22.謎の訪問者、襲来
「ふんふふふーん」
「ご主人様。本日はとてもご機嫌でらっしゃいますが、如何なさいました?」
ギルドに向かって歩きながら、鼻歌を歌っていると、もうすっかりゲームに出て来たヴェルデのレベルの立ち居振る舞いになったヴェルデが理由を尋ねて来た。
流石は、ばあやが外出を許可しただけある。
マジでもう立ち居振る舞いにツッコむべき箇所はない。
確かに、まだ子供っぽいところもあるけど、それもまた魅力だから問題ない。
「とうとう自由に外に出られるようになるからな!楽しみで楽しみでー…」
ニコニコ~ってより、ニヤニヤ~って感じで答える。
ヴェルデは、なるほど、と軽く頷いているが、ウルシは結構渋い顔をしている。
いつものことだけど。
「ご主人様の中身は、まだお子様でらっしゃいますから、その程度のことで一々テンションが上がるのですよ、ヴェル」
「そのようにご主人様を悪く言うものじゃないですよ、ウル」
うおおお、ヴェルデェェ!!
慣れて来てからと言うもの、こうして事あるごとにウルシにツッコミを入れてくれるヴェルデは、本当に良く出来た子だ。
これからもその調子で、俺の心を守ってやってください。
いつかウルシにベッコベコにされそうで困る。
つーか、ヴェル、ウルって呼び合ってるの可愛くね?
俺だけか。
何も考えないで付けたけど、響きが似てて超良い感じに聞こえる。
俺、天才じゃね?
パネェな、マジで。
「ウルシは楽しみじゃないのか?外」
「外界に興味などございません」
「ふーん」
シレッと無表情で答えるウルシ。
いっつもこの顔だから、分かり辛いっちゃ分かり辛いが、何だかんだでウルシは楽しみにしてる気がしてならない。
ご主人様の勘ってヤツだ。
「ヴェルデは?」
「僕は楽しみですね。早く自分の実力を確かめてみとうございます」
何と言う脳筋。
ヴェルデ、目を輝かせるなんてもんじゃないよ。
目をギラつかせてるよ。
内心ちょっぴりドン引きしながら、気付けば到着していたギルドの扉を開く。
勿論、ノックなどなしだ。
ここは街中の俺ん家みたいなもんだし。
「ヘイヘーイ!ブラックお兄様のお帰りだぜ、みんなー!」
「あー、おにいさまだー」
「おにいさま!」
「にーたん!」
中に入ると、ドッと子供たちが俺に押し寄せる。
ハッハッハ、可愛い奴らだ。
ん?
別に数稼ぎだし、ぶっちゃけギルドに入れるんなら、誰でも良いとか言ってたのはどこのどいつだって?
そうだな、そんな日もあった。
でもそれは過去のことだ。
忘れよう。
「わーい!ヴェルくんもいるー!」
「ヴェルたん、あそんでー!」
「時間があったらな」
よしよしと、満面の笑みで子供たちの頭を撫でるヴェルデ。
対照的に、直立不動で目すら合わせないウルシ。
ウルシは、何でか子供たちが嫌いみたいだ。
うーん、何でだ?
良く分からんが、せめてちょっとくらいは動こう?
子供たちの一部が怯えてるぞ…。
「ブラック様!」
「ん?カシコ、どーした?」
バン!と二階の一室の扉が勢い良く開かれ、中から、中学生くらいの、長いおさげの女の子が顔を出した。
あの子も元々名前が付いていなかったから、僭越ながら俺が付けた。
浮浪児グループの中でも年長の方で、元々頭が良かったのか、勉強の覚えが非常に良く、すっかりみんなの先生的立ち位置についている。
だから、賢い、から取ってカシコ。
どうだ、可愛かろう。
本人は響きがあまり良くないと言ってたけど、知らんな。
あ、そー言えば、俺の正体は子供たちにも秘密にしている。
ヴェルデにもよーく言い聞かせてある。
だから、俺が本当はクロードと言う名前で、ユリアナという貴族令嬢を演じているっつー意味の分からん設定は、今のメンバーで知っているのは、ウルシを除けばヴェルデだけ、ということになる。
理由はまぁ、弱点は出来る限り作りたくないってことだ。
貴族ってほら、面倒くさいから。
ただでさえ、女装っつー最悪の弱点抱えてるんだから、ちょっとでも突かれそうなポイントは削らないとな。
って、良く見ると、カシコの表情がかなり悪い。
凄い勢いで出て来たし、もしかして何かあったのか?
