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異世界×転生×etc.~気付けば木とか豚とか悪役令嬢とかだった人達の話~  作者: 獅象羊
第二章/乙女ゲームの悪役令嬢になった俺は冒険者ギルドにテコ入れする
29/91

01.俺が乙女ゲームの悪役令嬢らしい。

第二章スタートです。

ウザい感じの主人公ですので、ご注意ください。

 木になった男は、世界の管理人を名乗る少女に指示された、森を平和に導く、という工程を、図らずも達成した。

 それは、ある意味偶然のことだった。

 世界の敵と思しき男の、些細な気まぐれによって、四種族は一時的にでも、休戦という道を選んだのだ。


 しかし、現実は結果がすべて。

 努力しようが、結果が得られなければ滅ぶのみであったその道を、偶然だろうが逸らすことに成功したのは、彼がいたからだと言っても、良いのだろう。

 何故ならば、世界の敵は、彼がいたからこそ、一時的であれ、その矛を治めることに決めたのだから。


 …さて。

 ひとまず、彼の物語はこれで終わりだ。

 続きが気になると僕に言われても仕方がない。

 早く原稿をまとめろと言っても、書き上げて来ないあの人が悪いのだ。


 それでは、怪しげなダンジョンへの入り口が生まれ、その先が気になるところではあるが、別の人物の物語に移ろうか。


 次の主人公は、気が付くと豪華絢爛な建物の中に横になっていた。

 どうやら赤ん坊になっているのだと、彼はすぐに気付いた。

 そして、現状が自分の読んで来たライトノベルにおける、テンプレートな展開なのだと、すぐに理解した。


 木になった男とは違い、彼は現状をすぐに受け容れた。

 寧ろ彼は、楽しそうだとさえ思っていた。


 さぁ、一人の物語の幕が開く。

 これは、ある一人の自分の気持ちに正直な男が歩む、二足の草鞋な日々の物語。


**********



 あー、あー。

 本日は晴天なり、本日は晴天なりー。

 うむ、コホン。


 さてさて、どうやら俺の思考はクリアなようだ。

 頭がおかしいと周囲からは良く言われていたが、至って問題ない。

 普段通りの俺。プライスレス。


 一応、現状を振り返ってみようか。

 俺は過去は振り返らない主義なんだが、偶には振り返ってみても良いだろう。

 こんな訳の分からない経験、そうないんだし、オールオッケーだ。


 俺の名前は由利(ゆり)黒斗(くろと)

 28歳独身。彼女なし。

 泣く子も黙る聖職者…言い換えれば教師だ。

 お前みたいなバカが教師になれんのかと、良くバカにされていたが、あれだよ。

 人間、情熱さえありゃ何にでもなれるもんだ。

 ……俺に情熱なんてもんはなかったがな。


 あれだよ。親のコネだよ!

 資格?残念、それはちゃんと取りましたー。

 親のコネだって、就職先の斡旋は出来ても、資格を与えることは出来なかったのである。

 まぁ、それは良かったんだけどな。


 ん、話が長いか?

 そう言えば、友人にも良く言われたな。

 無視して話し続けてやってたけど。

 ははは。


 さてさて。

 そんな俺、花の28歳は、その日もその日とて真面目ーに学校に行った。

 趣味のゲームが良いところだったもんで、血の涙をにじませながらだったが、頑張って学校に行った。

 勿論、携帯出来るハードだから、カバンに忍ばせて。

 で、まぁ普通にいつも通りの日だった。

 テキトーに…おっと、真面目に授業して、真面目に採点して。

 あとは顧問してる部活に顔を覗かせて、解散させるか。

 ってなノリだった訳だが、気付けば知らない場所にいた。


 辺りを見渡せば、豪華絢爛な調度品。

 俺の寝てるベッドには、天蓋まで付いていた。

 まさか、普通の教師がそんな豪華な家に住める訳がない。

 当然、俺の家ではない訳だ。


 そんな金持ちの女を引っかけた記憶はないし、例え引っかけてたところで、学校から俺に気付かせずに拉致って致せるレベルの女が、俺の周囲にいた訳がない。

 それならそれで、逆玉じゃねーか、ヒャッホー!ってな話で終わるが、まぁ有り得ないよな、普通に考えて。


 そんで、自分の身体を見てみて笑った。

 赤ん坊の身体になってるんだもんな、笑うしかねぇよ。

 で、やることもねーし、笑い続けてたら、若い女の子がやって来た。

 急に赤ん坊が笑いだしたもんで、ビックリしたんだろう。


 その女の子は、なんていうか、所謂メイド服を着ていた。

 ミニスカートじゃなくて、クラシカルな感じで少々残念だったが、コルセットのお陰で、溢れんばかりの巨乳が強調されてて、とっても眼福だった。

 地味な感じの顔をしてはいるが、これは磨けば光るタイプと見た。

 これが新しい母親だろうか。

 なら俺、母さんのこと劇的な感じにビフォーでアフターにしてやろう。

 きっとすげーモテるぞ!


