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異世界×転生×etc.~気付けば木とか豚とか悪役令嬢とかだった人達の話~  作者: 獅象羊
第二章/乙女ゲームの悪役令嬢になった俺は冒険者ギルドにテコ入れする
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11.ギルド再生計画第一歩

「は?おい、お前今なんつった?悪ぃが、もう一回言ってくれねぇか?」

「だから、ギルドの所属メンバーが少な過ぎるから、浮浪者拾って来ようぜ」

「はぁぁ!?」


 俺の提案に、おっさんことリューゾは目をむいて仰天した。

 まったく。

 良い年こいたおっさんが目を白黒させてても可愛くないぞ。


「い、幾ら私たちしかいないと言っても、浮浪者なんて、流石にちょっと…」


 なんだ、ルイズも反対か。

 躊躇いがちに言う姿は可愛いが、残念ながら受け容れてはやれない。

 何しろ、人材の確保は急務だ。

 他に選択肢はない。

 ってーか、俺は思いつかなかった。


「俺だって、別に浮浪者を片っ端から拾って来ようなんて言ってねーよ。ただ、才能のあるヤツだって中にはいるだろうし、早く人材を集めるには、手っ取り早いと思うんだよな」

「まぁ…確かに、所属してたギルドの方針について行けなくて止めて、そのまま浮浪者になったようなヤツもいるしなぁ…そういう奴らなら声かけても…」


 腕を組んで唸り始めるリューゾ。

 やっぱ、この辺の雰囲気さ、さっき行って来た余所のギルド「雪解け華」のマスターって呼ばれてたアレクセイの方が格好良いよな。

 つか、美しい。

 俺の変装の姿も、美しい系目指しても良いかもな。

 ビジュアル系バンド組んでそうな感じで。


「ご主人様」

「ん、どうしたウルシ?」

「今、妙なことを考えてらっしゃいますよね。おやめください、恥ずかしいので」

「何で分かるんだよ、お前!?」


 怖ぇよ、ウルシ!

 俺、頭の中でふざけたこと考えるのも禁止なの?

 ちょ、勘弁してくれよマジで。


 …考えてみれば、ウルシも浮浪者的な感じだったんだよな。

 うちの国の浮浪者が、みんなウルシレベルだったら、「終焉の狼」の質は、果てしなく良くなる気がする。

 それはそれで怖いな…。


「話を戻しますが、わたしはご主人様のご意見に賛成です。わたしは一人が好きでしたので、あまり知人は多くありませんが、親のない子は、狩りで日銭を稼いだりしていたようですので、腕に覚えはある程度あるかと存じます」


