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紗綾 ~君と歩く季節~   作者: 萌葱
三年生 二学期~
82/117

あんた、あいつに興味ねーの?

※サブタイトルとセリフを一部変えました。

あのままだと、新規で読んでくださる方のタイトルネタバレが有るかなと思いました。

他には大きな変更は無いので再読はしなくて大丈夫です。

「上手く行きそうだな……おまえ、俺があいつらを引き付けている間は妙に動くなよ? 対処は自分で出来るから俺は放って置いて良い、余計なことをすれば計画が台無しになるからな」

 彼らが相談している間、一条がそんな風に釘を刺した。

 だから、待ち合わせの場所に向かいながら水越君達が一条を囲み、こんな可愛い女の子初めて見た、とか、綺麗な髪だね、などと言っている様子と、口一つ聞かないまま笑顔を見せるでもないのに視線を集め従えて歩く一条の様子に、ストレスが溜まりそうだと思いつつ割り込むことも出来ないままついて行く。


 その髪はウィッグだしその子は男の子……、けれど視界に入る完璧な美少女っぷりに無理も無いかと、あの状況に絶えてくれている一条には本当に申し訳ないとは思いつつ、思わずくすりと笑ってしまうと……、三人のうち一人がふとこちらを振り向くのと目があった。


「あんた、あいつに興味ねーの?」

 長身の彼は一条を挟んで歩く二人の斜め後ろを、余り口は挟まずに歩いていたのだけど、更に二歩ほどこちらに向かって足を踏み出し何故か私の隣に並んで歩き出した

「興味……って言っても、初対面だし、出会って十分後にはこんな感じだよ?」

 彼の質問に目の前の光景を指させば

「だけど、そう悔しそうでもねーし……普通あの変わり身見たら怒らねぇ?」

 なんと、多少は気にしてくれて居るらしい。

 けれど、一条相手に張り合う気も無いし、第一そんな事を気にして居たら私の友達とは居られない、中身も外見もスペック高すぎる自慢の彼女達。

 たまになぜ私のそばに居てくれるのか不思議な位で……。


「正直ホッとしてるかな? あーゆーの落ち着かない」

「妙な奴、水越から言い寄って靡かない女なんて初めて見た、……まぁ、あっちの彼女も凄ぇけど」

 不思議そうな様子だけど、それはそうだろう、中身は一条だしね? 

 でもそんな事は言えないし、それに私が水越君に靡かない事が不思議なら、あの一条をほおってこちらに来た彼の方が私は少し不思議だった。


「皆川君は向こうに居なくて良いの?」

「え? ……まぁ、見た事ねーほど美人だけど、全然しゃべらねーし、あの二人にあんな話しかけられても笑いもしねー……なら、俺じゃどうせ無理だし、それに一言も喋らないのは流石にどんな奴なのかも分からない、あいつらはそれでも良いみてーだけど……なんだよ」

 すると、わりとまともな事を言って居るのに驚いてマジマジ見つめてしまい、たじろがれてしまった。

「ん? ちょっと意外だった……なんだ、私と一緒じゃない? 水越君は私に妙な事は言ってきたけど、私は彼本人の事なんてまるで分からないから靡くも何も無くない?」

「妙な事って、口説いてただろ?」

 耳慣れない自分にそぐわない甘いセリフは本心とは思えなかったし、背中がざわざわして、鳥肌が……なんて思わず正直に答えてしまえは、彼は噴きだして

「……あいつを気持ち悪いとかいう女初めて見た、何だか聞いてたのとイメージ違うな?」

「何となくどんな事を聞いていたのかは想像つくけどね、少なくとも私は水越君には現時点では惹かれない、人の心を勝手に決めないで欲しいよ」

「調子に乗ってる感じの悪い女だからって言われて、信じてた……どうせ、尻の軽い奴なんだろうって……悪ぃ」

 謝ってくれたって事は、私はそんな子じゃ無いって思ってくれたって事なのかな?

「ま、悪評には慣れてるから構わないけど」

 ……あぁ、でも、私も努力が足りなかったのかな? って、ふいに思った。

 皆川君はすんなり彼女の話も信じたみたいだけれど、その話に違和感を持てばこうして私の話を聞いてくれる。

 私は今までのこともあって、広まる噂に否定しても仕方ないと最初から諦め気味だったかもしれない、……話せば判ってくれる人も居るのに判りっこないって決めつけたら駄目だったのかも

「なんか……色々あったのか? おまえ?」

 

 私の言葉に彼は訝しげにそんな事を聞いてくるけれど、流石に初対面の、どうやら彼はそう悪い人では無さそうだけれど、それでもあんな手紙を送ってきた側の人間に打ち明けるような話でも無くて

「諦めちゃ駄目だなって、思っただけ、皆川君もさ? どうせ二人にはかなわないとか、無いと思うけどな? あーゆーのを苦手だと思う子も居るよ? 笑顔に本心を隠す彼等よりは、こうして本心を言ってくれる人の方が、少なくとも私は好きだけどな?」

 話題を変えるついでに、余計なお世話かもしれないとは思ったけれど心配してくれたのかもしれない彼に、私の思ったことを正直に告げた。

「好きって……」

 私の言葉に驚き、その後少し顔を曇らせた皆川君は良くも悪くもストレートな人間だなと思う、心の動きがすぐ顔に出る。

 流石に何を思ったかなんて事までは判らないけど、……と、そっか!

「ま、私がそんな事を言っても嬉しくないだろうけど、大丈夫すっごく可愛い女の子らしい子も私に賛同してくれる子は居るよ?」

 前に皐ちゃんが、甘い顔して美辞麗句並べてナンパをされる位なら、口の悪い黒田との会話の方が面白いなんて言って居たのを思い出して、ま、似た様なものだよな? って付け加えた。

 

 すると、彼は私に何か答えようとしたけど、前を歩いて居た一条がくるりとこちらを振り向き、あの吸い込まれそうな瞳で彼を一瞬強く見るから、皆川君は思わず言葉を失ってしまい。

 ……其の儘私に視線を移して、ギロリと睨まれるのに作戦続行中の相手に私が余計なことをしないかって事かなと、大丈夫と少し笑ってみせれば、胡乱げな信用出来ないというような光を乗せた瞳で私を見るけど、隣に皆川君も居るのせいかすぐにそれは消して、また前をむき直した。

 


ここまで読んで頂きありがとうございます。

長く感じたトラブル編もあと少しです、引き続きお付き合い頂ければ幸いです。


昨日、過去拍手に一本以前のお礼小話をupしました。

そちらも合わせて目を通して頂ければ嬉しいです。


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