こんなことを考えている場合じゃなかったか。
「どうしたもこうしたもありませんっ!」
「ど、どうどう。落ち着け。状況が掴めん!」
「簡潔に、かつ的確にお伝えなさい」
「は、はいっ」
年下だろうウルシからの指摘にも関わらず、カシコは真剣な様子で頷く。
いやー、ピュアだな。良い子だな。
「だからと言って、あまり堅くならなくて良い。深呼吸しろ」
「う、うん。ヴェルくん…」
すかさず入る、ヴェルデのフォロー。
何て気遣い屋なんだ。
気を遣える男はモテるぞー。
ウルシ睨んでるし、ウルシにはモテてないみたいだけどさ…。
「えっと、ですね。実は今、来客中でして…」
「ん?でも、カウンターは空いてたよな」
「はい。上の、ギルドマスターの部屋へお通ししています」
チラリと、簡単にパーテーションで区切られただけのカウンターに目をやる。
そこにはまだ、俺の理想とする受付嬢は存在しない。
数人でチームを組んで、ようやく近所のおばちゃんのリクエストを聞いて、料金の説明をして、手続きをする、という一連の流れがやっとこさ出来ている感じだ。
今も、まず話を聞く役が宛がわれた少年少女が、2~3人程度が、つまらなそうに待機しているだけで、特に客はいなかった。
不思議に思っていたら、まさかの二階へ通していたらしい。
ギルドマスターって、リューゾのおっさんにギルドを任せていなくなったとか、そうじゃないとか、良く分からない人だが、勝手に部屋を使っても良かったのだろうか。
俺も一回も入ったことなかったけど。
「ギルドマスターの部屋は、先日わたしが掃除を完了させておいてございます。またその際に、リューゾさんより応接室としての利用であれば構わないと、許可もきちんと頂きました。御不審な点がございましたら、後ほどご確認くださいませ」
「ウルシか。…なら気にしなくても平気そうだな」
おっさんが清々しく貸してくれたかどうかは別として、多分納得はしてるだろ。
その辺のゴリ押しは得意だからな、ウルシは。
つーか、ウルシ俺の言いたいこと良く分かったな。
流石は我が右腕。多分。
「で、何が起きたんだ?カシコが焦るくらいだ。相当のことが起きたんだろ?」
「その通りです!あの、わ、我がニスナン王国に拠点を置くすべての冒険者ギルドを取りまとめていらっしゃると仰られるラストエンデ男爵様がいらっしゃって…」
「ん?男爵?…貴族か」
こりゃ、異常に早く釣れたか?
いや、男爵っつったら、貴族の中でも最下級だ。
それで馬鹿にするつもりはないけど、侯爵の息のかかった者が男爵本人っつーのも、何かお粗末だよな。
なら、言葉通りの用件で来たってことか。
うーん、でも聞いたことねぇな。
多分、俺と同い年の子供がいないんだろう。
いたら、確実に覚えさせられてるし。
「…ラストエンデ男爵。先日拝読した貴族名簿で見た記憶がございます」
「お、マジでか」
ヴェルデが、恭しく口を開く。
たった一ヶ月で、ホントどんだけ成長してるんだっつー話だよ。
やべぇよ、うちの使用人。
みんなハイレベル過ぎて付いていけない。
…クリスは良いんだよ、行儀見習いだから。あと、おっぱい大きいから。
「聞かせてくれ、ヴェルデ」
「かしこまりました」
ヴェルデは、ゆっくりと一礼すると、それから口を開いた。
「ラストエンデ男爵。元々ニスナン王国に居を構える、古参の冒険者ギルド「夕日の剣」の創設者で、貴族の位は持っていなかったのですが、長年の功績が認められて数年前に貴族の位を賜ったそうです」
要するに、成り上がったって訳だ。
すげぇ根性だな。
俺には真似出来ねぇよ、マジで。
ほら、俺生粋のお坊ちゃまだから。
ん?前世?