 ナイスなウルシ情報だ。

 ギルドは、毛皮とか肉とかの買い取りもしてるらしいから、それで日銭を稼いでる子供たちも多いってことだな。

 買い取りの相場もある程度下見して来たし、その辺で足下を見られるってこともないだろう。

 気にかかるとすれば…子供たち相手には、ギルドはどの程度の報酬を払ってあげてたかってことか。

 俺の外見だけは立派な冒険者っぽかったから、そう騙されてないと思うが、子供たちは分からんしな。


 あー、異世界で知識無双ってのも楽しそうだな。

 どうせ子供たち集めるんだったら、算数教えてやっても良いな。

 今みたいな書類管理を続けられたら、流石の俺も堪ったもんじゃねーし。

 俺がやった方がマシって、最悪の評価だぞ、このギルド。

 何しろ俺、良く同僚の教師から叱られてたからな。

 ちゃんと報告書作れーとか、指導要領がおかしいーとか。

 あはは、懐かしいなぁ。


「んー、まぁ、仮に兄ちゃんの言う通りにしたとして、そこからどうする?そんな浮浪者相手に依頼して来るようなヒトは、そういないと思うぞ」

「ああ、リューゾの疑問はもっともだな」


 前にも軽く触れたが、うちの国…というか、世界的に見て、ギルドは一般的に指名制で、依頼人がこのギルド、或いはこの人にお願いしたい、と考えてギルドに依頼を寄せる。

 ギルドは、それらの意見と妥当性のバランスを見て、直接個人に指示をする。


 つまりだ、「終焉の狼」が浮浪者たちを雇ったって噂が回れば、信頼性を著しく欠いて、仕事は結果的に来なくなる、ということになる。

 ってか、確実に回るし、そうなるだろう。


 それでも俺はいけると踏んでいる。

 その理由は、非常に簡単だ。

 俺が思いつくレベルだしな。


「答える前に、一つ聞くが…ルイズ」

「ん?私に質問?なぁに?」


 軽く首を傾げると、ルイズの赤いクセ毛が揺れる。

 うーん、可愛い。

 なんて話していれば、話が進まないから我慢しよう。

 …何で睨むんだ、ウルシ。


「狩りとか採集の仕事って、結構頼まれるだろ?」

「ええ、そうね。私一人じゃ手が回らないから、大体断っちゃってるけど」


 それが何?と言って目を瞬くルイズ。

 うん、これは勝ったな。

 俺は一人でほくそ笑む。

 どうして誰もやろうと思わなかったのか、不思議なくらいだ。


「浮浪者でも、ちょっと教えれば狩りと採集くらいなら、討伐や護衛と比べれば、容易に覚えられるはずだ。難しいところに手を出す必要はない。本当に初歩的なもので良いんだ。そんな依頼をかき集めれば、仕事には困らないぞ」


 リューゾとルイズは、不思議そうに目を合わせる。

 俺の言いたいことが理解出来ないらしい。

 …え、何で?簡単なこと言ってるよな、俺?


「だけど、前にも言ったけど、そこまで報酬は良くないのよ?それよりも、もっと冒険者らしい仕事した方が良いんじゃないのかしら?」

「だよなぁ。腕の立ちそうなヤツを集めて、訓練してやった方が良いんじゃないのか?」


 …もしかして、計算出来ないのか、この二人?

 いやいや、そんなまさか。

 まさ……まさかってことも、あるか?

 ちょっと待てよー。

 俺、数学教師じゃないんだけど。

 計算教えるのとか超面倒なんだけど。


「お前ら、話聞いてた?討伐とか護衛は難易度も高い。ってことはだ、すげー信頼されてる奴らにしか依頼は回って来ないだろ」

「ん?んー…そうだなぁ、確かに」

「ってことは、報酬もいいが、絶対数も少ない。それより、薄利多売…安くても、たくさん依頼を受けられる可能性のある方から始めた方が割りが良いじゃないか」


 待って待って。

 二人とも首傾げてるけど、分かりにくかったのか。

 俺は思わずウルシを見る。

 ウルシは…こっくりと深く頷いてくれている。

 そうか、分かってくれたか。

 流石はウルシだ。

 元浮浪児だなんて思えない程、才能に溢れた女。


「1度に5万稼げる仕事と、1度に5千しか稼げない仕事があるとしましょう」


 ウルシが、身振り手振りを交えて説明を代わってくれる。

 おお、これはたとえ話。

 これなら二人にも伝わるか。

 頼むぞ、ウルシ。俺は役に立たない。


「どちらの方がお金を手に入れられますか?」

「そりゃ当然5万だろ?」

「流石の私たちだって、それくらい分かるよぉ」


 苦笑気味にルイズが言うが、そりゃそうだよ。

 それすら分かってなかったら、俺泣くよ。

 ギルドの立て直しとか不可能だよ。

 …こりゃ、頭脳労働者に育ってくれそうな人を最初に探した方が良いかもなぁ。


「では、5万稼げる仕事は、月に1回しかなく、5千しか稼げない仕事は、月に…そうですね、10回あったとしましょう。どちらがお金を手に入れられます?」

「ん?うーん…どっちだ?5万のが大きいぞ」

「えぇ?だって、10回も働けば、5千リリーの方が多いんじゃない?」


 ちょっと待ってぇぇ!!


 え、お前らマジか。

 掛け算知らないのか。

 いや、掛け算は分からなくて良いや。

 その辺の金銭感覚もないのか?

 買い物とかどうしてたんだよ!

 …何となくでやってそうだな、怖ぇ。


 ウルシの顔も、呆れたように眉間にしわが寄っている。

 というか、それよりウルシはこの短期間で、一体どんだけ賢くなってるんだ。

 ばあやの教育の賜物ってヤツか。

 ばあや、どんだけ優秀なんだよ。

 その教育を吸収しきってるウルシも超優秀だけどさ。


「…ご主人様」

「…5万を1回と、5千を10回なら、稼げる額は一緒だよ、二人とも」


「えっ」

「えっ」


 溜息混じりに教えてやると、二人は目を丸くした。

 あ、これマジなヤツだ。

 道理でギルドがボロボロだと思ったよ。

 計算の一つも出来なきゃ、仕事がコンスタントに入って来ていても、修繕計画とか、上手く立てたり実行したり出来るはずがない。

 こんな状態でも、一応ギルドをキープして来たんなら、俺、そう責任感じて委縮する必要ないかもしんない。

 これより下って、多分ないだろ?


「そんで、難易度とか、依頼してもらえる数まで加味すると、5万を狙うよりも、5千を狙った方が確実に稼げるんだよ」

「???」

「む、難しいもんだね…」


 ここはまた難しくないぞ、ルイズ!

