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異世界×転生×etc.~気付けば木とか豚とか悪役令嬢とかだった人達の話~  作者: 獅象羊
第一章/木になった俺と、最果ての森の四種族
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03.テンプレ的遭遇

 さて。

 現在の俺のステータス画面がコレだ。


 [状態][道具][技芸][称号]


 【名前】名無し


 【種族】???


 【年齢】0歳


 【性別】無し


 【称号】未設定


 【戦闘】


 【生活】


 名前から性別までは、とりあえず普通の認識で良い事が分かった。

 …悪く言えば何の有益な情報も得られなかった、ということなんだが、そもそもこのような不可思議な知識の恩恵を受けられている時点で、僥倖(ぎょうこう)と思っておくべきなんだろうと考えられる為、文句は言わない。

 大体俺、今植物だからな。

 文句なんて言えないさ。ああ、言えないともさ。


 気を取り直して、続きだ。

 その次に来るのが「称号」である。

 これはまた心躍るタイトルだ。

 俺はそっと称号を開く。


 【称号】


<特定の条件を満たした者に与えられる呼び名。入手した称号であれば、いつでも任意で付け替えが可能。特定の称号は、設定しているだけで、ある程度能力値に補正が入る。ただし、自身が称号を所有していると認識し、かつ意識的に設定していない場合、恩恵は得られない。条件が難しい物程、補正値が高い場合が多い>


(これは…これは凄いぞ!まさにゲームじゃないか!)


 思わず興奮して叫び出しそうになった。

 俺が植物でなければ叫び出していた所であった。

 危ない所だ。

 四つの種族が覇権を争っている森の中で、間抜けにも叫ぶ男。

 蹂躙される未来しか見えて来ない。

 植物で良かった。いや、良くはないが。


(任意で付け替えられる、か。持ってる称号って何処で確認するんだ?)


 画面を戻し、改めて確認すると、ステータス画面の選択用アイコンに、称号というアイコンが存在した。

 恐らくは、これを開けば確認出来るのだろう。

 ただ、先に状態の確認を終えておきたい。

 俺はワクワクする心を抑えて戦闘のアイコンを開く。


 すると、突然画面に幾つもの文字が追加された。


 【称号】未設定


 【戦闘】


 〔総合〕1

 〔耐久力〕15/15

 〔瞬発力〕5/5

 〔体力〕6/6

 〔魔力〕20/20

 〔気力〕50/50


 〔力〕5

 〔知力〕10

 〔頑丈〕6

 〔速さ〕0

 〔技力〕無手・G

 〔術力〕無し


 【生活】


(なんか増えてるし…)


 他のページと異なっていて、戦闘の欄は隠れていたものが現れた、と解釈する方が無難な様子である。

 現に、称号までの欄には一切変化がない。

 下の方に伸びて、総合だのの行が増えているだけだ。

 念の為に、もう一度戦闘の欄を選択してみると、想像通り総合以下が消えた。

 俺は改めて戦闘の欄を選択し直すと、上から順番に確認していく。


(総合って何だ?1?低いのか高いのかすら分からないな…ランク?レベル?)


 総合、という言葉から想像がつかない。

 これは何を現しているのだろう。

 疑問に思いながら、総合を選択すると、右側に説明文が開いた。


 【総合(戦闘)】


<対象の人物の戦闘時における強さを数値として表した物。1が最低で、最高値は不明。分かりやすく言うと、RPGにおけるレベル>


 一体この文章を書いているのはどこの誰なのだろうか。

 何だか本当にメタっぽい事しか書かないな、コイツ。

 まぁ、分かりやすいから良いんだが。


(って事は、残りは大体分かるな)


 いや、でも「耐久力」「瞬発力」「体力」は違いが難しいか。

 一応見ておこう。


 【耐久力(戦闘)】


<どの程度のダメージで生命活動が停止するか、視覚化した数値。この数値が0、或いは、0に近くなると、死亡確率が上がる為、残量には注意が必要>


 【瞬発力(戦闘・生活共通)】


<瞬間的に身体を動かす為に使用する力を視覚化した数値。これが0になると、反射が上手く働かない、0に近くなると息切れする、動きが鈍る、などのデメリットが存在するが、回復は耐久力、体力に比べ早い>


 【体力(戦闘・生活共通)】


<全体的に身体を動かす為に使用する力を視覚化した数値。これが0になると、意識はあっても、身体がまったく動かせなくなる。0に近くなるにつれ、だるさが増していくことになる>


(……微妙な違いだな)


 要するに、「耐久力」がHPか。

 敵の攻撃力と、俺の防御力とで計算して出された数値分、ダメージとしてここから、引かれて行く。

 無くなったら死ぬ、と。

 普通のRPGなら、戦闘不能程度で済む事が多いんだが…まぁ、それは現実だからって事だろうか。

 ここがどんだけゲームじみていても。


 けど、死亡確率が上がるって事は、0になっても、戦闘不能、で済む可能性もあるって解釈で良いんだろうか……?