庶民だったが何か問題でも?
「一人で強大なモンスターを倒したり、巨大な迷宮を突破したりと、相当の実力の持ち主であると言われています」
どんな化け物だよ、それ。
つーか、この世界にも迷宮ってあるんだな。
これはいつか行ってみないとなんねぇな。
「そんなヤツが、何しにウチに来たんだ?」
「それが…」
カシコは、俺の質問に躊躇いがちに目を逸らす。
相当の実力を持った冒険者さん。
どんだけキャラ濃いんだよ。
ウルシほどじゃないにしても、カシコだってかなりクールな子なんだぞ。
地味可愛いみつあみの印象と違ってさ。
そんなクールな子に説明を躊躇わせるって…。
マジでヤベェヤツが来てるんじゃねーか?
「ブラック様を出せ、と」
「ん?俺の存在って、そこまで明らかにしてなかったよな?」
おずおずと語られた言葉に、俺は首を捻る。
結構街中でハッスルしてはいるが、この姿では見られてないし、めちゃめちゃ目立ったごく一般的な冒険者風の姿は、あの日を境に封印しておいたし。
影の支配者っつーのも格好良いなぁと思ったのと、あんま俺の存在が目立ち過ぎても後々面倒臭そうっつー理由で、ギルドに関することで矢面に立つのは、必然的にリューゾのおっさんってことになってる。
おっさん自身も、アドバイス貰っておきながら、クレーム対応とかまで任せられないって納得してた。
そんなおっさんを通り越して、影のアドバイザーことブラック様を引きずり出そうとは、なかなかの情報通じゃあるまいか。
「リューゾ代表と男爵は、どうやら古いお知り合いのようでして、ここ最近のギルドの変化を見て、代表がやったとはとてもじゃないが思えない…と、仰っておいででして…」
「あー、ナルホドなぁ」
おっさんの馬鹿っぷりを知っていた人ってことか。
そりゃ、俺の存在にも気付くってもんだ。
「ですが、ブラック様ご自身のことまでは調べはついてはいない様子でした。ただギルドへのテコ入れのアイディアを出している人物がいるはずだ。その人物を出せとも仰っておいででしたので」
「ふんふん。そうかぁ…」
いかにもやる気無さそうな返事をしてしまったが、実際やる気なんてない。
ったく、知り合いなら何とかしてくれよ、おっさーん。
知り合いだからこそ、そこまで気付かれてしまったんだろうけど。
つっても、幾らでも誤魔化しようくらいあるだろうに。
けど、おっさんにゃ難しいか?
ギルドより先におっさんにテコ入れした方が良かったんじゃねーの、これ。
「うーん。どうするよ?」
「わ、私は、ブラック様には早く行ってもらいたいです!」
「理由は?」
「代表とルイズ先輩が、とても困ってるからです」
カシコは俺に行ってもらいたい、と。
二人が困ってるから、だなんて優しいなぁ、カシコは。
因みに俺は、放置プレイでも良いんだよな。
二人が困ってるの見るとウケるし。
「ウルシとヴェルデはどう思う?」
「わたしは無視で良いと思います。ご主人様はあくまでもアドバイザーですから、表に出る必要性はございません。あくまでもご主人様のなさることを、リューゾが理解していれば済んだ話ですので」
ウルシも放置プレイ派か。
ウケるからって訳ではないみたいだけど。
流石にウルシは厳しい子だな。
つーか、ウルシって何でこんな他人に厳しいの?
