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11 謎の手紙

「沖の方に岩山が見えるでしょう。たまにあの辺からシーサーペントが顔を出しているのを見かけます。あと村長さんの息子が襲われたのも、あの辺です」


 パスカルは港に立ち、海を見つめる。

 その視線をたどれば、確かに岩山が切り立つようにそびえていた。


「すると、シーサーペントは岩山の近くにいるってことだな」


「はい。とはいえ、別の場所で襲われた船もあります。この一帯は奴の縄張りになっているのでしょうね」


「もっと沖の方で縄張りを作って魚だけ食べてれば、私たちに狩られることもなかったのにねぇ……」


 ハルカは岩山を見つめながら言う。

 全くその通りだと俺も思う。

 そうすれば、この村に犠牲者も出なかったのだ。

 シーサーペントがここにとどまっているのは、もしかしたら人間の味を覚えたからかもしれない。


「さっそくシーサーペント狩り……と行きたいところだが、もう日が暮れそうだな」


 水平線の向こうに太陽が沈みつつある。

 空も海面も赤く染まっていた。


「今から船を出すのは危険です。明日にしましょう。何ヶ月も使っていない船ですから、点検もしたいですし……準備ができたら明日の朝、僕が宿まで迎えに行きますよ」


「分かった。ところで、この村の宿ってどこだ?」


「ああ、それなら――」


 パスカルにこの村唯一の宿屋の場所を聞いた俺たちは、そこに行き部屋を取る。


「ふぅ……やっと荷物を下ろせる」


 俺はずっと背中にリュックサックを背負ったままだった。

 勇者だからリュックサックなど苦にならないだろうと思ったら大間違いである。

 重さが大したことなくても、邪魔なものは邪魔なのだ。


「お疲れ様。肩揉んであげる」


「おお、気が利くな。じゃあ頼むぜ」


 ハルカの肩もみは、相変わらず素晴らしい。

 酒造りのときは、よくこうして揉んでもらったものだ。


「よし、ありがとう。次は俺がハルカを揉んでやるよ」


「え、別に私は疲れてないわよ?」


「いいから、いいから。ほら」


 俺はハルカをひょいと持ち上げ、ベッドに座らせる。

 その後ろに俺も座り、肩をもみもみと揉みほぐす。


「んー……気持ちいい」


 何だかんだ言いながら、ハルカも結構肩が凝っている。

 小柄なわりに胸が大きいせいだろうか。

 ならば元凶である胸も揉んでやらないと。


「は、ちょ、ツカサ! どこ触ってるのよ!」


「いや、胸も凝ってるかなと思ってさ」


「胸が凝るってどういう状況よ!」


「でも、ほら。こことか固くなってきてるぜ? 揉みほぐして柔らかくしないとな」


「んんっ……もうツカサのばか……」


 そして俺はハルカをベッドに押し倒し、ハルカを気持ちよくするため色々と頑張った。

 頑張っている最中、部屋のドアがノックされた。


「ちっ……今いいところなのに」


「はぁ……はぁ……ツカサ、やめないでよぉ……」


「バカ、人が来たんだよ。お前はとりあえず布団被っておけ」


 俺はハルカに布団をかけ、頭まですっぽり隠す。

 そして慌てて服を着てから、ドア越しにノックした人物と会話する。


「……何でございましょう?」


「あの、宿の者ですが……他のお客様から苦情が来ているので、もう少し小さい声でお願いします……」


「あ、はい」


 怒られてしまった。


「ハルカ。お前の声が大きいから苦情が来たじゃないか」


「そ、そんなこと言われても……ツカサのせいでしょ!」


 布団から顔を出したハルカは、顔を茹でダコみたいに真っ赤にしていた。

 他の部屋まで自分の声が聞こえていたと知り、羞恥心で死にそうになっているのだろう。

 可愛いなぁ。


「やめないでって懇願してたのは誰だよ」


「それは……私だけど」


「さっきの続きするけど、もう声を出しちゃ駄目だぞ?」


「そんなの無理よ! あんなことされて声が出ないわけないじゃないの……!」


「そうか。じゃあ、もう終わりにするか」


「ダメ! もっとしてほしい……」


「ハルカがそんなに言うなら仕方ない。けど、声出すなよ?」


「だから、無理だってば……」


「はあ……さっきからワガママばっかり言って。ハルカは俺にどうして欲しいんだ?」


「うぅ……ツカサのいじわる!」


 ハルカは涙目になり、俺をぽかぽか叩いてきた。

 マジ可愛い。

 怒られてもいいから、このまま滅茶苦茶にしてやりたい。

 なんて俺が思っていると、まだ廊下から物音がしてきた。

 今度は誰だろうか。

 まったく、これからってときに……。


 もういい。無視して始めよう。

 始めてしまえば、きっと声に驚いていなくなるはずだ。


 そう俺が考えていると。

 ドアと床の隙間から、紙切れのようなものが差し込まれてきた。


「……?」


 流石に不思議に思った俺は、ベッドを離れドアを開ける。

 が、そこには誰もいなかった。

 紙切れを差し込んだ主は足が速いようだ。

 仕方がないので、紙切れを拾ってドアを閉める。


「ツカサぁ……焦らさないでよぉ……」


「待て待て。夜はこれからだ。それより、これは手紙か……? なになに?」


 シーサーペントを狩るな。恐ろしい災いが降りかかるぞ――。

 紙切れにはそう書かれてあった。

 はて。

 魔王より恐ろしい災いがあるのだろうか。

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