 いや…危険だな。

 ゲームなら死に覚えもアリだけど、今の俺の置かれた現状が分からん以上、そんな無茶は出来んな。

 うーむ…面倒だな。


 えーっと、残りが「瞬発力」と「体力」か。

 これは、俺がどんだけ動けるかを、分けて数値化してるって事、かな?

 すげーな、これ誰が数値化してるんだ?

 …まぁ、ともかくこれにも注意しとかないと、例え「耐久力」に余裕があったとしても、「体力」が尽きたせいで、敵陣真っただ中で動けなくなって、余裕で死亡…なんて残念過ぎるオチもあり得るって事だ。


 あとはあれか、折角大技仕掛けようと思ったのに、「瞬発力」切れてて、ミスするー、って可能性もあるのか。

 それは残念過ぎるな。気を付けよう。

 まぁ、俺動けないからあんま意味ない数値だけど。

 一応割り振られてるって事は、見てた方が良いんだろう。うん、多分。

 死にステじゃない事を祈ろう。

 何か真剣に考えた手前、死にステだったらイラつくしさ。うむ。


(で、次がなんだ?魔力と気力…MPとSPって所か)


 ざっと説明を読んでみるが、「魔力」と「気力」に関してはその通りのようだ。

 また、「力」はその名の通り俺の力、「知力」は魔力と言い換えても良いらしい感じの力で、「頑丈」は俺の防御力、「速さ」は見たまんま、俺の足の速さ。

 名前には幾つか違和感があるものの、そこまで突飛な説明でもなかった。


 で、残る「技力」と「術力」は、攻撃手段ごとの習熟度を表すらしい。

 技の方が武器、術の方が魔法を現すみたいだが、それはさっきも見た、(スキル)(スペル)の分け方と変わらない様子だった。

 そんで、Gは説明曰く、一番低いランクらしい。

 達人に近付く程、F、E……といった風に上がって行く。

 ランクが上がる程、難しかったり、高威力だったりする技が使える。

 これは胸が熱くなる。

 俺、習熟度稼ぎようもないんだがな。


(あー、くそ。結局どうしようもねぇじゃんかよ…)


 生活の欄まで一通り目を通してみたのだが、結局、何も進展していない。

 状況を打破出来るような能力を得ている事を期待してみたものの、やはりと言うかなんと言うか、俺にそんなチートはないらしい。

 ステータスを見る事が出来るだけで、十分チートだと、納得せざるを得ないのだろうか。

 そのような事を言われても、植物である以上、活かし様もないんだけどな。


<<ポリーン>>


<<新たな称号を得ました>>


 また、突拍子もない現象が起きた、と俺は溜息をついた。気になった。

 何もない、誰もいない所で、どうして女の人の声が聞こえてくるのだろうか。

 意味が分からないのだが、考えたところでどうしようもないのだという事も分かるのだし、スルーする事にした。


 今はそんな事よりも重要な事がある。

 新たな称号とは、一体なんだろうか。

 俺はワクワクしながら、称号欄を開いた。


【考える植物】new


<人間は考える葦。それでは、考える植物は人間足り得るのだろうか。

称号設定効果:無し。称号入手条件:凡そ一時間連続で考え事をする。>


 称号設定効果……無し。


 ……何だか馬鹿にされてる気がするのは、俺の気のせいだろうか。

 まぁ、俺所詮植物だからな。

 考え事してたって、人間になれる訳じゃねぇし。

 うーん……手に入れたものはすべて使ってみる主義だ。

 効果がないにしても、一応設定しておこうか。

 ポチッとな。


 【名前】名無し


 【種族】???


