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紗綾 ~君と歩く季節~   作者: 萌葱
三年生 二学期~
98/117

転がり落ちたくなければ、たまには素直に頼れば?

 待ち合わせの駅から二十分ほど電車に乗って、降りる。

 ここから歩いて十五分くらいだと聞いて、それ位なら歩けそうだとほっとしていると、松くんに大丈夫? と心配されてしまった。

 それにしても、私以外の3人は苦もなく着物を着こなし動いているのを見てつくづく感心する

「紗綾は動きが大胆すぎるんだと思う、まどろっこしいだろうけど、もうちょっと歩幅を小さくしたほうがかえって楽よ?」

「頭では判ってるんだけどね~」

「おまえ運動神経良いし、彫刻なんてしてる癖に、妙な所不器用だよな」

 不思議そうに私を見る鳴木に、自分でも良く判らないよ、なんて答えながら十字路を曲がると、目の前に森が広がった。


「わぁっ!」

「ここだ、思ったよりは混んでないな、取り敢えず並ぼうぜ」

 そう鳴木に言われて列に並ぼうと正面に回ると、結構な石段が見えて、たじろぐ

「これ……ちょっと紗綾やばいんじゃない?」

 皐ちゃんに真顔で言われて

「だ……大丈夫だよ?」

 言いつつも、確かに無事に登り終える自信は……無いかもしれない。

「合格祈願ですっ転ぶとか、やりそうだよな」

「両隣に一条君と鳴木君、後ろに黒田君……とか?」

「や、流石にそれは、恥ずかしすぎる……」

 だけど、とんでもないことをさらっと呟く松くんに慌ててストップを掛けると

「何事かと思われるだろうな……適当にグーパーでもして組作っとくか? ま、確実に俺らの一人は貧乏くじだろうけど?」

 笑いながら私を見る黒田にむかつくものはあったけれど、三人に囲まれるのは嫌だったので賛成! と言えば

「確かにそこそこの人混みではあるし、歩き始めればバラバラになりそうだ、それなら一人に一人サポートが付いた方が良いだろう」

 そう、一条も言ってくれて。

 グーパーをした結果は、松くんと一条、皐ちゃんと黒田で私の相手は鳴木だった。

 それに莉緒と伊達くんで各々石段の上を目指す。


「迷惑掛けないように、頑張るよ……」

 ペアになった鳴木にそう言うと、意外にもからかいも嫌がりもせず、私の前に手を差し出してくれて

「気にするな、それより転がり落ちたくなければ、たまには素直に頼れば?」

 そんな言葉を掛けてくれる

「昔は助けてやれなかったからな」

 続く言葉に更にびっくりしてしまったけれど、これから続く長い石段に心が折れかけていたのも事実で

「ありがとう」

 思い切って手を預けると、しっかり握り返してくれて、ゆっくりと上まで私が階段を登るのを手伝ってくれたのだった。


 無事お参りを済ませ、お守りも買って、階段の前でまた差しだしてくれた手を握ると、ゆっくりで良いからな? と言われて頷く。

 急がないで、大股にならず、足元に注意して一段づつ丁寧に石段を降りる。

 着物を着ていると注意する部分が多く、裾を踏まないように少し先をつまんで、裾さばきと足元だけに集中していたら不意に

「冷たい手だな……」

「え?」

 突然耳元で囁くように聞こえた鳴木の言葉に、一瞬集中が途切れて足を踏み外してしまった。

「……っ!!」

 ……途端手に力を込めてくれたのだけれど、更に傾く体制に焦っているとふいに目の前の景色が遮られ、腕から背中へと回された力強い腕の感触に抱きしめるようにして支えてくれたのだと判った。

「ごめん」

 その事に少し驚きはしたけれど、すぐに腕の中の私にそう言って、慌てたように腕を解いてくれるのに

「私こそ……」

 足を踏み外した私が悪いのは確実で、だからこれ以上鳴木に迷惑を掛けないようそれからはより集中して、石段を降りることに専念した。


「ふぅ~、平坦な地面って素晴らしい」

 階段を終わりほっと息をつくと隣りの鳴木が笑っていた。

 突如吹いた風に髪が頬に掛かるのを直そうとして、手をつないだままなのを思い出し

「本当にありがとう、助かったよ」

 手を引くと一瞬力が入った気がしたけれど、するっと外れたのに気のせいかと思ったところで

「おつかれ、良かった、無事にお参りができて」

 裾さばきも軽くこちらに向かってくる皐ちゃん達。


「お疲れ! でも、これだけ歩くの上手だと安心だ、貧乏くじじゃなくて良かったね黒田?」

 鳴木に散々助けて貰ってしまったし、私が貧乏くじなのは否定出来なかったなと素直にそう思ったのに

「うるせー」

 言い出した本人は何故か不機嫌にそう呟いて、向こうに行ってしまった。


「あ~あ……」

「なんか有ったの?」

「何でもないよ、ちゃんと助けてくれたしね、神経使って疲れちゃったんじゃないかな」

 困ったような苦笑を浮かべるのに

「皐ちゃんでああなるなら、私なら黒田切れちゃったかも」

 ね? って皐ちゃんを見ると

「紗綾はいつまで紗綾なんだろうねぇ?」

 良く分からないことを言って、しみじみとため息をつかれてしまった。


ここまでのお付き合いありがとうございます。


もうすぐ100話なのに先日気がつきまして、現在の初詣編の別視点という形のお礼を制作中です。


内容的にはこの辺りの裏になりそうなのですが、折角なので100話時のupに拘りたいと思っていますので、もう少しお待ち頂ければと思います。


ただ、四月から少し生活の変化が有り、このペースへの不安はあるのですがひとまず100話目指して頑張って行きたいと思います。

詳しい状況はなって見ないとわからないのですが、先の見通しのついて居る話なので最後迄は行けると思います。

精一杯頑張りますので今後とも宜しくお願い致します。


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