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紗綾 ~君と歩く季節~   作者: 萌葱
三年生 二学期~
68/117

まさかこのまま何もなかったことに話が終わるなんて思ってないよな?

 その日の塾の終り、帰りは自転車の私が黒田と鳴木と駐輪場に向かおうとすると

「ちょっと付き合ってくんねぇ?」

黒田が一条を呼び止めた

「ちょ! まさか……」

 慌てる私に

「おまえ、まさかこのまま何もなかったことに話が終わるなんて思ってないよな?」

 怒ったように言う黒田に何か有ったのを察したのだろう、一条も黙って普段とは違う階段に向かい歩き出す……最悪だ。


 自転車置き場に付くと、黒田が私にあれ今持ってるか? と聞く。

 その言葉と、もの問いたげな二人の顔に、話さない訳には行かないかと、今日相手の顔を見て、場合によっては出て行って突きつけようと持ち歩いてた手紙を黒田に渡すと、黒田はそれを鳴木と一条に渡した。

 訝しげに手紙を受け取った二人は、私に読んでいいのか? と聞くので、諦めてうんと頷いた。


「因みに一枚目はかなりのコロンの匂いがした」

「コロンって、例の古文の真似事か? 本当にやる馬鹿が居たのか……」

「あり得ないだろ? だから、こいつも差出人は最初から男だなんて思ってねぇみたいだかな」

 一条までそんな事を言っていると言うことは、本当に広まっているんだ……

「おまえ、これ行ったんじゃ……」

 先に手紙に目を通した鳴木が信じられないというように呟く

「……ははは」

 珍しく鋭い目つきで私を見る鳴木に、誤魔化すようにへらりと笑って見せるもその視線は強くなる一方なのに

「その上、その場所には俺らくらいのが三人ばかりウロウロしてた、関わりがあるのかは知らねぇけど、すっげー怪しいのは確かだな」

 更に公園での様子を黒田が話すから

「この、馬鹿っ!」

 今度は一条が顔色変えて怒った……。


「女の子のいたずらだと思ったから、顔だけ見て、大丈夫そうなら話とか聞けたらって……」

 首をすくめてそう答えると、一条はこめかみに指を当てて深くため息を付く

「首謀者が女だからって、実行するのが女とは限らないだろ? おまえは短絡的すぎる」

「だよな? ほんと抜けてるというか……日比谷が心配するわけだ」

「優樹?」

 突然飛び出した親友の名前に、何故? と黒田に目を向けると

「今日の休み時間、殆どおまえいなかっただろ? 日比谷が俺の所来て『あんなきっぱりの笑顔は嫌な予感しかしない、でも、きっと今言っても聞かないと思うから様子見てくれないかな?』って頼まれた」

「ごめん……」

「あいつ凄ぇよ、……おまえの行動まんまだった」

 黒田にも優樹にも申し訳なくなり、俯くと

「あまり遅くなると親が心配するだろ? 今日は取り敢えず帰ろう、ただ、少し情報を整理したいから明日の放課後何処かで話せないか?」

 取り敢えず怒りを収めてくれたらしい一条が、冷静にそう言った。


「でも、ゆっくり話せる場所なんて、……美術室、とか?」

「この前の話から行くと見てる奴はいそうだ、今はやめておいた方がよさげだな」

 すると、ずっと黙っていた鳴木が

「放課後ジャージ来てサッカー部の部室に来い、明日は部活がないし、まだ鍵は俺が持ってる、体育棟の二階の一番端だ、来れるか?」

 女子が入っていいのか? とか、迷惑かけないか? とか、色々言いたいことがあったけれど鳴木の妙な迫力に何も言えず、私は頷くしか無かった。


「じゃ、帰るか、仕方ねぇ、公園まで回っていくか……」

「公園?」

「こいつチャリ置きっぱなしなんだよ、さっきはやばそうで取りに行かないで俺がのっけてきた」

「鳴木、悪いが後ろ乗せてくれないか? 俺も行く」

「なんで、一条まで!? 自転車嫌いじゃ無かったの?」

 使う駅は一緒なのにいつも電車の一条がそんなことを言い出すのに驚くと

「別に嫌いでも乗れない訳でも無い、電車で通っているのは服に皺が付くのが嫌だってだけだ」

「すげー理由……」

 思わずというよう出た黒田の言葉に、私も同じ事を思ったけれど、……状況が状況だけにそれを口にだすのはやめておいた。



「あ……」

「なんだ?」

 公園に向かう途中、黒田の自転車の後ろに乗りながらふと不味いことに気がついた。

「いや、私ここに乗ったらまずかったんじゃ? 明日謝らなきゃ! 今からでも降りて走ろうか? 鞄だけ持ってくれば……」

「何をお前はぶつぶつ、……ってそうか、おまえも俺がみのりと付き合ってると思ってるだろ?」

「違うの?」

 うちの学校には妙なジンクスがあって、彼女若しくは好きな人以外を後部座席に乗せると失恋するというのがあるのだ。

 ジンクスなんて信じない人は信じないけれど(私もあまり信じてはいない)、やはり彼氏の自転車に別の女子が乗るのは嫌じゃないかと思ったのだが……。

「みのりは俺の兄貴と付き合ってるんだ、うちにもしょっちゅう来るし、……なんか、俺が心配でしょうがない弟みたいに見えるらしいぜ? まぁこのまま行けば将来は本当にあいつが義姉ねえさんにでもなるんだろうけどな?」

 そうだったのか、……特に聞いた事は無かったけれど、良く一緒に居るし二人は何となく私の中でワンセットになって居て、クラスの男子もみのりを可愛いと言いつつも黒田が居るしな、なんて言っているのを聞いた事があったから、私がここに乗るのはまずかったんじゃ無いかと思ったんだけど……

「んー、でも大丈夫?好きな人とかは?」

 尚も心配で確認するも、大丈夫だから馬鹿な心配するなと言って、こぐ力を強めたのかくんっとスピードが上がるのが判った。

再掲後の初めての新作となります。

又ここから物語を紡いでいきたいと思いますので宜しくお願い致します。


タイトルが長いです……。

掲載後一括表示される量と言う事で一応付けていますので、長かった場合変更するかもしれません。


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