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一流魔法師妹と三流剣士兄  作者: 霧島 アヤト
入学編
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日常編Ⅱ


「早速だけど、いつ特訓するか日付を決めようよ!」


鳴海が話を進める。鳴海は見た感じ明るい性格のようだ。氷雨はそっと思ったのだった。


(多分、こいつはクラスで人気で顔もいいからモテるんだろうなぁ)


「おーい、おーい!」


「あっ!ごめん!」


氷雨は考え事に集中していたため、鳴海の話が聞こえなくなっていた。


「えーと、日付か!ちょっと待って!」


氷雨は手に掛けていたブレザーのポケットからスマホを取り出す。

氷雨のスマホを鳴海が覗くと中には「大会」や「修行」などの文字が多くある。


「今週の日曜日とかはどうかな?」


鳴海は氷雨のスマホを覗くとそこには「修行」という言葉が書いてあった。

そして氷雨の提案に対して鳴海は顔をしかめる。


「へ?日曜は休まないの?」


それに対して氷雨が驚く。


「へ?日曜日特訓しないの?」


二人の基準が違うため、アレクシアとの部屋が充実していたかを揉めたことを思い出す。


(俺って基準がおかしいのかな)


「でも、強くなるには日曜も特訓しなきゃだよな!おっけ!今週の日曜な!」


そういうと鳴海は走って行ってしまった。


(えぇ、なんか自己中)



氷雨は困っていた。とても困っていた。なぜなら、


「おい、テメェ調子乗ってんじゃねーぞ!」


と、何故か3人組の上級生に絡まれていたからだ。


「え?あ、すいませ...」


氷雨が頭を下げ用としたところに右フックが飛んでくる。

だが、氷雨はすぐさまに気づき体を一歩前へ動かし、右手で飛んで来た右腕を掴んで背負い投げをしてしまったのだ。


「「「へ?」」」


上級生の大将のような人が一瞬で倒され、上級生達は困惑していた。


((こいつガチで強くね?))


上級生達は最下位が最上位を倒したと聞き、氷雨を探していたらしい。しかし、氷雨はあろうことか学年一ガタイがいい生徒に剣技を教えていた。そこで上級生は、調子に乗っている氷雨に一発お見舞いしてやろうと思ったのだ。


「すいません。やりすぎました。でも、殴ってくるのはおかしいと思います」


氷雨は敬語で3人に話しかける。


「か、顔は覚えたからな!覚えてろよ!」


テンプレの言葉で3人組はダッシュで去っていく。


(なんだったんだろう)


氷雨はそう思いながら氷雨はまた歩き始める。

事態は簡潔に着いたが問題はこれからである。



「いっ、1戦してもらっていいですか?」


氷雨はまた勝負をかけられた。今度は同級生で、氷雨と同じ白銀の髪である。


「いいけど、俺弱いよ?」


氷雨が膝に手を当て返事をする。なぜなら対戦相手の人は男なのにかなり小さい体格だからだ。


「では、」


相手の人は胸に手を当て目をつぶり大きく息を吸う。そこから息を吐き出すのと同時に目をパッと開け膨大な魔力と殺気が氷雨に向かって飛んでくる。


「黒崎一夜は霧島氷雨に対して決闘を申し込む!」


「霧島氷雨は決闘を受諾する!」


氷雨も大声をだして返答する。


「「ソウルロック、解!」」


二人の体の周りには魔力が溢れ出る。やがてその魔力は実物化し、一夜の体を歪めるほどの色の濃さになっていく。それは、色でいうと「灰色」そんな雰囲気がした。だが、その出来事は一瞬の刹那、0.01秒ほどの出来事。一夜は一気に前に出て第1斬撃を飛ばす。しかし、彼の手にはまだ刀はない。


「闇を打ち破れ!〈夜月〉」


右手に魔力が集まり、瞬間的に剣を顕現させ氷雨の胴体あたりで完全に実現化させた。その刀は夜空のような綺麗な黒色だった。しかし、その刀には月のような重い雰囲気があった。


「マジ?」


氷雨は少し驚くが〈夜月〉と氷雨の胴体の剣一本がギリギリ入るあたりに〈驟雨〉を顕現させる。


“ガンッ!”


鋼がぶつかり合い、周りには轟音が轟く。剣に重さこそなかったが尋常じゃないスピードだった。


(剣がない状態で剣を振っていたから軽く早い剣劇が出来たのか。すごいな)


氷雨には余裕こそあったが集中力はあげる。


「えっ!?傷一つつけられてない...」


一夜は驚きながら後退する。若干しょぼくれているのかもしれないが、ため息か切り替えのための深呼吸なのか分からない呼吸をする。

しかし、一夜にそんなことをする余裕はなかった。


「はい!終わり」


そこには笑顔の氷雨が自分の首元に刀を置いている状態だった。


「・・・」


一夜は状況を理解できない。


「えっ、ええええええ!?」


一夜は驚きながら状況を理解する。


(嘘だろ、たった一息長い瞬きをしただけでこんなに間合いを詰められるものなのか?)