 呑気にそんなことを思って笑い続けていたら、オロオロしてた女の子は、俺を置いて部屋の外に出て行って、すぐに別の女の人を連れて来た。


 今度現れた女の人は、キリッとした紺色がかった黒髪に、赤い目が特徴的な迫力系美人だった。

 髪の毛はアップになっていて、胸元はガッパリ空いた真っ赤なドレス。

 やべぇ、色っぽい。

 見つめられてドギマギしていると、女の人は俺を見て微笑んだ。

 優しく頭を撫でて、何事かを話してくれる。


 うん。雰囲気的に、こっちが母さんだな!

 俺は感覚的にそう判断すると、思い切り笑い返してやった。

 ふふふん。

 どうだ、可愛かろう。俺、可愛かろう。

 抱っこしても良いのよ?


 なんておっぱいの感触を味わおうと思ったのが駄目だったのだろうか。

 母さんはいなくなってしまった。

 残されたのはおっぱいメイドちゃん。

 …メイドちゃんでも良いよ!俺のこと抱っこしない!?


 という、その時俺が思ったことはさておくか。


 まぁ、そんなこんなで俺は理由は分からんが、生まれ変わったのだと理解した。

 多分ラノベ的な感じで、二度目の人生を迎えたんだろう。

 雰囲気的に、ファンタジー世界の可能性が高い。

 しかも、俺の知ってる世界ならなおさら楽しい。

 魔法とかで、俺TUEEEE!出来るかもしれないんだ。


 俺はワクワクしたさ。

 日本に残してしまったんだろう妹のこととかは心配ではあるが、まぁあいつのことだから、元気にしてるだろうし。

 どうでも良いぜ!

 見るからに金持ちっぽい家だし、これから先の人生明るいな!


 なーんて思ってたのが、5年前だ。


 そんで現在、俺は5歳になった訳だが…想像を超えたポジションだったんで、流石の俺もちょっと混乱してるんだな、これが。


 だから、過去を振り返ってみようと思った訳だ。


 最初、言葉が違うんだか、サッパリ意味が分かって無かった俺。

 だから、現状については想像するしかなかった訳だ。

 何年も経過すれば、段々状況は分かって来たが…俺の世界に、他の人は母親と、巨乳メイドちゃんと、ばあやしかいなかった。

 確認する術なくね?

 家からも出してもらえないし、ほぼ軽い幽閉状態だったよね。

 あれ、これもしかして俺人生詰んでね?って何回思ったことか。

 まぁ、家広いからどうでも良かったけどさ。


 俺はまぁ、ほぼばあやと巨乳メイドちゃんに育てられた。

 それは金持ちの家にとっては普通なんかもしれないが、俺としては、その教育の内容についてちょいと物申したいことがあった。


 5歳未満のお子様に対して、国語、英語、算数、社会、音楽、剣術、魔術、あと何だ?マナー?…お稽古多過ぎだろぉぉ!!

 俺、別に勉強好きだからって教師になった訳じゃないですから!

 何でこんな厳しいんだよ、意味分かんねぇ!


 …はぁはぁ。


 俺、そんな5年間過ごしてました。

 それも過ぎたことだから、今現在はもうすっかり慣れてるし、良いよ。

 中身大人だし、俺我慢することにしたよ。

 魔術使えるようになっただけで十分嬉しいしな。

 レッツポジティブシンキング!


 でもさ、これはなくね?

 とうとう命名式って言う、その家の子供として認められる儀式に臨むことになったんだけどさ。


 ああ、命名式ってのは、この国の独特の儀式なんだと。

 何故だか、5歳まで生きられない子供が多いから、貴族の中では、5歳に達するまでは名前を付けないで、あと余所の家にも公開しないで育てるらしい。

 その子供を、ようやく子供として認める儀式が、命名式だ。

 つまり俺、ここでようやく存在を認められる訳だ。

 ヒャッホー。


 有頂天になってた、昨日までの俺。

 っていうか、今さっきまでそのテンションのままだった。

 のが、地の底まで落とされてしまった。


「い、今何と仰いました、お母様?」


 すっかり貴族的に強制された俺の口調。

 完璧だろ、なんて普段なら自慢するんだけど。

 まぁそれどころじゃないよな。


 震えながら尋ねると、母さんは、端正な顔を歪ませながら繰り返した。


「私の愛しい息子よ。神官の予言により、我がマルトゥオーゾ家の嫡男が、18歳になる時に、何者かによってその命を奪われると伝えられました…と言いました」


 聞き間違えじゃなかった!!

