ケム・トレイル
高く高く、青い空。
山の向こうに、赤い、空。
雲の向こう、紫のそら。
君と二人で見つめている。
遠い空を、見つめている。
四つの目。
二つのエンジン。
川の防波堤。
草の生えた斜面。
敷かれたレジャーシートの上。
寝転んで。
手を繋いで。
視界の端から、横切る雲。
一機。
二機。
ここは航路の下。
色ごとに切り分けるように、飛行機が横ぎっていく。
高い一本。
低い三本。
僕たち二人の手の上を。
横切る一つの線。
丁度、小指の上を。
手に載る冷気。
体中に広がる不快感。
絶えず話をする二人。
堪えず、毒を吐く二人。
どうしたって、二人の間に入ってほしくない。
何をしたって、この糸を切ってほしくない。
僕の思い。
手の届かない、誰かの勘違いの道。
手の届かない、誰かの毎日。
無関係な人。
無関心な人。
こちらを見ない。
その瞳には、入らない。
誰かが常に踏んでいく。
僕たちの日常。
隣の顔を見れば。
そこにあるのはマネキン。
誰だって、いつだって入れ替わる。
しっとりと濡れたその顔。
見えるはずのない涙。
マネキンの瞳に映った僕は。
覗き込むことをやめ。
降りしきる雨に、傘を差した。
誰が晴れているって言った?
そう、いつだって一人。
誰かいるのは妄想。
誰かが居ても、それが誰でなくても。
何かが居れば、それでいい?




