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異世界×転生×etc.~気付けば木とか豚とか悪役令嬢とかだった人達の話~  作者: 獅象羊
第二章/乙女ゲームの悪役令嬢になった俺は冒険者ギルドにテコ入れする
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21.偶には振り返ってみよう

 はいはい、どもどもー。

 表向きは社交界に冷徹ブリザードをまき散らす予定の、超美人悪役兼、公爵令嬢ユリアナ様、しかしてその実態は、命を守る為に男であることを隠せと言われた、薄幸の美少年、公爵令息クロードですぜ!


 ですぜ、はおかしいか?

 まぁ、別にどっちでも良いか!


 さてさて。

 結構色々あったし、一応振り返っておくか。

 街に下りてからの、怒涛の三日間についてまとめるぞ。


 まずー、終焉の狼っつー冒険者ギルドのリューゾとルイズに出会ったよな。

 リューゾのおっさんは、ウルシを街で拾って来た時に既に会ってるから、出会ったって表現はおかしいが、しっかりと会話を交わすのは初めてだったから、良いか別に。

 そんで、ウルシが盗みを働いたことに対する迷惑料として、俺は金を払ってた訳だが、金より知識をくれ!って頼まれたんだよな。


 ギルドなんてファンタジーの王道だし、俺は全然ウェルカム。

 立て直しったって、そんなに大変なことはないだろうと思ってたけど、見せてもらったギルドの実情を示す内部資料が、まったくもって資料とは呼べないレベルにショボい物だったもんで、ぶっちゃけこれヤバくね?と思ったのも事実だが、同時にすげぇ面白そうだとも思って、引き受けた訳だ。


 勉強が見るからに苦手っぽいリューゾとルイズに話を聞いても、サッパリ実情が見えて来ない…強いて言うなら、金が全然入って来ないっつーことだけは分かったけど、そんだけ聞いてギルドの立て直しを図れる程、俺だって天才じゃない。

 まずは、他の同じような冒険者ギルドが、どうやって運営してるかの調査が必要だって判断した俺は、早速見るからに冒険者っぽいがっしり脳筋系男子に変身して街に繰り出した。


 何時間かかけて、他のすべてのギルドを見た結果、分かったことは、依頼はすべて指名制によるギルドばかりだ、ということだ。

 冒険者が自由に選べるフリークエスト的なものは殆どないのだ。

 あと、受付嬢が嬢じゃないことも多い。

 やめてくれよ、ファンタジーのロマンだぞ!


 そんな重要そうなことから、そうでもなさそうなことまで、色々と情報を仕入れた俺は、最後に女の子ばっかり所属してるっつーギルド「雪解け華」に潜入した。

 そこで、何でかそこの暴れ牛リンダとか言う女に絡まれたんだよな。

 マジ意味分かんなかったわー。

 殺されかけたし。

 しかも、そこのギルドマスター…えーと、アレクセイだっけ?には、普通に貴族でしょ、みたいな指摘を受けるし。


 あれは厄介だった。

 もう二度と行かない。

 多分。


 で、逃げ帰って来てリューゾとルイズがアホだっつーことを確認して、とりあえず何やるにしても、全然人数が足らないから、とりあえずこの街にいっぱいいるっぽい浮浪児集めようぜ!ってな感じで街にもう一度繰り出した俺。

 そこで出会ったのが、ゲームのヒロインであるリラちゃんの攻略対象者である、ヴェルデ。括弧幼少期。

 ゲームの設定的にも、ユリアナの使用人ってあったから、人員さえ集まりゃ、面子はどーでも良いかなぁと思ってたけど、ゲームファンとしては、ここは何としても抑えたいぞ!と思った俺は、すぐには付いて来てくれなさそうだったから、一旦は引いた。


 …これが怒涛の一日目の出来事だ。


 整理してみて引くわー。

 俺、どんだけ働いてるんだよ。

 イベントてんこ盛りじゃねーか。

 マジで休みをください。


 ーで、二日目。


 城で珍しい芸術品の展覧会が開かれることになったから、通常は貴族と言っても子供の頃には参加しないはずのこのイベントに、今回は参加することになった。

 城の中庭って言って良いのか分からん、バカデカい中庭に建ってた建物は、まさしく俺の知る美術館で、正直めっちゃビックリした。

 でも、何があったのかは良く覚えてない。

 ちゃんと見たのなんて、ウェディングドレ…いや、良く考えたら、白っぽいってくらいしか覚えてない。

 俺、ちゃんとは見てなかったわ。

 ちゃんと見てたのは、目を輝かせて見てたクリスだったわ。

 …あと、呪いの宝冠に目を輝かせてたウルシか。


 えーと、で、そこでゲームにおけるユリアナの取り巻き三人衆に加わる予定のマリアンヌが声をかけて来たから、これは仲良くなるチャンス!と思って、芸術品はそっちのけで外でお茶会にいそしんで、同じく取り巻き三人衆に加わる予定の、カティナとサフィヤとも楽しくおしゃべりしたんだよな。

