24.依頼前の話し合いのターン
突如として来襲した、自称冒険者ギルドの総元締め、他称叩き上げ男爵、ラストエンデは、俺達に3つの依頼を突きつけて帰って行った。
曰く、俺に認めらたければ、3つの試練を突破せよ!みたいな?
実際、幅をきかせてる他の団体の偉い人から認められないと、俺達としても仕事がし辛いっつーか、ムリっつーかだから、ここは何としても依頼をこなさないとならない。
流石のおっさんとかも、この辺は分かってるらしく、さっきから深刻そうだ。
「なぁ、ブラックよ…」
「何だ、リューゾ?文句なら聞かないぞ」
「文句なんざねぇよ。ただ、聞きてぇことがあるんだが…」
おっさんが俺に聞きたいことって言えば、大抵はこれからどうしたら良いか、みたいな感じだ。
そんくらい自分で考えなさい!オトナでしょ!と言いたいでもないが、ここは我慢して答えてやろう。
狭量な男は、嫌われっちまうからな、俺を慕ってくれてる使用人たちに。
…あっ、何故かウルシの視線が冷たい!
「俺に答えられるなら良いけどな」
「お前さんなら大丈夫なはずだ。ここなんだけどな…」
「ん?」
リューゾのおっさんから手渡されたのは、先程ラストエンデ男爵が残して行った依頼内容に関する詳細が記されたメモだ。
メモっつーには上等な紙を使ってるし、上品なインクで書かれてるっぽいし、ハンコまで押されてるから、テキトーな表現じゃ失礼な気もするが。
そんなメモの割と最初の方の行を指し示して、深刻そうな表情をしているが、いやいや、そこ前書きだけど。
何を疑問に思うところがあるんだ。
不思議に思っていたら、おっさんはアホみたいなことを聞いていた。
「…なんて書いてあるんだ?」
「……アンタ、文字読めるって言ってたじゃないか」
「これは文字か!?」
確かに達筆だけどな!?
依頼内容云々とか、それ以前の問題があったわ。
おっさんにメモ渡したの誰だよ。
この人にこの内容読解せよなんて、土台難しかったんだよ、きっと。
「はぁぁぁ」
「おい、溜息つくなよ」
おっさんは、不満そうに口を尖らせる。
おい、可愛くねーぞ。
それは女の子がやるから可愛いんだ。
「つかせてるのはどこの誰だよ。…はぁー…仕方ない。ウルシ、代わりに読みあげてくれるか?」
溜息混じりに、俺はおっさんからメモを奪い取ってウルシに手渡す。
ウルシは、眉を顰めて受け取った。
…ウルシは眉を顰めても可愛いから許そう。
「何故わたしに?」
「ヴェルデも、まだこの辺までは厳しい可能性があるからな。ああ、分かってると思うけど、挨拶とかは読み飛ばして良いから、依頼内容に関するところだけ頼む」
ふざけてる場合じゃないから、とりあえずしっかり理由を説明する。
すると、ウルシは相変わらず無表情だけど、どこか満足げに頷いてくれた。
「…かしこまりました」
今の何処で納得したのか、甚だ疑問である。
本当に、ウルシだけは分かりにくいよな。
出会った時もそうだったけど、突拍子もないこと普通に言ってきたりするし。
逆にヴェルデは非常に分かりやすい。
今も、仕事を任せてもらえなくって不満顔だ。
良いんだよ、お前は。
真面目だし、これから学べよ。うん。
「依頼された内容は、主に三つ。採集、狩り、討伐です」
それはさっき男爵本人も言ってたよな。
多分、街の外で行う依頼の主な内容なんだろう。
あとは、護衛とか諜報とかも思いつくけど、それは基本というよりは発展の方に入りそうな気がする。
「一つ目、採集。とある村全体で、発熱の症状を訴え、何人もが倒れているという情報が入ったと仮定する。その際に必要と思われる薬草、考えられるだけすべて用意すること」
「…はい、ストップ!何だ、そりゃ!?」
採集なんて言うから、俺はナントカリュウノウロコをモッテコイ!みたいな、特定の種類の薬草を持ってこいっつー依頼かと思い込んでた。
何でそんな専門的なのが入って来てるんだよ!
ビックリしたわー。
「恐らく、我々の情報収集能力も量ろうとしているのかと」
「だよなぁ…。うへぇ…俺は苦手だ。困ったな」
こう見えても俺は、理系は専門外だ。
文系ナメんな。
文系オブ文系だぞ、俺は。
大学時代も、実験とか一つもしてなかったし。
映画ばっか見てたわ!