 母さん……俺……俺……マルトゥオーゾ家の息子だったの!?


 え、そこじゃない?

 いやいや、問題はそこだよ、そこ!


 知らないヤツには教えてやろう。

 マルトゥオーゾ家と言えば、知る人ぞ知る、ファンタジー恋愛アドベンチャーゲーム『Princess of Lilac~花冠を君に~』に登場する悪役令嬢の家名なんだよ!

 あれ俺やった。超やった。

 前世の俺は、乙女ゲーム大好きだったが、その中でも特に好きだったヤツだ。


 何で俺が乙女ゲーム好きかと言えば、何しろヒロイン可愛いからだよ!

 男?どうでも良いんだよ、そんなことは。

 見ろ、あの見るからに男慣れしてない感じ!

 なのに積極的に男を助けようとする感じ!

 偶にしかアップにならない顔!可愛い!男どいてろ!!


 はぁはぁ。


 俺の乙女ゲームへの情熱は置いておこう。

 話が進まなくなる。

 あっ、俺ギャルゲーも好きだから。一応言っとくけど。


 そんで、そのゲームは良くある感じのストーリーだった。

 主人公の女の子が、特別な魔力に目覚めて、本来貴族にしか入れない学校に入学して、王子様とか攻略対象者…ああ、主人公の女の子が恋愛出来る相手な…たちと出会って、何のかんのあって結ばれるっていう。


 何を隠そう、俺がこの世界にやって来た当日までやってたゲームだ。

 主要キャラクターのルートを攻略し終えて、残ったのが悪役令嬢との友情ルートとあとは真相ルートのみって感じなところまでやってた。


 もしかすると、だからこの世界にやって来たのだろうか。

 マジでか!

 主人公の女の子をイジメ抜く…というか、貴族としての所作が全然出来てなくてワタワタしてる彼女を見てイライラして、でも放っておけなくて厭味っぽく注意してあげて助けてくれるツンデレ美少女、悪役令嬢ちゃんの家に!?

 嬉しすぎるぞ、それ。

 18歳で死ぬ?別に良いよ、彼女たちのワイワイする様を見られれば!


 俺は興奮気味に母さんを見つめ返す。

 母さんは、何を勘違いしたのか、哀しげに俺の肩を優しく叩いた。


「心配しなくとも大丈夫ですよ。貴方は内輪ではマルトゥオーゾ家の息子として登録されますが、表向き、娘として公表しますから、これで貴方は死ぬ心配はなくなるのです」

「ん?」


 はいはい。

 訳が分からない流れがやって来たんだよ、ここで。

 冷静に考えてみれば、近くに悪役令嬢ちゃんいないし。

 妹も姉もいないし。

 俺一人だし。

 ただ家名が被ってるだけにしては、習ってきた国名とかゲームのままだったし。

 時代がズレてる訳じゃないことは、歴史で勉強済みだ。


 そこに、母さんの意味不明な説明。

 ちょ、ま。

 もしかしなくても、俺が悪役令嬢ちゃんやるの!?

 下に余計なもの付いてるのに!?


「貴方は今日から、ユリアナ・マルトゥオーゾという女の子です。きちんとばあやがやり方を教えてくれますから、安心なさいね」


 ニッコリと微笑む母さん。

 なぁなぁ、俺が子供だから何も分かってないと思ってない?

 ねぇ、思ってない?


 おいいい!

 ユリアナたんいないんじゃねーかよぉ!!

 俺の最萌えキャラ、嫁と言っても過言ではないユリアナたんが!

 俺!?


 はいはいはいはい!

 想像を超えたポジションだったろ。

 はー、マジやる気出ないわー。


 ……とは言えだ。


 今までこうして振り返ってみて思ったが、それはそれで美味しくね?

 実家は超金持ちマルトゥオーゾ家。

 ユリアナになってるってことは、魔力もすげーだろ?

 主人公のリラちゃんには会えるだろ?


 うおおお、人生チョロいぜ!

 憧れのファンタジー世界。

 才能も家柄も良し、ついでに顔も良い!

 完っ璧じゃねぇか!


 よし、俺はやったるぞ母さん。

 この世界で俺…好き勝手に生きるんでヨロシク!


 あっ、ちゃんと貴族として責任は果たすんで安心してね。

木「はい、バトンタッチ」

黒斗「うえーい!今度は俺が主人公か。滾るぜぇ!」

木「…この子大丈夫かな。心配だな。だからって俺が何かしたところでどうしようもないんだが、いや、それにしても…ブツブツ」

黒斗「あっはっは。任せとけ!」

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