 いやー、あれは至福の時間だった。


 …これが二日目の出来事だ。


 ん?そう言えば、芸術品の提供者と会ったのもこの日か。

 どうやら魔王らしいジルとか言うイケメンと、芸術王とか称されるクライハルトとか言う二人組だった。

 何か知ってる気もするけど、目下のところは忘れてても良いだろう。

 うん、二日目は終了だ。


 そんで三日目ー。


 ばあやに頼んでた情報収集が完了したってんで、ばあやの話を聞いたな。

 魔王組についてと、ヴェルデに接触してた貴族についてだ。

 そしたら、まさかのゲームヒロイン、リラちゃんがお世話になる予定の、ヘスモンティー侯爵が関わってるとの情報が耳に入って来た。

 良い人な可能性もあるけど、最悪、何か企んでるかもしれない貴族が、リラちゃんの絶対的な味方。

 信じたくないよな。うん。


 …つっても、本当に最悪だったら、リラちゃんに出会う前に切り離すけどな!

 俺って気づかいが出来る男だよ、本当に。


 あとは、ヴェルデにどうするか聞きに行ったら、一対一のバトルを申し込まれたから、とりあえず普通に勝って、ヴェルデ一団をゲットしたんだよな。


 これが三日目か。


 一日目が盛りだくさん過ぎたせいで、二日目とか三日目とか、めっちゃ暇してたみたいに見える不思議。

 いやいや、俺としては相当忙しかったんだぞ?

 そんなまさか、暇してただなんて。

 ナイナイ。


 えー、そんな怒涛の三日間から、凡そ一ヶ月が過ぎた。


 早過ぎね?とか、そういうツッコミは受け付けない。

 仕方ないだろ。

 特筆して盛り上がるイベントなんてなかったんだから。


 とは言え、折角ここまでまとめたんだ。

 ついでに一瞬で過ぎた、この一ヶ月についても振り返ろうか。


 まずは、ヴェルデを連れて帰って来て、ばあやに預けて地獄の訓練が開始されたんだよな。

 ウルシも、まだ教育課程は終わってない、とのことで、結構な割合で訓練に参加させられてた。

 本人としては、もう十分使用人としてやっていけるだけの実力は身につけてる自信があったみたいで不満そうだったけど、修羅のようなばあやを前にしては、嫌がる素振りさえ許されなかった。

 哀れ、ウルシ。


 二人がばあやの訓練に拘束されてる間、俺も自由に動けるっつー訳でもなく、クリスに見張られながら、令嬢としての立ち居振る舞いから知識から何から、俺もいつも通り訓練を施されていた。

 とは言っても、俺の筋が良いからか、結構自由になる時間も作れたから、頻繁にギルドの方にも顔を出した。

 つーか、出さないと絶対ギルドが酷い状態になるしな。


 初日には、とりあえずまたしても時間がなかったから、子供たちを年齢や性格、得意なことなどが分かるように調べて来て欲しいとだけ伝えておいた。

 リューゾとルイズは、任せておけと胸を叩いていたから、俺は安心して家に戻って行った。


 で、実際数日後。

 俺の目の前には、あり得ないレベルで詳細な情報が並んでいた。

 名前と年齢と性別と、レベルと…って、これステータスじゃね!?


 俺は目を疑ったね。

 そこに書かれてあったのは、集めて来た子供たちのステータスだったんだ。

 所謂RPGとかに出てくる、強さを現す数値。

 こんな正確なもん、この二人に作れるはずがない。

 そう確信して聞いてみたら、有料ながら、教会で作ってくれるらしい。

 おい、出るゲーム間違ってんぞ。

 ここは乙女ゲームだ。

 RPG要素のあるゲームなんてそうそうなくて良いんだよ。


 とは言え、これがあるのとないのとでは大違いだ。

 俺は、前世も含めて、自分の人生の中で一番集中して、それらの資料に目を通して通して通しまくった。

 物凄かったね。

 それこそばあやのような、修羅的オーラが出てたってクリスが言ってた。

 クリスが言うってよっぽどじゃね?


