大将、信じてください!
これを話すと大概の人は、怪しむか勘違いじゃねえ?といいます。
が!
本当のことです。
嘘じゃありません、信じてください。
大将は信じてくれますか?
え?
いや、それでも信じてください。
信じてくれないと、僕……
え?
あ、まずお話ししないと始まりませんよね。
分かりました。お話しましょう。
それは窮屈感から始まります。
目をつぶっているのか、辺りは暗くて何も見ている感覚はしないのですが、不思議と恐怖感や不安感はありません。それどころか心地良さと安心感があるんです。
ですが、窮屈で窮屈で僕はイライラしてるんです。
それで思いっきり手足を伸ばしてみたら、
「もうちょっとしたら出られるからね、もう少し我慢してね」
てな感じのことを言う声がどこからか聞こえてきて、撫でられてる感覚がするんです。
直接触られてるとかじゃなくて、何かよく分からないですが、撫でられてるってことが分かるんですよ。
そしたら不思議とイライラが無くなって、またふうって落ち着く。
まあ何とも大雑把な説明ではありますが、
これは僕の最初の記憶。
そうです、母の腹の中にいた時のことです。
とは言っても正確には、
感覚の断片を覚えていると言った方が近いですが。
この話を聞くと
「嘘っだぁ」
と言う人も言えれば、
「いいねぇ」
と言う人まで色々です。
この感覚はずっとなんとなーく覚えていたんですが、小さい頃はそれが胎児の時の記憶だとは分かっていませんでした。
ああ、あれはお腹ん時の事だったんだって理解できたのは割りと大きくなってから。
たぶん自覚したのは、定かではありませんが中坊ぐらい。
それまで家族にすら言ったことがなかったので、周りからすれば何を急に言い出すんだ?と思ったことでしょう。
ちなみにこの話を母親にすると、
「気のせいやって。何かの記憶とこんがらってるんやわ」
だそうで。
よそのお母様は、
「覚えててくれてるなんて羨ましい」
って言ってくれましたよ?母上。
とかいいつつも、
僕は腹の中でも荒くれ者だったらしく、それも蹴るなんて可愛いものじゃなく、まるでエイリアンのごとく今にも母の腹を破る勢いで、ぐにゅーと足の形が分かるほどの伸びをよくしていたそうな。
まあ、そんな僕に、
「もうちょっとしたら出られるからね」
と優しくお腹ごしにさすってくれたのは、紛れもないあなただと僕はよく知っておりますよ。愛だね、愛。
「て言うより、あんまり痛いからそうやって大人しくさせたんやわ」
だそうですが。
大将は信じてくれますか?