 おっさんも諦めたような顔をするんじゃありませんっ。

 ちょっと、俺頭良くなったような気分になるから止めて欲しい。

 調子に乗っちゃうだろ、俺。


「まぁ勿論、5万の仕事が回って来るんなら、それを逃す手はないから、集めた浮浪者の中に、良さそうなヤツがいれば、リューゾに回すからさ、鍛えてやってくれよ。そういうのは得意だよな?」

「ああ!それくらいならお安い御用だ!」


 急にリューゾの顔が明るくなる。

 まったく可愛くないんでやめて頂きたい。

 じーさんに足のかかったおっさんの晴れ晴れとした顔なんて、誰得なんだ。

 …あれか、枯れ専女子にお得か。

 残念ながら、俺はそっちの道は開拓してないので、賛同出来そうにないが。


「私はどうしたら良い?」

「勿論ルイズには、主に狩りと採集を教えてもらう。それで、俺とウルシは人集めに回る。それで良いな?」


 リューゾとルイズは、顔を見合わせてから深く頷く。


「何だか良く分からんが…やっぱり、あんたに頼んで正解だったような気がする」

「私も。…ありがとう、ブラックくん」

「そういうのは成功してからにしてくれ…」


 能天気な俺でも、やべーなって思うぞ。

 この二人、騙されたりしないだろうな?

 てか、既に騙された経験ありそうだなぁ、このギルドの荒れっぷり見ると。


「ただまぁ…友達に預かってる大切なギルドなんだろ?俺の指示に従ってもらえれば、今よりは多少マシにはなるだろうから…頑張ってくれよ」

「ああ!」

「ええ、勿論よ!」


 どの辺を聞いてやる気になったんだか分からないが、二人はやる気満々になってくれたようだ。

 良き哉、良き哉。

 ここは俺も一肌脱いで、仕事に行くか。

 …冷静に考えると、その発想怖いな。

 仕事嫌いの俺が、仕事に喜んで行くって。


 ……ま、これは趣味みたいなもんだから良いか!


「じゃあ、俺らは早速人集めに回るから…どうするかな。ウルシ、掃除はもう良さそうか?」

「大体は。ただ、手つかずの場所も多々ございますが、人が集まり次第、手伝ってもらってやった方が、早いかと存じます」

「そうか。お疲れさんだったな、もうひと頑張り頼むぞ」

「……当然です」


 確かに、ウルシの言う通り、割れた窓も完璧ではないものの、木の板を打ち付けて補修したり、汚かった壁や床も、ある程度綺麗に磨かれている。

 最低限、人を入れるのには問題なさそうだ。

 二階とか、人の入れない部屋はまだありそうだが、十分だ。


「なら、リューゾとルイズは、いつも仕事頼んでくれる人たちに当たりをつけといてくれるか?」

「当たり?」

「そうそう。うーん…一週間後で良いか。そのくらいから、人員を増やして、本格的に狩りや採集の依頼を引き受けるから、じゃんじゃん仕事回してくれって、教えて回って欲しいんだよ」

「そうか、分かった」

「うん」


 人が集まる前に、そうして触れ回って大丈夫かって、聞いてこない辺りも不安になるな、この二人…。

 ま、悩んでても仕方ねぇし、怯えて縮こまってても意味がねぇ。

 ここはひとつ、ムリでも無茶でも、インパクトを与えた方が良さそうだからな。

 どんくらい仕事が入って来るかも、聞き込みで大体予想はついてるし…。


「ご主人様。仕事量の大体の予測は付いておられるのですか?そうだとして、何人ほど集めればよろしいのでしょうか?」


 ウルシ…どうしてこう優秀なんだ、お前は。

 本当に空恐ろしい子だよ。

 中身おばさんとかじゃないだろうな。

 …あっ、俺は中身お兄さんだけど。


「片っ端から行くぞ。慈善事業でもないし、最初から食わせてやれないかもしれないって話はするからな。雇われる側に関しては、多分問題ないだろ。仕事量に関しては、最初は流石にそこまで多くは入らないはずだ。うちの国、結構保守的な人が多いみたいだからな」


 ウルシはこくりと頷く。

 よしよし、聞きわけが良い子は好きだぞ。

 つっても、俺の意見で駄目そうだったら止めて欲しいんだけどな。


「よし、とりあえず行動開始だ!」


 そして俺達は、一旦ギルドを後にした。

 さーて、今日が終わる前に、サクッと終わらせないとな。

 またばあやに叱られたら堪らないし!

ウル「1+1は?」

リュ「5だ!」

ルイ「何でよ。2でしょ?」


ウル「1×1は?」

リュ「2か!」

ルイ「かける…えーっと、2ね!」


クロ「なんっでだよ!!」

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