episode:29 人魚姫の歌
今回はほんのり恋愛っぽい要素があります。
…その日は、静かな海だった。
episode:29 人魚姫の歌
私は、あの後皆さんと別れいつもと変わらずに食事をしてシャワーを浴び、甲板を出て夜の海にいた。
…海は好きだ。昔、お母さんの実家が海に近くて来る度に、いつも洋服のままで入ろうとしてお母さんに止められたな……。もう、あれから大分発つんだ…。
私は、ふとお母さんが昔教えてくれた歌を思い出して歌った…。
あおい あおい うみのなか わたしはそこで うまれました やさしい ひとやさかなたちに かこまれて しあわせにくらしました あるひのたんじょうび うみから でると ふねのうえから すてきなひとが いました そのひとは そらを みつめて いました あおい あおい うみのなか わたしは こいを しました
「なんて歌なんだ?」
「きゃ……!ブラウさん…!」
突然、ブラウさんが私に声を掛け、私は驚きました。…そうだ…ブラウさんは少し離れた場所にいたんだ…私は聞かれた事を恥ずかしくなって顔が熱くなりました。
「えぇ…と…その…」
「………?聞かれたら不味かったのか?」
私は首を横に振り、
「…その…小さい頃に…お母さんが教えてくれた歌で…別に不味かった訳じゃないんです。ただ、聞かれたのが恥ずかしくて…」
私は顔を俯かせてしまいました。ブラウさんは私の頭に手を置くと、不器用ながら頭を撫でくれました。
「…思い出したくなかったのか。」
「…違うんです。あの、さっき歌ったのは、人魚姫の歌って言うんです…。」
「そうか、じゃあもう歌わないのか?」
そう言われると、どうすればいいのか分からずに頭が混乱してしまいました。私は、
「……続きが……分からなくて……」
嘘、本当は知っています。だけど、また歌うのは何だか気恥ずかしいのです。……特に彼の前では…
「そうか」
そう言うと頭を撫でるのをやめて、ちょっと残念に思っていると私の手を繋いで引っ張り、
「なら、もう帰るぞ。そろそろ寝ないと支障がでる。」
そう、言って私の手で繋いだまま艦内に入ろうとしてくれ、何だか嬉しくなり私は少し強く握り、中に入ろうとした…ところ…
ー…警告…警告…戦艦に敵が接近…乗員直ちに準備せよ…繰り返す…ー
とアナウンスが流れました…何だか少しムッとしてしまいましたが、ブラウさんがそのまま私の手を繋いで格納庫へ連れて行ってくれました。
…少し嬉しいと思い、直ぐに不謹慎な事を思った私は明日自分に厳しくいこうと思いました。
…良いところに敵が来て、シズクさん珍しく少し怒りました。では次回




