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紗綾 ~君と歩く季節~   作者: 萌葱
三年生 二学期~
81/117

やっときてくれたんだね!

 広場に付くと、先日遠くから見えた同い年くらいの三人の男子が近づいて来た。

「やっときてくれたんだね!」

 表面上でも、穏やかな雰囲気にひとまずほっとして、肩の力を抜く。

 そうすると相手をよく見る余裕もできたみたいだ。


 三人の中の真ん中で私の方を見て笑いかけてくる一人は、一年の体育祭で香織に教えてもらった斉藤くんに少し似ている。

 我が校一のプレイボーイとして名高い彼は、稀に廊下ですれ違うけれどいつも沢山の女の子に囲まれて……そんな彼に似た雰囲気のこの人も、多分女の子には不自由はしていないと思われる。

 後の二人のうち右側でニコニコと人懐っこい笑顔の彼は一年の時同じクラスだった南っぽいかな?

 常に騒ぎの中心にいて屈託の無い笑顔を振りまく彼は友達がが多く、集まってきたクラスメイトを沸かしているムードメーカーでもあった。

 まぁ、その先導力は私に対しても遺憾なく発揮され、普段の毒気の無さとは対照的に含みのある意地悪な笑顔でいらないことを言っては周囲を煽ってくれた訳で、能力というのはプラスにもマイナスにも転がるんだと言う事を私に教えてくれた。

 左側の彼はしなやかに筋肉のついた長身、如何にもバスケットとかが似合いそうなその体つきと短めの髪型はどことなく坂本を思わせる。

 一見硬派な感じでこんな場にいるのはそぐわない気はしたけれど、それを言えば坂本だって良く他クラスからわざわざ嫌味を言いに、私のクラスまで遠征して来ていたことを思えば、外見のイメージと中身がそぐわないなんていつものこと。

 そう言えば鳴木も硬派とか言われて居るとか聞いた覚えがあるけれど、私の良く知る彼はその言葉の雰囲気からはかなり遠いところにいる。


 ともあれ、あの二人も結構人気があると聞くし、特に可愛い訳でも評判がいい訳でもない私にあんな手紙を送るのはやはり裏があるとしか思えない。


 そんな事を思って居ると、中心に居た斎藤君に似た男子が私をじっと見る

「ずっと君と話してみたいと思ってたんだ……」

 小突かれたり暴言を吐かれないだけマシだけれど、こんな猫なで声で話しかけられるのは慣れてなくて居心地が悪い

「私はあなたを知らないけれど?」

「そうだったね、俺は西中の水越渉、こいつらは白木と皆川」

 どうやら南っぽいのが白木君で、坂本っぽいのが皆川君なんだろう、……って、名前を覚えたところで今後使う場が来るとは思えないけれど。

「私は藤堂紗綾」

「知ってる、そんな固くならないでよ、君と仲良くなりたいだけなんだ」

 こちらに笑顔を向けてくれるのに申し訳ないのだけれど、その無駄に甘い表情かおに、なんだか背中がざわざわする。

「どうしてあんな手紙を? それに何処で私のことを知ったんですか?」

「友達が君のことを教えてくれたんだ、それで会ってみたいと思って、写真を見せて貰った時から忘れられないんだ」

 ブスだとか身の程知らずだとか散々言われてはいるけれど、私は自分を不細工だとかまでは思っていない。

 だけど、人となりも知らずに写真数枚のみで想いを寄せられるような顔でも無いことは自覚して居る。

 だから、そんな嘘くさい事を言って歯が浮きそうにならないのかな? とか思ってしまう。

「ずいぶん物好きな人なんですね……因みに、あなたに私を紹介したのは誰ですか?」

「それは、ちょっと……ねぇ? そんな警戒しないで欲しいな? 話をしようよ、僕のこと知って欲しいんだ、君のことももっと知りたいしね」

 そう言ってこちらに伸ばした手は、私に触れる前に、一条が掴んだ。


「なんだ……よ」

 そうやって腕を止めたから、漸く隣の一条に気がつき、一度目に止めてしまえば今度はそのまま目を離すことができないようだ、勿論後ろの二人も。

「この子は?」

 流石にしゃべるとバレてしまうので横から考えてた設定を話す

「私の幼なじみです、知らない人からの手紙と言ったら心配してきてくれて」

 私が答えても、視線は一条から動かない。


 すると、水越君は私の時には見せなかったほうけたような瞳で彼女(?)を見つめつつ、熱心さを隠しもせず

「君が駄目なら、この子を紹介してくれないかな?」

 頼んでくるのに、心のなかではやっ! っと呆れつつ

「写真とか紹介とか私には心当たりがないんです、そんな不安な相手に大事な幼馴染を紹介するのは……」

 初対面から僅か十五分ほど? でも、その早すぎる変わり身以外、言い出した言葉は想定内。

 予定通りの言葉を返す事が出来た。


 変装を言い出した香織も引き受けた一条も決めた後は変装が破れる心配は一切しなくて

「成海の腕は知ってる、しかももう完成形は頭にあるようだ、あいつの腕なら注目集める位造作もない」

 なんて、一条は嬉しくはなさげだったけれど、香織がその効果でターゲットが一条に向えば更に安全なんて言うのには、おまえに向かうよりマシだなんて頷いてくれて……。


 相手を確認して問い詰めたりと言っても、まさか暴力を振るう気も無いし、しらを切られたらそれ迄。

 ならば、不穏な空気にでもならない限り、二人は隠れたまま対峙する私達の駆け引きで情報をもらうべき、と言うのが香織の案だった。


 私の言葉に彼らは、ちょっと待っててといって少し離れたところで相談を始め、あまりの展開の速さにこっそり一条と目を見交わす。


「三十分後にROCOでそいつと会うことになってるんだけど来る?」

「四時にROCO?」

 鳴木たちにも聞こえやすいように少し大きめな声で確認する

 彼女たちが首尾の確認に来るのかな? しかし、手紙の時間の一時間後……。


 一条のあまりの美少女ぶりに彼らは途中で路線を変更したものの、多分、彼の態度からして、私を水越君とやらに篭絡させようとしていたように思える。

 ……ROCOはここから二十分位のところにある複合型のショッピングセンター、丁度この公園から続く遊歩道を歩いた先に有るんだけど、……移動時間を考えたら初顔合わせから四十分。


 ……ううん、もし今後も会う事になれば、連絡先や次の約束何かをして私と別れてから向かうつもりだったのだろうから、恐らく三十分も掛からずに落ちると思われていたのか……。

 一体彼らに私を紹介した人達は私を何だと思ってるのか? 

 ……って、流れてるらしい噂を考えたら想像は付くけど、ね。

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