 とにかく、その結果俺は、子供たちのチーム分けを最適化することに成功した。

 最初に受けることが出来る仕事は、恐らく家の掃除、洗濯、買い物の手伝いみたいな、便利屋としての仕事ばかりだろう。

 何しろ、モンスターの駆除とかは、普通に他のギルドが席巻してるから、急に無名のギルドが出て来たところで、誰も依頼しないだろうから。

 とは言っても、それは必ずしも簡単って訳じゃない。

 考えてもみりゃ当然だろう。

 部屋の掃除が得意なヤツと苦手なヤツがいるように、却って家の掃除とか、依頼人のおばさんと会話するのが、バトルするより苦手なヤツだっているだろう。

 俺はステータスを見て、そういうのが得意そうで、一回教えればすぐに出来そうなメンバーを最初に整えた。


 そして、リューゾのおっさんとルイズの人徳か、はたまたよっぽど困ってたのか分からないが、割とすぐに最初の依頼は入って来た。

 二人が宣伝してくれてた効果ってのも、ある程度あったんだろう。

 つっても、俺も子供たちの中でコミュ力高そうな子たちに宣伝を頼んでたから、そっちの影響かもしれないけどな。


 やっぱり考えてた通り、最初に入って来た依頼は、近所のおばさんたちの家事手伝いの依頼だった。

 俺は、その依頼内容の程度によって依頼料、そして成功報酬なんかを決めた。

 勿論、ギルドの仲介手数料なんかも取るが、それらは全部オープンにする。

 冒険者ギルドに限らず、どこのギルドもその辺は不透明だったから、ぶっちゃけ従うべきだったのかもしれないが、知ったこっちゃねぇ。

 出る杭は打たれるとか良く言うが、打とうとして出てくるだろうヤツに、こっちとしても用事があるから、寧ろ大歓迎だし、変わったことは積極的にやっていこうかなーと思う。


 そこまで学が浸透してないせいか、その辺の意味が依頼人のおばさんたちには、上手く伝わっていなかったみたいだったから、子供たちの中で一番頭の良い子に、説明を託した。

 あ、勿論ひな型は渡したぞ?

 流石にそこまで酷くはなれなかったよ、俺。


 その結果、おばさんたちなりにだけど、理解はしてくれたっぽい。

 良き哉良き哉。

 とりあえず、初日は一切不満なんか起きずに終了した。


 それから半月くらい淡々と依頼をこなし、子供たちへの教育も施しつつ、俺も完璧な令嬢を目指して訓練に励んでいく内に、徐々に終焉の狼の知名度は上がっていくことになった。

 そんで、丁度2週間過ぎたところで、狩りや採集も出来ると聞いたと、依頼が舞い込んで来た。

 次の段階に進んで来たな、と思った俺は、早速受領した。


 狩りや採集になると、きちんと所属団体に申請して、冒険者として登録されていないと、出かけてはいけないことになっている。

 けれど、リーダー一人が冒険者として登録されていれば、他の人は冒険者でなくても良い、という決まりもあるらしい。

 特に街の外に出ても構わなそうな、適正のありそうなグループに割り振った子たちに関しては、全員確認次第すぐさま登録用紙を連合に送ったんだが、魔術で簡単一分で登録出来ます!みたいなこともないらしく、まだ返事は来ていなかったから

俺はリューゾとルイズに過重労働を強いて何とか乗り切った。


 ああ、そうそう。

 国所属のギルドへの依頼は、国の方にすることになっていて、連合所属のギルドへの依頼は、連合本部か、もしくは直接って形になっている。

 だから、終焉の狼は今まで、基本的に連合から回って来る依頼をリューゾが、直接回って来る依頼をルイズがやっていた形になる。

 国所属の方は、途中で国を介することで、そこでお金を取られていることになるが、連合に所属するのには、年会費を払えば良いらしく、結構そのまま依頼料が来るっぽい。

 逆に言えば、直接依頼を受けたからって、いちいち手数料とかは取られないっつー訳だ。

 ありがたいよな。


 ん、他ギルドの受付嬢は何でいるのかって?

 勿論、依頼と冒険者を繋ぐ為だ。

 依頼人は直接来ないけど、冒険者は来るじゃないか。

 オーケー?


 まぁ、そんなこんなで、何とか依頼をこなしながら、気付けば一ヶ月が過ぎた。

 ほら、何も特筆事項なかっただろ?


 ただ、今回ようやく特筆事項がやって来た。

 即ち…冒険者登録が完了通知が届いた上に、待望の討伐依頼が入って来たのである。


 これは、第二段階に突入か?

 第二とかってのは雰囲気で言ってるから、細かくは知らんが。


 俺はニヤける口角を隠しながら、改めて今来ている依頼と、メンバー表を眺めつつ、記念すべき第一回の本格的な依頼を、どう割り振るかについて考えた。

 まずは討伐すべきモンスターが、どんなヤツかも調べないといけないし、これだけの量の依頼が集まるようになって来たということは、簡単そうな依頼に関してはとうとうクエストボードみたいなのを設置して、自由に依頼、受領出来るような手段も増やして行っても良いかもしれない。


 けれどその為には、冒険者としてのレベル…ランクを設定しなければならない。

 そうじゃないと、うっかり怪我したり、最悪死んだりしかねない。

 モンスターがどのくらい強いかも知らないが、日本だって普通にクマとかに殺されることだってある。

 その辺りの安全対策は、絶対に必須だ。


 つまり…ようやく本格的に始動することになる。

 これは、大物を引きずり出して、終焉の狼の名を周囲に轟かせる為にも、精一杯行動しなければならないな。


 よーし、頑張るぞ!


 今日はまとめだけかって?

 うん。まとめ重要だろ。

 断じて疲れているからとかじゃない。

 ないったらない。

クロ「いえーい。セリフ一個も無かったぜー」

ウル「ご主人様の脳内うるさいですね」

クロ「たまたまなの!俺は基本復習回とか嫌いなの!」

ばあや「ユリアナ様。復習は非常に重要ですよ。何故ならば…」

クロ「すいませんもうなまいきいいませんゆるしてください」

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