episode:0,5 私の心
今回は少し短めです。
…これはほんの数日前のお話…
episode:0,5 私の心
私の所に青宮様が訪ねてこられた次の日、両親と共に表向きは遠いところに転校する事を学園に伝え、私が『無国籍』になるせめてもの数日は両親といるようにした。紅条様もよく来てくださり、美味しいお菓子やお茶を持って来てくださいました。ある日私はお母さんと一緒にリビングでケーキを食べながら、話をしていました。だからかもしれないけど、私は思わず不安に思っていることをお母さんに話した。
自分がちゃんと出来るのか、それから…
「なんで青宮様は信じてくれなかったんでしょうか」
「雫…?」
「私…私達、婚約してたのに…」
つい、ポロッと零れてしまいました。そしてそれは言葉だけじゃなく、涙も溢れてきて遂には泣いてしまった。次の瞬間、私はお母さんの腕の中にいた。
「う…ぅえ…ふ…うぅ…」
私の背中をお母さんが撫でてくれた。たまらず、私はお母さんに抱きついた。
「雫、雫ちゃん…それでも、私とお父さんは貴方のことを信じてるのよ。」
私は抱きついたまま、お母さんの声を聞いた。
「誰よりも優しい貴方がそんな事をするはずがない。いつも来てくれる紅条様も、きっとお友達も…。だからね、アナタは何にも悪くないのよ。」
「だけどいつかアナタがまた、私達の他に大切な人が出来たら今は無理でもまた信じてみて?お母さん達はこれからのアナタの無事を祈るしかできないけど、それでも…」
ー…それでも、人を大切に思う心をわすれないで…ー
私は今度こそ、大きな声で泣いた。私は青宮様の事は兄のように慕っていた。だけどあの日、酷い言葉を投げかけられ、睨みつけられとても傷ついたのを感じた。だからお母さんに言われて、自分で言って凄く悲しくて辛かったのだ。だけど、私は同時に思った。
ー…私は守りたい、お母さんやお父さん、紅条様や友達を…ー
きっとこの時から、私は戦う決意をしたんだろう。私はその後、その日が続くまでずっと家族三人で過ごした…ー
優しくて、温かい大切な人達を守るために私はこの手に武器を持つことを決めた…ー
次回から、第二章を開始します。