 【年齢】0歳


 【性別】無し


 【称号】考える植物


 ふぅ…設定したからと言って、何が起こる訳でもないんだろうが。

 このままでは、根腐れしてしまいそうだ。

 文字通りの意味で。

 出来れば、その前に何かが起こって欲しいものだ。


「○;□*ー!!#&%=ー!!」


 そうそう。

 ファンタジーのテンプレだよな。

 ヒロインが悪人に追いかけられてて、それを主人公が助けるっての。


「っ…」


 ……あれ。

 そんなふざけた事を考えていたら、たまたまだろうか。

 俺のすぐ近くに超絶美人が倒れ込んだ。


「@…¥|<□×……」


 サラサラの腰まである長い髪は、なんとも言えない不思議な黄緑色で、そこから覗く白っぽい耳は尖っている。

 その背中には身体に似合わない巨大な弓のようなもの。

 スッとつり上がった切れ長の青い瞳は涼やかで、町中を歩いていたら百発百中でスカウトされそうな美少女である。


 俺は思わず息をのむ。

 こんな美人、今まで一度だって見た事すらない。

 テレビにも雑誌にも、こんな美人はいなかったんじゃないのか?

 モデルの皆さん申し訳ありません。

 言い訳させてもらうと、美しさのベクトルが違うのだ。

 比べちゃいけないっつーか。


「■▼◆……ミーシャ」

「●◎×。◆■%$?」


 俺が美人さんに目を奪われていると、不協和音が耳に届いた。

 いや、俺耳ないけど、そこはスルーの方向で。

 気分だよ、気分。


 見るからに下種っぽい表情をした、二足歩行する馬……馬かよ!?

 ボロ布っぽい服を着ていることからも、一応彼らが動物ではなく、最低限の知能を有する者であることは理解する。

 けれど、その手にあるトゲトゲの鈍器やら、厭らしく舌舐めずりする様は、まるでただの獣そのものだ。

 いや、寧ろ人間的な厭らしさを混ぜ合わせた、最悪のハイブリットかもしれないと言える。

 進化するなら、もっと良いところ組み合わせろよ!!


 明らかに、美人さんを追って来た様子の二人組。

 ポンポンとトゲトゲの鈍器を弄びながら、一歩一歩美人さんに迫って行く。

 おい!それ犯罪ですから!!

 というか、何で馬面が悪役なんだよ!!

 普通そこはゴブリンとかオークだろ?

 何で馬!!


 などという俺の内心の悲鳴にも似た突っ込みが届く訳はなく。

 ボロボロの美人さんに、彼らを追い返すだけの力もなさそうだ。

 俺は、これから目の前で、とんだ凌辱場面を見せつけられるのだろうか。

 最悪だ。俺にそんな趣味はない。

 尊厳を殺すにせよ、リアルに殺すにせよ、トラウマものだ。


(やめてくれぇぇ…余所でやってくれぇぇぇ)


 泣きそうになりながら、この思いよ届けとばかりに念じてみる。

 まぁ、案の定馬面に通じる訳もないんだが。


「!!!」



 そう思っていたら、突如として美人さんが俺の方を振り向いた。

 え?いや、何だ急に。

 俺はビックリして後ろに何かあるのかと振り返る。

 しかし、後ろにはただ森が広がるのみで、何も見えない。

 もう一度美人さんを見ると、彼女は未だ俺を見つめている。

 ……え、真面目に俺のこと見てる?どうして??


