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紗綾 ~君と歩く季節~   作者: 萌葱
三年生 二学期~
87/117

行く!

「おまえら、週末のテストなんで揃ってパスなんだ?」

 塾も終わっての駐輪場に向かう道すがら不思議そうに黒田がそんな事を言ってきた。

 どうやら、指先でひらひらさせて居る月例テストのエントリーシートを私達が貰っていなかったのを不思議に思っているららしいのだけど、私にしたら黒田がそれを受けるという方が少し意外だった。

「黒田はそれ受けるのか? その日は桜花の文化祭だろ? サッカー部の親善試合もあるし俺は見に行くつもりなんだが」


 隣を歩く一条は最近あれだけ拘っていたトラディショナルな服装が少しラフになり、なんと自転車で通っている。

 本人曰くに行動が阻害されることに気がついたから……だそうだ。


 新鮮ではあるけれど、違和感なく似合ってるジーンズやカーゴパンツ姿。

 なのに此処に至るまでその姿を見たことが無かったことを思えば、余程のこだわりだったと思うのだけど、今日の格好を見た皐ちゃんは

「カーゴパンツなのにスキニー並みにスリム、……あれは多分Karjus? ラフにはなったけど隙が無いなぁ~」

 なんて言ってし、彼なりの妥協点は見つけたと言う事なのかな

 

「へぇ……桜花の文化祭って今週なのか」

「黒田も桜花志望だろ? 行かないのか?」

 鳴木は少し驚いたみたいで

「受けるのはもう決めたから、どうせ飽きるほど今後通うわけだろ? わざわざ見に行くの面倒くせーし」

 だけど、そういって黒田は自信満々に笑ってみせる。


「そっか、黒田は行かないのか、……誘おうと思ってたんだけど仕方ないね」

 桜花高校は、現時点の私の第一志望でもあるけれど、まだ現地には行ったことは無かった。

 だから下見には丁度良いかと文化祭には行くつもりにしてたのだけど、実は私の周りは意外と桜花志望は少ない。

 優樹は芸大への進学率も高いという美園学園への推薦が決まっているし、香織は帰国子女を多く受け入れ、英語教育に定評のある西條高校、みのりも経理を学びたいと商業高校である国東高校に進路を決めている。

 松くんは同じ桜花志望なんだけど、学校の友達と行くと聞いているので敢えて声はかけなかった。

 そんな中、黒田の周りも桜花は居ないと言っていた気がしたから、声をかけてみようと思ってたんだけど、興味が無いなら仕方ない。


「行く!」

「は?」

「行く、日曜だよな?」

「……何で黒田なんだ」

 突然行く気になったらしい黒田に戸惑っていると、鳴木が不機嫌そうにこちらを見ている

「え? だって鳴木もクラスの人と行くんでしょう? 一条とか」

「別に誰かと連れ立ってという気は無かった、一条とはまぁ、会えたら程度に思ってたけど」

「藤堂と黒田だけって考えただけで面倒なことになりかねないぞ? どうせ俺たちも行くから混ぜろ」

「面倒って……」

 別に喧嘩を売って歩いた覚えは無いし、私を知らない人が殆どの新しい場所でそんな心配はいらないって反論しようと思ったけれど、三年間トラブルに見舞われ続けた自分と、新学期早々その雰囲気でクラスメートを遠巻きにさせた黒田。

「絶対に無いって言えるか?」

 重ねる鳴木に……冷静に今までの状況を振り返れば大丈夫だよって胸を張れないのが悔しい……だけど

「で、でもさ、四人で行くほうが面倒なことにならない?」

 校内で一緒に居る時間が増えたのは少し慣れてきたけれど、校外でまで一緒に居るのを見られるかもって思うと、いらぬ刺激をしてしまいそうで……。

「おまえな、いいかげんにしろよ? 高校に入ってまでそのおかしな遠慮続ける気か? 第一、高校は中学ほど狭い世界じゃない、もっと生徒だって多いし、通う人間だって少しは大人になってる、……やっかみだか何だか知らないが、理不尽に人を攻撃していればおかしいと言われるのは攻撃している方だ」

 そんな私の不安に対して、鳴木はきっぱりとそう言いきった。


「全く、男相手にはあれだけ強気なのに、何で女相手だと駄目なんだ?」

 鳴木の言葉は正論なのは分かっていても、ぶつかることを躊躇う私に不思議そうな黒田。

 まぁ、我ながら何故だか攻撃的な男子への対処よりも同性であるはずの女子の方が強く出られない自覚は有って……。


 そもそも私は、小学生の頃は女の子が敵だったことは無かった。

、あまり集団でいるのは好きではなかったから、そう多くはないけれど同性の友達というのも普通に居たし、優樹や香織やみーのだってだってその頃に知り合った友達だ。

 けれど、中学校に入ってから一年の時はクラスには男子だけでなく女子からも敵意を向けられ、二年では優樹や香織も居たから完全に孤立はしていなかったものの、たまに感じるクラスメイトの女子のチクチクとした視線に、良く知らない他のクラスの女子からは通りすがりに嫌味を言われたり、あからさまに邪魔だと睨まれて、そしてこの前の騒動……。

 私と仲良くしてくれる友達とは、同じ年齢の同じカテゴリーに入るとは思えない、その思考回路と行動原理を解きほぐせば、流れを理解することはあっても、共感は出来なくてどこか得体が知れなく感じてしまう。

 ……あぁ、もしかして私は

「よく判んないから怖いのかも」

「お前だって女だろ?」

 そんな私に、呆れる黒田

「そのはずなんだけれどねぇ?」

 でも、判んないんだよ、そう首をかしげると

「おまえは規格外品だからな」

 くすりと一条は笑ったけれど。

 ……それってどう言う意味なのかな? 

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