自分に厳しいかは微妙なラインだけど。
「ヴェルデは?」
「はい。僕はひとまず様子を見る必要はあるかと愚考致します。何故ならば、リューゾ代表が、焦ったあまりにご主人様の意図しないような内容を口走ってしまう可能性が捨てきれないからです。その発言によって、ご主人様に不利益が生じるなど後々処理し辛い事態が発生してしまう危険性がございます。それだけは避けた方がよろしいのではないかと」
ヴェルデは一旦様子だけは直接見に行った方が良い派か。
確かになぁ。
おっさんがテンパッて、マジでアホなこと言う可能性があったか。
あー。
二人が俺の側にいてくれて良いなぁ。
今までは一人で考えないとならんかったけど、これからは二人がいる。
そりゃ、ある程度は自分で考えないとならんが、これからは、二人に意見を求めれば、結構しっかりした意見が返ってくるんだな。
超ありがてぇ。
ウルシだけだと、意見偏るしな。
やっぱヴェルデ拾って良かったぜ!
「じゃあまず、隣の部屋とかから様子を伺ってみるか。介入しなきゃならないくらい追い込まれてたら、満を持して俺の登場ってことで」
「かしこまりました」
「僭越ながらご主人様。ご主人様は変身出来るのですし、虫にでも化けて、室内に直接入った方が話を聞きやすいのではないでしょうか?」
「ウルシ…ナイスアイディアだけど、何かちょっと雑な感じするの俺だけ?」
「お可哀想なご主人様…。最近働きづめでしたものね…」
俺の勘違いだってか。
ウルシの悪口のレベルまで上がって来てないか?
ま、まぁ良い。
アイディア自体は結構良いからな。
採用させてもらおう。
「じゃあ、気付かれないように部屋の前まで行くか」
「それでは、カシコ。ご主人様が自然と中に入る手助けになるように、お茶を運んで来てくれないか?お茶の差し入れ、と言ってカシコが中に入る際に、ご主人様が中に入れば、恐らくは気付かれないだろうから」
「そうね!分かりました。お任せくださいっ」
ヴェルデの言葉に、カシコはハッとしたように目を丸く見開いてから、ポンと軽く両手を打って、パタパタと台所の方へ消えて行った。
このギルド、何気に井戸があるから、水は飲み放題だ。
水源は何処だかまだ聞いてないけど、地下水とかなんじゃないか?
いつでも冷たくて美味しいし。
俺は貴族の嗜みとして、飲み水を生み出す魔術を習得しているから、ギルドの水を飲む必要性はないんだけどな。
面倒だからつい飲んじゃうよな。
貴族の嗜みっつーのは、あれだ。
うちの国は比較的平和だけど、暗殺とかを防ぐ為に最初の方に習得するのが必須らしいよ。
貴族怖いな。
「お待たせしました。お茶を持って来ましたよ」
「なら、上に行くか。ウルシとヴェルデは部屋の外で待機な」
「はい」
「かしこまりました」
全員で、足音を殺して…いや、カシコだけは普通の歩調で上へと向かう。
ギルドマスターの部屋は、一番奥にぽつりと存在している。
全然威厳とかは感じない。
普通の部屋だ。
ちょろーっと、ルームプレートって言うんだっけ?あの木札みたいなヤツに、ギルドマスターのお部屋って書いてぶら下げてあるだけだ。
つーか、手書きだし、字汚いし、やべーな、これ。
でも二人が、絶対変えたくないって言うし、しばらくこのままなんだろうけど。
そっと扉に耳を当てて、中の音を聞こうとする。
おっさんの声が大きいから、何かしらかは聞こえてくるかと思ったけど、上手く音が入って来ない。
会話してるはずなのに、妙だ。
これは…もしかして、防音系の魔術とか使ってるか?