 困惑する俺を余所に、馬面たちがハッスル気味に美人さんに向かって襲いかかって来る。

 避けることも出来ない俺は、ただただ空気に呑まれるのみだ。

 せめて身体が動けば、美人さんを庇うくらいはするのだろうけど。

 そう思っていたら、美人さんが俺の方へと最後の力を振り絞って寄って来た。

 何を思っているのだろうか。

 美人さんはその綺麗な腕を必死に俺の方へと伸ばしている。


 これらはほんの一瞬の出来事だ。

 俺がその行動の理由を考えている一瞬で、美人さんは襲われてしまう。

 まったく理由は分からないが、せめて俺は彼女の願いをくむべきだろう。

 そう思った俺は、可動域なんて殆どないが、せめて少しでも彼女の腕に近付いてやろうと、必死で全身に動くよう命令を飛ばした。


 フルフルと枝が揺れる。

 カサカサと葉が擦れる。


 美人さんは、驚いたように目を見開いて、それからキッとその端正な眉を吊り上げて、更に半身俺に近付く。

 そうして、幸いにしてなのか、馬面たちの攻撃が届くまさに一瞬前。

 彼女の手が俺に触れた。

 その直後、涼やかな声が、きちんと言葉として、俺の頭の中に響き渡った。


「(シンジュ様!私に力をお貸し下さいませ!)」


 何だ何だと混乱していると、辺りを閃光が包んだ。

 馬面の仕業ではなさそうで、彼らは慌てて目を庇っていた。

 俺に出来るようなことではないし、美人さんがやったのだとすぐに分かる。


 けれど、光が止んでも辺りに変化は一切ない。

 目眩ましするにしても、美人さんは俺に手を触れたまま、一歩も動いていない。

 馬面たちも、すぐに回復してしまうだろう。

 意味のない行動としか思えない。


 俺は混乱しつつも、どうにかして現状を切り抜けられないかと、あれやこれやと考え始めたのだが、答えが出るよりも早く、事態が好転していることに気付いた。


「■▼▲???」

「●●==??」


 馬面たちが、目を瞬いて辺りを見回し始めたのだ。

 まるで、目の前にいるはずの美人さんを見失ったかのように。

 不思議そうに視線を動かし、鼻をヒクつかせている。

 本当に目の前にいるというのに、馬面たちはしばらく話し合うと、やがて逃げられたのだと判断したらしく、足早に去って行った。


 ……え?

 目眩ましの魔法的なものだったのか?

 幻惑魔法とか??


 正直意味が分からないが、美人さんが俺に触ると突如発光。

 光が収まると、馬面たちが目の前にいるはずの美人さんを見失ったらしい様子から、俺は美人さんが何らかの魔法を発動させたものだと判断する。

 というか、それ以外に有り得ない。

 けど、何で今まで使わなかったのだろうか。


 俺に必死になって手を伸ばしていたことから推測出来る可能性としては、俺に触らないと発動出来ない……とか。

 いや、けど、どうして俺?

 俺じゃなくても良いんなら、他にも植物はたくさんある。

 何せここは森の中だ。


「(ありがとう、ございました)」


 またしても頭の中に声が響く。

 馬面がいなくなったことで、ホッとした表情を浮かべている美人さんが、同時に俺を見つめた。

 美人さんの言葉も、馬面の言葉も、俺には良く分からなかったはずだ。

 けれど、この声は、明らかに美人さんのものだ。

 テレパシー的なことだろうか。


「(まさか、このような所にシンジュ様がいらっしゃるとは思いもよりませんでした。ですが、シンジュ様がいらして下さったお陰で、私は九死に一生を得ました。平に感謝申し上げます)」


 倒れ伏したまま、べらぼうに丁寧な口調で感謝を口にする美人さん。

 顔色は悪いし、キズだらけだし、それどころじゃなくね!?


(いやいや、感謝とか良いから、まずは身体を休めた方が良いって!)


 反射的にそんなことを考えると、美人さんはビックリしたように目を丸くして、俺を見たまま数度瞬きをした。

 それから、嬉しそうに目を細めた。


「(これ程お優しいシンジュ様に巡り合えるだなんて、私は自分の運に感謝しなければなりませんね。…お心遣い、誠に痛み入ります。恐れ入りますが、私は、少々眠りにつかせて、頂きます……)」


 話が真っ直ぐに通じたことに驚く俺を尻目に、美人さんはそのまま、重たそうに瞼を落とし、それからすぐに寝息を立て始めた。

 腕は俺の身体に触れたままだ。

 いや、寝るのは良いんだけど、危険じゃないのか?

 さっきの馬面がまた来たりしないのか??


 俺は焦りながら、何か彼女を守る術はないものかと、意味がないことは分かりつつも、百科事典を開いて隅から隅まで読み直し始めた。

 まぁ、結局想像通り何の成果も得られず、一夜明けて美人さんが目を覚ますのを待つことになるんだが…。


 いや、しかし何となくだけど、大変な事態に巻き込まれた気がするのは、俺の気のせいだろうか。

 …まぁ、まずは彼女の話を聞いてみないと何とも判断出来ないのだから、焦らずゆっくり待てば良いんだろうけど。

 俺はそう思いつつ、やきもきしながら周囲の気配を探り続けるのだった。

馬面2人は、完璧に馬の頭が人間の体にくっついているような外見です。

腕は細めで、足はラグビーやアメフトでぶつかり合いをしていそうな、太い感じです。

愛嬌はきっとあります。

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