「発熱、特定の村に限られるかも?あと何人もに発症…それらの症状から、病気を特定出来そうなヤツはいるか?」
「恐れながらご主人様。今の情報だけで完全に特定することは、不可能だと存じます。圧倒的に情報が足りません」
「そりゃそうだよな、ヴェルデ。なら、どうする?」
「やはり、条件にもある通り、考えられるだけすべて…用意するのが得策かと」
颯爽と発言するヴェルデは流石である。
まだまだ勉強中でこれって。
おい、皆も見習えよ!
「うーん。なら、採集担当ヴェルデね。確か、図鑑とかも好きだったよな?」
「お任せください!」
「あとは…逆に貴族が詳しくなさそうな…民間療法も必要かもしれんよな。ここはルイズ!」
「えっ、私!?」
苦手な頭脳労働的な会話だったから、ほぼ石像と化していたルイズが、俺の呼びかけに遅れて反応を示した。
ちょ、ルイズにだって関係あるんだから、ちゃんと聞いてて。
「ルイズは、この中で一番街の人達との親交が深いよな?」
「え?仲が良いかってこと?そうね…そうだと思うけど…」
「なら、自分で知ってる分でも良いから、今の条件に合いそうな薬草があるかどうか、街の人達に聞いて回ってくれないか?」
「それくらいなら、私にも出来るかも…。分かったわ!」
こくりと深く頷いて見せるルイズ。
比較するのも申し訳ないが、やっぱりルイズはおっさんなんかより全然良いな。
「じゃあ次、狩りか」
「はい。二つ目、狩りです。珍味、サンオトウが目標になります。生死は問わないということになっています」
なるほど。
こっちは割とシンプルだな。
…つっても、一つ目に出された依頼内容がアレだから、そう簡単に終わってくれるかは微妙なところかもしんないけど。
「狩りかー。リューゾ行くか?」
「おう、任せろ!…って、何かお前さん、軽くないか?」
「そんなことないぞ。これは、リューゾなら知ってるだろうって信頼感からだ」
「そうか。なら良いんだが、俺ぁサンオトウ?なんて物は知らねぇぞ?」
使えねぇなぁ、このおっさん!!
マジでどこで活躍すんだよ、まったく!
「あ…私、聞いたことあります」
「おお、カシコ!どこで聞いたんだ?」
「近所の魚屋さんです。お使いに行った時に聞きました」
ポンと軽く手を打って答えるカシコ。
マジで賢ぇよ、カシコ!
どっかの図体ばかりが大きいおっさんとは大違いだ。
「よし、カシコ。ならお前が狩りの情報収集隊長だ。任せたぞ!」
「わわっが、頑張ります!」
グッと両手を握って頷くカシコ。
天使一人じゃ心配だな。
「リューゾ。せめてカシコの護衛頼むわ。うちのカシコは賢くて可愛いから、放っておいたら誘拐されっちまうよ」
「おお、安心しろブラック!」
「ゆ、誘拐はされないですよぉ!?」
心外だと言う顔をしているが、いやいや。
ここは異世界ファンタジーな世界だぞ?
人攫いとか人身売買とか普通にあるだろ。
どこだかの国は、奴隷売買だけで成り立ってるとか聞くし。
…ん?でもそこはクーデターか何かで結構真っ当になったんだっけか?
まぁ、別にどっちでも良いか。
「んじゃあ、最後は…」
「最後は討伐になります」
おお…ウルシがかぶせ気味に説明して来た。
悪かったよ、お前の活躍の場を取って。
そんなつもりじゃなかったんだ。
だから睨まないで!
「リーユー炭鉱に巣食う正体不明のモンスターの討伐です。こちらは、事前に情報収集を行い、正体を掴み、報告してから改めて討伐に赴くように、との指定がされてございます」
何か、意外と念が入ってるな。
これは急ぐっつーより、慎重にやる必要がありそうだ。
「討伐なら、俺にやらせてくんねぇか、ブラック。最近、あんま身体動かしてないからナマってきちまってんだよ」
「安心しろ、リューゾ。お前だけは頼まれても外してやんねぇから」
「おお、そうか!」
正体も分からない内から、丸腰で突っ込むのは流石に出来ない。
俺一人だったらロマンだーとか言って、実際にやらないでもないけど、仲間もいて家もあってじゃ出来ないもんな。
「うーん。とりあえず、各自先に二つに関して調査を始めてくれ。三日で、出来る限り正確に、幅広くな。俺も俺で動いて、討伐に関しての計画も立てるから」
難しそうな依頼っつーか、面倒臭そうな依頼だが、やらなきゃならない時が人にはある!
それは、まさしく今だ。
と自分に言い聞かせながら、一旦その場を解散させる。
こっから、考えることは山ほどある。
是非とも勘弁してもらいたいが、仕方ないよな。
はぁ…。
クロ「今回は諸事情で短かったぞー。スマン!」
ウル「話が全然進まないですね」
クロ「質より毎日アップ出来る方を優先してるらしいからな。あっはっは」
ウル「笑い事じゃないですけどね」