あー、考えとくべきだったー。
防音…つまり、他の人に会話が聞こえないような魔術の習得も、貴族にとっては必須事項だった。
下級だろうと、貴族である以上習得していることは考えなければ逆におかしいくらいのレベルの話だった。
マヌケ過ぎるだろ、俺。
これじゃあ、変身して中に入っても聞こえない可能性が高い。
残念ながら、まだ読唇術は習得していないし。
ぐぬぬ…ぬかったわ。
仕方ないが、ここは堂々と入るか、おっさんが何かしらかのアクションを取るまで行動はお預けってことになる。
俺は、作戦のとん挫を伝えるべく、口を開きかけ、直後慌てて叫んでその場から飛びのいた。
「みんな、避けろ!!」
ドカン…いや、スパン、だろうか。
そんな激しい音と共に、扉が真っ二つに断ち切られる。
その鋭い攻撃の余波か、後ろの壁にまで真一文字に深い傷跡が刻まれた。
高さから言って、あのまま耳を当てていたら、扉と一緒に真っ二つコースだったかもしれない。
慌てて周りを見ると、ウルシはすぐさま避けていたみたいで無傷。
ヴェルデは、動くのは苦手なカシコを抱えて飛びのいていた。
何と言う紳士。
俺も見習わないとならんな。
つーか、俺が助けてやれよって感じだよな。
うわー、ウケるー。
「何だ…外で聞き耳立ててる失礼なガキがいるなぁと思えば…まさか、俺の攻撃を避けてやがるとはなぁ…ククク。面白ぇもん拾ってたじゃねーか、リューゾよぉ」
部屋の中から、一人の男が出てくる。
薄い茶色の髪に丸眼鏡と、一見大人しそうな感じだが、それに反するような刺々しい話し方。
手にした毒々しいデザインをした長剣からは、薄っすらと煙が舞っている。
確実に今攻撃して来た犯人だ。
口ぶりからして、おっさんの知り合いっつーことは間違いない。
多分、この人がラストエンデ男爵だ。
うわー…おっさん、余計なことマジで言うなよ。
この人…めっちゃ面倒臭そうだ!
「うおお、ブラック!無事かブラック!!」
「わっ、馬鹿、おっさんやめ…!!」
俺の願いは虚しくも届かなかった。
思わず、といった様子でおっさんが俺を呼んだのだ。
気付かれちゃうだろ、馬鹿ぁ!
「ブラック…そうか。テメェが終焉の革新者か」
「何それめっちゃカッコ良い」
知らん間にすげー中二っぽい二つ名がついてた。
多分、単に終焉の狼の革新を行ってるって意味で言ってるんだろうけど。
…俺、今度からそれで名乗ろうかな。
めっちゃカッコ良いわ。
それで命狙われるなら、受け容れるわ。
「テメェに話があんだよ。ちょっと面ァ貸せ」
…この人、マジで貴族っすか!?
ちょ、俺が貴族ってのも疑わしいけど、この人マジですか!?
ちょっとしたチンピラよりヤバイんだけど。
本職の人みたいな目ぇしてるんだけど。
内心ビビリつつ、とりあえず俺に許された選択肢は、もう諦めてついていく、というのしか残って無い。
俺は、ひっそりと溜息をつきながら、結局3人を引き連れて中に入るのだった。
今の衝撃で割れたティーカップについてだけは、せめて責任を取ってもらおうと決めながら。
ウル「因みに、補足と致しまして、男爵はご主人様…即ちブラック様の容貌をご存じではなかったようです。ですので、例えリューゾが「ブラック」と呼んでも、ご主人様が反応しなければ、確信には至らなかった可能性がございます。ですので、男爵に気付かれたのは自業自得という説もございます」
ヴェル「ですが、あれだけの剣の達人ですし、ギルドを取りまとめてらっしゃる実力者でいらっしゃいますから、男爵は人の視線の先を確認するだけの力ももっていらっしゃったかと存じます。したがって、ご主人様が反応を見せようが見せまいが、リューゾ代表の視線の先を辿って、ご主人様に行きつかれたのではないか、と僕は考えます」
ウル・ヴェル「「……」」
ウル「ヴェルなんか嫌いです」
ヴェル「奇遇ですね。僕も貴女が苦手ですよ」