氷雨と一夜には10メートルほどの長い間合いがあった。しかし、氷雨はそれを0.1秒ほどで詰めたのだ。考えられない。


(しかも、これが学年最下位かよ)


「負けました」


そういうと同時に一夜は膝を落とす。魔力を体から外していき二人の体から魔力はほとんどない状態になっていった。魔力の塊は湯気のように消えていった。


「アレクシアさんには負けるし、どうすればいいんだっ!」


剣を持ったまま頭を抱える。


「アレクシアとグループ一緒なの!?」


氷雨は膝を曲げ一夜の顔を覗く。


「うん、そうなんだ。彼女に負けた後、どうやったら強くなれるか聞いたんだ。そうしたら彼女は、氷雨に聞けばいいって。彼は正真正銘の最強だからって」


氷雨は若干照れるがすぐに意識を切り返す。


「分かった。修行一緒にすればいいんだね?」


氷雨は問いかける。


「うん。でも、僕は型にはまりたくないんだ。オリジナルの形を生かした特訓ができるなら喜んで練習したい!」


氷雨は彼とはこの先のランキング戦で当たることを予測したので何も考えずに


「分かった!じゃあ、今週の日曜日ね!」


と答えた。


「え?後4日も教えてくれないの?」


一夜は疑問を持つ。


(「最強」って言われてるけど実際は結構休んでるんだな)


だが、その考えはすぐに消える。


「ごめん、4日間は全部大会と自主トレで予定が埋まってるから」


一夜の中の氷雨のイメージは一気に変わった。彼のイメージは才能の塊から努力の天才というイメージへ返還されたのだ。しかし、疑問が湧いてきた。


(自主トレってなんだ?)


若干人見知りの一夜は質問をしようとするが声を出せない。


「あ、」


氷雨が歩いて行ってしまったところで声を掛けてしまった。


「質問があるんだろ?」


氷雨はなにもかもを見透かしたような表情で見てきた。


(あぁ、この人は心も読めるのか)


一夜は確信した。


「自主トレってなに?」


一夜はすぐさま返答する。


「えっと簡単に言うとね、地獄に行くような感じだよ」


氷雨のその言葉に一夜は唾を飲む。


「どんなトレーニングするの?」


一夜は恐る恐る氷雨に聞く。予想外の返答が来ると確信したからだ。


「まあ、いろんな格闘技の大会に出るんだよ」


「へ?」


予想外は予想外だけど一夜は「戦地に行く」などと考えていたがそれは間違っていた。


「なんで、格闘技の大会に出るの?」


一夜は脳で整理がうまくできなくなっていた。


「そんなんみんな刀使ってて刀の腕だけあげるだろ?だから、すり足とか背負い投げとか覚えたらパワーで勝てない相手に勝てるわけなんだよ」


氷雨は自論を展開していく。


(嘘だろ)


一夜はまだ自分がとても弱いことに気づくなぜなら考えているものの単位が「剣士」ではなく「戦士」という概念で物事を考えているからだ。そんな相手に剣技だけで勝てるはずもない。「戦士」という概念を持っているなら...一夜は考える。


(この人は、本当に世界最強になろうとしてるのかよっ!)


一夜はその後氷雨に質問する。


「まさか、魔魂舞ソウルマジックに出るつもりなの?」


魔魂舞ソウルマジックとは、6つの学園が合同して行う。詳しい説明は大会前に担任からされるらしい。


「参加するってより、優勝するのが目的だね」


一夜はその答えを予測していた。しかし、驚いてしまう。正直言ってこの世界では三流剣士は弱すぎる。なぜなら機械融合の3流と剣士の1流だと機械融合の方が全然強いからである。剣士は間合いも短い。戦いは遠距離で攻撃されてすぐに負けてしまう。それが世の中の当たり前だ。しかし、氷雨は1流機械融合も倒そうとしているのだ。実力を知られていなければ、「何夢物語語ってんだよ」といじめられるレベルの話なのだ。


「す、すごいよ!修行一緒にするんじゃなくて、弟子にしてください!!」


一夜は目を輝かせながら氷雨を見つめる。


「無理だ」


氷雨は一言でその夢を断ち切る。


「なんで!?」


「俺は、弟子とは自分の全てを教える相手だと思うんだ」


氷雨は暗い口調になる。


「そ、そうだよ!だから弟子になりたいんだ!」


一夜の口から先程から敬語が抜けてしまっている。


「俺は、人に復讐する力しかつけてきていない。君にそんな力を与えたくないんだ」


「わ、わかりました」


一夜はこの時気づかなかった。氷雨の「復讐」という言葉に、自分が認められてないと思いしょぼくれていたからである。


「でも、修行は一緒にしよう!」


氷雨の声は先程と全く違う口調になり、一夜と話を続ける。


「分かりました...」


しょぼくれていたが、返事はちゃんとしていた。一夜は、決心をしていた。


(絶対に、この人に追いついてやる!)


声とは裏腹に考え事をしていたらしい。そのためうまく返事ができていなかったのだろう。

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