高い。新人類には、六つの種類の魔法がある。一つ目は魔法剣士。私たちのことだな。魔力を帯びた剣を召喚することが出来る。更には身体能力が高いという性質も持っている。基本的に第1学園に通うことになっている」
クラスの人々は知っている話ばかりなのでつまらなそうに聞いていた。
「次は、魔眼。魔眼使いは魔力を目に集中することによって開眼され、その後はいつでも出せるようになる。これは皆ができることではない。相手と目を合わせることにより攻撃力が上がるという使いにくい性質もあるが基本的に視力が高く、相手や物を見るだけで効果がある。こいつらは第2学園に基本的には通っている」
その後もスラスラ説明は進む。
「次は、新人類の祖とされる魔法師だ。こいつらは魔力量が生まれてから尋常じゃないほど体の中にある。だが、その魔力を剣や魔眼に成長させることはできない。主に第3学園にいる」
「ここまで質問がある者はいるか?」
担任の一言に対し、誰も手を挙げないと思っていたがそこである生徒が質問をした。
「あのー、なんで魔法師の説明が少ないんですか?」
「それは、仕方ないんだ。彼らは基準とされるのが魔法師だから、身体能力が高いとかそういうものがないんだ」
質問した子はゆっくりと席へ座った。
「この次からは融合系と言う。つまり、体にいろんな生物や植物などを融合する魔法だ。一つ目は自然融合。植物などと融合できる。強い奴は海や山、森などと自然全体を融合することができる。基本的に第4学園にいる」
再び始まる担任の話に対して氷雨は窓を覗いていた。
「二つ目は、生物融合。融合した生物のメリットだけを取り入れる。しかも、融合できる生物は個人によって違うが、強い奴はドラゴンや麒麟など架空の生物とも融合できる。主に第5学園に在籍している」
それに対しアレクシアは話をきっちり聴いている。
「最後は、魔法師が祖ではないが融合系に属している。機械融合だ。機械と生物という正反対の物を一つの体に融合できるようになった素晴らしい魔法だ。なぜこんな褒めるかというと、単純に強いからだ。こいつらは残っている第6学園に所属することになっている」
この後、担任は授業を進める。その話でわかったことを単純にまとめると、普通の魔法より融合系の方が強いらしい。具体的な順位は強い順に機械融合、生物融合、自然融合、魔法、魔眼、魔剣士というところらしい。さらに、魔法の強さにより階級があることも分かった。一流、二流、三流の三つだ。
(ってことは、俺は三流剣士だから一番舐めてかかられるのか)
と、氷雨は心底呆れていた。
「では、次は学内ランキングの話をする」
担任の一声によりクラスは静まる。誰もがこの話を待っていたかのように。
「学内ランキングとは、第1学園内と学園全体のものに別れている」
「では、まずランキングのつけ方だ。基本的には16人ごとのトーナメントを作る。そこで対人戦闘をしてもらう。ベスト6に入った4人は上のグループの下位6人と入れ替え戦をしてもらう。入れ替え戦はチーム戦だ。これが、学内ランキングのつけ方だ」
氷雨は窓を覗きながら考えていた。
(おそらく俺は最下位スタートだろう。だが、この話を聞く限りトーナメントで一つ上のグループに上がるのは至難の技だ。下位の奴とすぐ仲良くなってみんなで上に上がるのを目標にしよう)
「最初のランキングは、今回の入試試験の結果で判断する。よって、例えとしていうが一位はアレクシア・ヴェールガント。最下位は霧島氷雨だ。ついでに、一位といったがこれは一年の中でだ。三年のトップを狙うのはむずいぞ」
氷雨は一位を狙っていた。なぜならこの後に話すことを前々からある筋の情報を経て聞いていたからである。
「ついでにトップの16人には特別な優待がある。この学校の生徒会の一存になるのはもちろん、学園が協力できることは全力で協力し、生活もワンランク上の生活になる。質問はあるか?」
氷雨は質問をした。
「全力で協力と言いましたが、全力ってどの程度ですか?」
「全力ってことは、まあ、30人ほどの軍隊なら動かせるぞ」
皆は驚いていたが、すぐに興味はなくなっていく。なぜなら誰もそいつらを倒せる気がしないからだ。
「さてと、他に聞きたいことがある奴はいるか?」
そこからは質問はなく担任は宣言する。
「では、机に埋め込まれているタブレットを見てくれ」
教室はハイテクなので担任の後ろの黒板のようなものは大型のパネルであり、机も全て電子機器だ。
「「「!?」」」
皆は驚く。それもそうだろう、明日にはランキング戦が始まりここには脱落する者もいると書いてあるのだから。
「じゃあ、説明をするぞー」
しかし、担任が話し始めた時一人の生徒が叫ぶ。
「脱落するってどういうことですか!?」
「そうだそうだ!」
「聞いてねぇよ!」
皆が叫び始める。しかし、その瞬間
「黙れ」
担任の一言により、叫んだ人の首始められたかのようになっていた。しかし、魔法も何も使っていない。そこでみんなの首を締めたのは単なる“殺気”なのだから。
「説明をするぞ。脱落するって書いてあるが、それは大会に出るものだけだ。しかも、脱落と優しい表現をしているだけではあって実際は死だ。あと、大会に出ないならこの学校を辞めてくれ」
皆は唾を飲み、確信する。
(((ここでは、弱すぎると殺される)))
皆が確信して恐怖心を持ち始めていた頃、アレクシア、時雨、氷雨、伊吹、この4人は全く動揺しなかった。
「あー、あと、これで最後なんだが、明日からランキング戦だから」
その言葉と同時にチャイムが鳴り、担任は消えていってしまった。取り残された学生たちは唖然とし、頭を抱えるものや、机に突っ伏している人多くいた。だが、氷雨はそこでガッツポーズをしていた。学内で早く一位になれると思っていたからだ。
◆
人学年128人の第1学園では、すでに8つのグループに分けて訓練が始まっていた。氷雨はその場で周りを見渡し、最下位グループで誰が残るのかを考えていた。それに加えて、この時期になぜ練習がすぐ始まるのかと言うと、すぐに個人戦があるからである。休憩なしに模擬戦が始まる。
「ハァアアアアアアアア」
氷雨は学年最下位の強さとは思えない力で皆を圧倒した。
この実力ならこのグループ相手に氷雨一人で対抗できるだろう。
氷雨はこのグループの第1シードに話しかけられた。
「おーい!霧島くん?だっけ?」
氷雨は歩いていた足を止め、振り向いてそちらを向く。そこにはガタイのいい男の同級生が立っていた。
「何?」
氷雨は優しく返事をする。
「俺、夏風鳴海って言うんだけど、霧島くんに剣技を教えてもらいたくって」
氷雨はこの話をチャンスだと思い勢いよく返事をする。
「うん!もちろんだよ!あと、霧島くんじゃなくて普通に霧島でいいよ」
そうして氷雨は、一人目の仲間を作ることに成功した
すいません!なんか変な感じになっちゃって。
少しの間このような話がうまく繋がりませんが、直して生きます!本当に申し訳ありません!
では、また次回に!